毎日、毎日寒うございます。
ついつい外に出るのが億劫になりますね。
寒い中、暖かい家や電車の中で本を読む。
これぞささやかなる喜びの一つかな・・・。
今週の書評でございます。
今週のチョイスはこちら。
「論語と算盤」(現代語訳) 渋沢栄一 著
「日本資本主義の父」といわれる渋沢栄一。
「近代日本の設計者の一人」に数えられ、設立にかかわった会社は約470社、
ほかにも500以上の慈善事業を立ち上げたといわれる偉人。
日本の資本主義の黎明期に活躍した人物だが、
今から150年も前に「自由経済」が抱えている問題点を見抜いていた。
資本主義のエンジンとは「人々の欲望」。
その暴走をコントロールするのは人間の道徳心であると唱え、
愛読する「論語」をそのシステムの中に組み込んでいった。
「論語」は中国の春秋時代に活躍した、孔子と弟子たちの言行録。
・「人はどう生きるべきか」
・「どのように振る舞うのが人として格好良いのか」
ということを教えてくれる史上最良の「道徳の教科書」であるといわれている。
(私はまだ読んだことがないので、近々読んでみます)
「経済」と「道徳」は絶対に切り離してはいけないもの。
本の中を通して、その大切さを述べています。
1. 道徳と経済について
・不道徳や嘘、外面ばかりで中身の無い商才など、決して本当の商才ではない。
・「物事を進展させたい」、「モノの豊かさを実現したい」、と欲望を心に抱き続ける一方で、
その欲望を実践に移していくために【道理】を持たなくてはならない。
・道理をともなった富や地位でないのなら、まだ貴賤でいる方がましだ。
しかし正しい道理を踏んで富や地位を手に入れたのなら何の問題もない。
2. 競争することの大切さ
・一個人においても、常に周囲に敵があってこれに苦しめられ、
その敵と争って必ず勝って見せる気概がなくては決して成長も進歩もない。
・絶対に争いを避けようとするような卑屈の根性しかないと、到底進歩したり成長したりする見込みはない。
また社会を進歩させていくためにも、争いが必要なことは言うまでもないだろう。
・人の品性は円満に発達した方が良いというが、あまり円満におなりすぎると
「過ぎたるは及ばざるがごとし」 人として品性が全くなくなってしまう。
3. 「常識」とは(バランス感覚の大切さ)
・なにかをするとき極端に走らず、頑固でもなく、善悪を見分け、プラスとマイナスに敏感で、
言葉や言動がすべて中庸にかなうものこそ、常識なのだ。
・ごく一般的な人情に通じて、世間の考え方を理解し、物事をうまく処理できる能力が常識に他ならない。
・「強い意志」の元に、「聡明な知恵」を持ち、これを「情愛」で調節する。
さらに3つをバランスよく配合して大きく成長させていってこそ、初めて完全な常識となる。
~この人の言っている【常識】はかなり高いレベルにあるようですね・・・
私のような凡人がこの境地に達するには、かなりの修行が必要かも・・・。
4. 「逆境」に出会ったら・・・
・【どうすることもできない逆境】のとき、それは立派な人間が試される機会に他ならない。
「自分の本分」だと覚悟を決めるのが唯一の得策。腰を据えてくるべき時を待ちなが、コツコツと挫けず進んでいく。
・しかし【成り行きで出会った逆境】は、ほとんど自分がやったことが原因なので、
とにかく自分を反省して悪い点を改めるしかない。
・得意なときは誰しも調子に乗ってしまう傾向があるから、禍はこの隙間に入ってくる。
得意なときは気持ちを緩めず、失意の時だからと落胆せず、
いつも同じ心構えで、道理を守り続けるように心がけていくことが大切である。
5. 勉強と習慣
・習慣とは、人の普段の振る舞いが積み重なって、身にしみついたもの。
悪い習慣を持つと悪人となり、良い習慣を持つと善人となるように、最終的にはその人の人格にも影響してくる。
・勉強の習慣を失ってしまえばその人は進歩や成長がおぼつかなくなる。
そんな勉強をしない国民に支えられている国家は繁栄や発達も出来なくなる。
最後に興味深い一言を・・・
・志を立てる要は、よく己を知り、身の程を考え、それに応じてふさわしい方針を決定する以外にないのである。
誰もがその塩梅を計って進むようにすれば、人生の行方において、問題の起こるはずは万が一にもないはずである。
日本経済、日本の発展のカギは渋沢栄一氏が、今から100年以上も前に示していてくれていたのですね。
要は「良い心掛け」と「前向きな努力」です。
100年以上も前の本ですが、非常に面白い本でした。