◎本日の想像話「お遊び」

「大家さんの要望で、ちょっとしたお遊びにつき合って頂けるとお家賃はずいぶんお安くしてもいいと言われています。」
その一言で、借りる物件を決定した。

そのアパートは作りが変わっていて、エントランスから長い廊下が続いていた。
ざっと１００ｍあろうか。
これがなければ１階部分にも何部屋かとれるのでは無いか、そう思った。
金持ちの考える事はとかく分からない。
もう一つ変な事…引っ越しが済み、１週間が経ったが、他の住人に会った事がない。
まるで俺しか住んでいないみたいだ。
そんなある日の月曜日、仕事から帰るとエントランスから続く長い廊下にドアが出来た。
引き戸。
虫が入るのを嫌っての二重扉かなと思った。
火曜日、もう一つドアが出来た。
折れ戸。
水曜日またドアが増えた。
自動扉。
長い廊下に次から次へと扉が増えていく。
何の冗談だろうこれは。
木曜日。
両開きの扉。
とうとう鍵がかけられている。
ご丁寧に、ロック部分は１４枚の数字がバラバラにはめこまれたパズルになっている。
スライドさせて１～１４までを並べるあれだ。
舌打ちしてパズルに取り組む。
今は便利な世の中になった。
スマホで解き方のコツを調べる。
２０分後…
パズルを解いた。
電磁ロックが解除された音がした。
苦笑いをして先に進んだ。
金曜日。
○と×が書かれた扉が２つ横に並んでいる。
なぞなぞが書かれている。
「豚と馬、勝つのは豚。○か×か」
（なんだこの子供だましのなぞなぞは…。トンカツで勝つのは豚か？でもこの先もあったな。トンカツ食ってうまかった、で、馬が勝つ。どちらでも言えるじゃあないの…まあ、いいか）
「○」の扉を開けた。
何も起こらない。

どこからかこの様子を大家は観察して楽しんでいるに違いない。
まったく金持ちの考えることは分からない。