日常観察隊おにみみ君

「おにみみコーラ」いかがでしょう。
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◎本日の大きなお世話「女性があてがうコートはすでに購入済みではありませんか」

2018年12月02日 | ◎これまでの「OM君」
ダウンコートを着た女性がコートを選んでいる。
手に持つのはダウンのコート。
今着用中のものは茶色。
それより少しだけ濃い茶色のほぼ同じ形のダウンコートを買おうと悩んでおられる様子。
私のジャッジ
ほぼ同じですから買わなくて良いですよ
と言いたかった。
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◎本日の想像話「埠頭の出来事」

2018年12月02日 | ◎本日の想像話
 深夜、バイクを走らせていた。ライトが照らし出すアスファルトは冬の硬質な空気ごしに見るとより青く見えた。誰も走っていない峠道を登る。十分な馬力を伴って登りカーブを加速する。イメージ通りのラインをタイヤは忠実になぞる。我ながら惚れ惚れする。
 速さを追い求める必要は私にはない。この世に存在しない私は、その気になれば光の速さでも比べられないスピードで移動する事は出来る。しかし、バイクにまたがる自分。カーブを駆け抜ける自分を想像するだけでたまらない気分になるのだ。私ってかっこいい。出来れば意味もなく激しい雨なんてものが降っていれば、なおすばらしい。私は自分に酔いしれる為にバイクを操っている。
 峠を登りきり、下りへの直線にさしかかった時、レザージャケットのポケットに振動を感じた。私は現在の高揚と、仕事の幸福を秤にかけた。舌打ちをしながら、バイクを路肩に停め、グローブの右手だけを外してポケットから端末を取り出す。
「お前の現在位置は把握している。埠頭の倉庫に行け。詳細は添付ファイルを見ろ。野口という男を守れ。お前が行かなければ野口は死ぬ」
「私のことをお前と呼ぶ相手は決まっているが、念のため確認する。あんた悪魔だな」わたしは踊るように両手を操り、空中で端末に文章を入力した。程なくして返信が入る。依頼主とのやり取りは相手が誰であろうとメールで行う。面と向かって私と会うのは彼らのルールに反しているのだろうか。
「そうだ。ちなみにえんま帳の不備の依頼という事は理解しているか」
私は苦笑いを浮かべる。
「天界も魔界もいったいどうなっているんだ。地獄に堕ちるべき人物なのだが、まだその時ではない。手違いで地獄にやってくる。死ぬってことだろう」
「そうだ。そういうことだ。神と違う点はひとつ。閻魔大王はこの件の事を知らないということだ。事務方悪魔の手違いを悪魔らしく隠蔽したいということだ」私はメールを読み、確認と念押しを行う。
「私は天国、地獄どちらかの世界に行くのか現段階では不明だ。そちらに行く場合、幹部待遇で迎えてくれる。その点間違いないな」
「魚心あれば水心だ。安心しろ。俺は悪魔だぞ。悪魔うそつかない」
私は最後の返信は無視して、端末をポケットにしまった。
 野口を守るべき場所は確認した。

 私は路肩に停めていたバイクのスタンドを蹴り上げ、後方を目視確認したあと車体をゆるりと出した。一気にアクセルをひねる。視界が一瞬溶けた後、潮の香りがヘルメットの中に充満するのを感じる。人気の全くない埠頭に私はいた。ヘルメットを脱ぎ徒歩で十番倉庫を目指す。
 一台のセダンがアイドリング状態で止まっているのが分かった。運転席、助手席、後部座席それぞれ人が座っている。合計三人。私は目を閉じて開けた。セダンのすぐそばにいる。セダンの色は青色だった。
 後部座席で座る男のタバコの火が顔を照らし出す。口ひげがユーモラスだが、瞳がその愛嬌を消し去っている。野口だ。添付ファイルには彼のこれまでに犯した犯罪が列挙されていた。なるほど極悪人だった。私は今夜、この人物が死なない様に守らなければならない。運転席の男が落ち着かない素振りで野口に話かける。
「ブツの受け渡しっていつもこんな感じなんですね。深夜、埠頭、武装って、この状況で警察に踏み込まれたら言い訳出来ないっすね」緊張の為、饒舌になっているのは私にもわかった。
「そうだ。しかも今回は本部抜きの俺たち三人だけの山だ。ちなみにブツは本部のをちょろまかしている」私は思った。野口ってせこいな。
助手席の男も口を開いた。
「自分、その話初耳なんですけど分け前がいただけるのならよろこんでその話に乗るっすよ」満面の笑みを浮かべている。
野口以外の二人はちょろい印象だ。なぜ、野口はこんな若者を連れているのだろうか?

 前方からヘッドライトがきらめきつつ近づいてきた。黒塗りのセダンがゆっくりと姿をあらわす。野口達の車と向き合う形で停車した。
 私は首筋の辺りに違和感を感じた。始まる。そう思った。悪魔側への連絡は派手だ。真下に向けて銃の弾丸を放つ。程なく私の体が光始めた。
「おかえり人間界。ただいま俺」そうつぶやきながら野口達の車の下に潜り込んだ。頭上の車から三人が降りた。
 相手の車からも三人降り立った。
「金はこちらにある」
毛足の長い真っ白のコートを着込んだ男がアタッシュケースを少し持ち上げた。部下達も白色のスーツを着込んでいる。まるでチーム白だ。私はあだ名をつけた。
「ブツはここだ」
野口も同じく小振りのアタッシュケースを持ち上げる。
六人の視線は二つのアタッシュケースに集中している。私は車の横に転がり出て、資材の置かれている闇にとけ込んだ。
 お互いの部下がそれぞれのアタッシュケースを持ち、ふたを開けて中身を見せた。一つは札束、一つは白い粉の袋がいくつも入っている。
 白コートの男がうなずく。
 それを合図にチーム白の二人の部下が発砲した。野口以外の二人が前のめりに倒れて海に落ちていった。
野口は無言でエコバックを懐から取り出し、現金を移し替える。空のケースを海に投げ捨てた。野口が背をむけながら言う。
「じゃあな。車はこのまま放置していく。あの車は若い衆の私物だ。若気の至りで組のブツを持ち出し私腹を肥やそうとしたが返り討ちにあった。そういう筋書きだ。あんたたちもいい話だったろ、相場の半分の値でブツを手に入れるんだから」
「そうだな、悪くない話だった。でも半値よりもっといいのは何か分かるか」
 野口がぎくりと動きを停めて白コートを見上げる。
「ただだよな」
 チーム白の二人がゆるりと銃口を野口に向けた。
 私はすでに暗闇の中を移動済みだ。今夜は音のしないラバーソウルの靴を掃いている。チーム白の真後ろから弾丸を三発発射した。腕、腕、足に命中させる。チーム白の地面に落ちた銃を次の二発で破壊する。今回の弾丸は実弾だ。悪魔からの依頼では都合のよい弾丸は調達できない。
「逃げろ」私は野口に叫んだ。奴はエコバックを握りしめた。そして自分たちの持参した白いブツ入りのケースも拾い上げると後ろを見ずに走り出した。
 悪魔からの依頼はこれで完遂した。今夜、野口は死ななかった。でも近い内に本部とチーム白から追っ手がかかるだろう。どうせ長い命ではない。
 私は天使からもらったワンカートンからタバコを一箱取り出した。天使達は気前がいい。もしくは俺は安上がりだと思いつつ着火した。
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