虚空漂浪日記

魂の開放を求めて、右往左往。嫌われものの”宗教”の根本を捜し求める日記です。

虚報の構造‐道新で検証する

2011-04-10 11:14:12 | 社会
「北海道新聞 2011年4月8日 朝刊より」



呆れた記事です。そして明らかな虚報です。北電あたりを持ち上げる提灯記事であることは間違いありませんね。

前回使用したブラジル・ガラパリの調査報告書は、「高度情報科学技術研究機構」のものです。
この機構は、HPによると「1981年に設立された財団法人原子力データセンター(NEDAC)を起源とし、1995年に組織の変更が行われて現在に至っています。原子力、地球環境等の分野における情報科学技術の高度化、大規模計算機の利用技術の開発、原子力分野のコード・データベースの提供などで多くの実績を上げ、この分野での発展に貢献してい」るそうです。
原子力関係の企業に都合の良いデータを蓄積して、「安全・安心」を歌う機構だということが即座にわかります。

このような直接的な団体のデータのみでは世間の批判を浴びることになるため、これをバックアップする中立的な仮面をつけた団体が必要となります。
研究費などで買収された大学の研究機関もその部類にはいるかもしれません。

道新(北海道新聞の略)の記事は、そうした団体が調査した報告書をベースに書かれていますが、相当ねつ造された記事であることは間違いありません。
団体名は「公益財団法人体質研究会」ですが、どうも放射線について調査・研究し、市民にプロパガンダする団体のようです。
名称からすると、一見、何か中立的な研究機関のようにみえますが、高度自然放射線地域の調査では、「高度情報科学技術研究機構」と全く同じ地域を調査しており、同機構のダミーではないか?と思わせる部分があります。

ネット普及のおかげで、私たちは大まかな調査の概要を知ることができます。
実は道新で取り上げられた調査報告の概要はネットで公表されており、内容を確認することができます。

少し検討してみましょう。

記事の2段目に放射線量が書かれています。イラン・ラムサール、ブラジル・ガラパリ、インド・ケララ、中国・陽江の4地点です。
3段目に「このうち広州に近い陽江には7万人が住み、その半数以上が10世代以上にわたって住み続けている。」とあります。
この部分は、確かに報告書にもそのように書いてあります。

が、調査の対象となったのは「同じ場所に二世代以上住んでいる漢民族系の住民に限定して行いました。」ということです。
記事にかいてある「その半数以上が10世代以上にわたって住み続けている。」ことは全く関係ないのですw。

騙しのテクニックですね。
高い自然放射線を長年(10世代以上)浴びている人々に対して調査したけれども、対照地域の人とガンの死亡率では大差なかった=高い放射線を浴びても大丈夫!と騙すわけです。

ところで、調査対象となった「二世代以上の漢民族系」ですが、二世代の概念がはっきりしません。多分、「親・子がいる世帯」=二世代という意味ではないでしょうか?
何となく、この辺に大きなごまかしがあるような気がします。実は時間の概念が欠落しているようなのです。
また、何故、漢民族系としたかについても、報告書では説明がありませんでした。
推測ですが、原住民(漢民族系以外)だと、都合の悪い結果がでる可能性があるからかも知れません。

インドの報告では、「男性に見られた肺がん発生の増加と女性における甲状腺がんの高い発生率で、これについては、さらに検討が必要です。子宮頸がんは乳がんに比較して低率にもかかわらず、この集団では子宮頸がんと乳がんの発生率がほば同じレベルでした。」と高い発生率について報告しています。

しかし、ここでも、「初期の断面分析では、がんの全体の発生率は両地域(ケララと対照地域のこと)で変わらないことが示されています。」と文章で書かれているだけで、具体的な根拠は示されていません。

実は、この報告書ではイランのラムサールについても結果が書いてありまして、「対照地域との比較では、高自然放射線地域で(がんによる)死亡率が少し高いでした。」と書いてあります。

新聞記事では、都合が悪いので、この部分は触れていませんね。

最後に、研究員の談話として「現在の福島県の放射線量は原発付近を除けば健康上、全く問題ないレベル。」と言わせています。

この報告書は相当眉唾なものですが、隠せない事実はそのまま書いてあるのだろうと思います。
一方、新聞記事は、それを更に編集して、都合のいい内容をつなぎ合わせ、広告主に都合のよい記事にして、読者を騙しています。
余程の趣味人でないかぎり、報告書をみて内容を比較することはないでしょうから、ほとんどの人は騙されますねw。
それが、現代における虚報の現実なのです。マスコミがその一端を担っているのです。

最後に、この報告書では、「高自然放射線地域住民の染色体について」も報告しています。
内容は中国の陽江だけですが、放射線の浴びる期間の短い子供は染色体異常が少ないけれども、浴びる期間の長い大人は染色体異常が増加することを認めています。

「高自然放射線地域の住民が対照群に比べて被曝線量が多くなっており染色体異常も多くなっていることが判ります。横軸に年令をとってみると(図10)、子供の頃には被曝期間が短いので両群であまり差が出ていないが、年をとると共に差が大きくなってきます。中年以降になると有意差が出ます。これにより、放射線が高自然放射線地域では染色体に対照地域より多くの傷をつけているということが確認されました。2動原体と環状染色体の分析により、高自然放射線地域で2動原体の頻度が増加している事が分かりました。」

何か聞いたことのない言葉、「二動原体」「環状染色体」といった言葉ですが、どうも染色体の分裂が機能しなくなった状態の染色体らしいです。
ですから、分裂できない=死ぬしかない細胞という意味のようです。
死んでしまうから大丈夫という認識らしいのですが、私もまだよくわかりません?

もう一つ、「転座」の解析をしています。転座とは染色体の一部が放射線で切れ、部分的に入れ替わるけれども分裂可能な染色体である状態をいうようです。分裂するので、体に影響があるとされているようです。

報告を見てみましょう。

「子供と大人では転座の頻度に差がありますが、両地域のあいだでは差が認められませんでした。高自然放射線地域で、2個体が飛び抜けて高い値を示していますが、1個体はその後の調査で医療被曝者であることが判りました。他の1個体は放射線高感受性の人である可能性が考えられます。これら2個体を含めたとしても両地域で有意差は認められませんでした。年令を横軸に、転座の頻度を縦軸にとってみると、両地域には差が無いということがさらにはっきりと解ります(図12)。」

報告では「両地域(陽江と対照地域)には差が無い」といっていますが、図12を見る限り、明らかな差が見て取れます。差がないと言いたいのでしょうが、下限の数と上限の数を見比べると、陽江地域の上限数は多く、下限は少ないことがはっきりとみてとれます。
地域差がこれほど歴然としているのに、「差はない」のだそうですw。

この報告書は明らかにインチキな報告書ですが、ごまかせない部分は表示されていますのでインチキ度がわかりますが、新聞記事になると全くわかりませんね。

本当にどうしようもない人間たちです。

灯油を買いに行った折、たまたま目にした道新の記事をみて、呆れたので書いてしまいました。

久々に、道新を150円出して買いましたw。インチキ書いてもお金がもらえるのですから、結構な商売ですね

また、お会いしましょう。

追加:http://www.iips.co.jp/rah/spotlight/kassei/final_2.htm(参考)

追加の追加:http://smc-japan.org/?p=1627(低線量被ばくの人体への影響について)


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