OKESAN 公的年金保険情報

公的年金および健康保険の社会保険関係の最新情報をお届けします。

江角マキコさんの年金への功績

2005-04-30 00:44:04 | Weblog
 江角マキコさんは、昨年「国民年金のCM」に出演したばかりにとんでもない災難に遭いました。
 自分の年金未納がばれて大騒ぎ。 結局、ご本人の謝罪会見までおこなったですよねえ。

 ところが記者会見でその未納理由が、誰から教えられたか知らないが「確定申告書で、社会保険料控除に国民年金保険料が書いてあったので当然払っていると思っていた」。これがさらに騒動に輪を掛けてしまった。保険料の未納どころか、その未納した分の社会保険料控除を申告したことにより、「脱税までやったんかい?」と突っ込まれる始末。(このアドバイスをしたやつは江角さんからこっぴどく叱られただろうな)江角さんの確定申告書を書いた税理士は誰だという犯人探しや、税理士会への苦情など大騒ぎになりました。

 わしも以前ブログでいろいろ書きましたが、4月になって各所の年金関連のHPで「確定申告の際には、証明書の添付が必要という」法改正の記事が掲載されるようになっています。やっと具体的に動き出したのですね。

 (一例)
 平成17年度税制改正法案が成立したが、その中に手当てされたものに社会保険料の支払調書の確定申告書への添付、年末調整の際の提出が義務化されることが明記された。これまで、社会保険料控除に関わる社会保険料の支払いを証明する書類の添付は必要とされなかったが、国民年金保険料の不払いが社会問題となっている中で、この添付が義務づけられなかったがために、不正に控除を受けるようなケースもあったといわわれている。

 こういう風に法改正がなされたのも本当に江角さんのおかげ(イヤミじゃなくて)。これで政府の税収は増えるし、未納だった国民年金を払わないといけないな、と覚悟する人も多くなったはず。  元々は江角さんのおかげというより取り巻きの判断ミスのおかげだったのかもしれませんが、いずれにせよ江角さんの未納の話が一連の改革の原点になったという所は間違いないでしょう。

 しかも、江角さんは「CMのギャラ返却」を申し出られていて(結局ノーギャラで出演されたことになる)、結果論ですがあれだけの女優をただでCMにつかったことになってしまいました。

 あのクラスの女優さんなら、国民年金の16万円(年間)の保険料が払えないわけはないですから、脱税の意図は全くなく、また最初から未納を自覚していたら仕事を引き受けないでしょうから、単に忘れていただけなんでしょう。けど、取り巻きがヘタレだとどうしようもないという典型例です。

 いろいろと叩かれて大変だったはずですから、もう江角さんを非難するのは止めたいです。十分世の中に対して償いは終わったのではないでしょうか。


 



社会保険事務所職員の覗き見批判の誤解

2005-04-29 10:16:00 | Weblog
 朝、出かける前にテレビを見ていたら、TVA局のコメンテーターで二木というのが、社会保険事務所職員の国会議員の年金情報覗き見問題で、「この地方はこの地方の人だけの情報が見えるように(要するに東京の人が福岡の人の情報をみれないように)、制限をかけなゃダメです」」なんていっていた。

 ああ、そうかと頭に電球。
 新聞が覗き見、覗き見と騒ぐので、何か「暗い倉庫の中に忍び込んで台帳をめくっている」ようなイメージや、「本来はできない特殊なコンピューター処理」をして、データをみている。そんな風に感じている人が世の中にはいるのですね。

 社会保険庁のコンピューターがなぜ、「他人のデータをのぞき見ることができるシステム」になっているかがわからないと、この問題は正確にはわかりません。

 昔、台帳で年金情報を管理していたのですが、それをある時点で全部コンピューターに入れたのです。ちょっと時期は失念したけど、だいぶ前。この作業がかなりミスが多いのです。
 また、基礎年金番号制度ができる前は、会社が変わるたびに年金番号も変わっていました。同一人が3つも4つも年金手帳を持っていることも普通でした。

 つまり、ある人の年金情報をみる場合に、その人の全部の情報が「基礎年金番号をキー」にして全部把握できない人がいるのです。
 
 60歳になって年金を貰いにお役所出向いた人が、「私は、昭和○○年頃に△と言う会社に勤めていたんだけど、どうも年金に反映されていないみたい。これどうなっているんでしょう?」と聞かれた場合にどう対応するか。

 当時の年金手帳(昔はカードみたいな紙だった場合もあります)が手元にあれば、基礎年金番号と違ってもその番号を打ち込んで確認は容易にできます。でも何せ30年も前の話だと、そんなものすらなくしている場合も多いのです。
 その場合、氏名と生年月日をキーに「その方の情報検索」ができないと困る。

 わしは社会保険事務所の内部のことはわかりませんが、社会保険事務所で親切な人だとその方の名前で調べてくれた後、いろいろな読み名で調べてくれます。コンピューター化当時の入力は、振り仮名の入れ方がメチャクチャで、渋谷友子は「シブヤトモコ」「シブタニトモコ」「シブヤユウコ」「シブタニユウコ」最低4つの読み仮名で検索しないと、実は正しい結果はでてきません。(こういう場合は多くあります)。本人の読み仮名が違うのは珍しくありません。

 現在の年金実務では、「氏名検索は必須」なのです。なければ事務が前に進まない。

 上の渋谷友子さんの例は、まだいいほうで、「太田」と「大田」を間違えた上に「オオタ」と「オオダ」を間違えて入力していると、振り仮名どころか姓まで違ってくると言うことになる。

 しかも、この渋谷友子さん、今は東京にお住まいだけど、自分の調べて欲しい年金期間が大阪に3年ほど住んでいた期間だったらどうしますか?
 北海道でも、九州でも、大阪でも全国の年金の履歴がわからないとダメです。当時の年金の記録が現在の基礎年金番号に結びついていないと言うことは、「記録がその当時で途切れている、つまりデータ上では大阪に住んでいるままになっている可能性が高い」のです。
 わざわざ、大阪に照会して大阪の社会保険事務所に調べてもらいますか? そんなバカな。人件費ばかりかかってオンライン化した意味が全くありません。

 そういう実情を見れば、偉そうに「東京の人は東京の社会保険事務所でしかデータを見られないようにしたらいい」なんて言えないはず。 しかも、東京の政治家は東京の社会保険事務所の職員が相変わらず覗き見ができるんだったら抑止にも何にもならない。

 年金実務上、覗き見ができるシステムじゃないと困るのです。問題は、理由もなくそれをしてしまうこと、たぶん覗き見した職員は、理由もなく「小泉純一郎」で氏名検索してたんでしょう。これは最悪で、責められてもしょうがない。
 「氏名検索ができる=容易に有名人の年金情報が見られる」今のシステムでないと年金事務が機能していかないでしょう、それこそ「貰い忘れ」「名寄せ漏れ」の年金が頻発する。

 「なんで、社会保険事務所の職員が簡単に覗き見できるの?」という疑問を年金素人の二木が述べるのは大いに結構。
 しかし、制度の中身もわからず、「規制しなきゃダメ」なんて偉そうに朝から自分でこの問題を結論付けているのをみると「実はあんたらが年金制度の誤解を増幅させているんだろう?」と叫びたくなります。

第1号、第2号、第3号被保険者

2005-04-27 23:56:19 | Weblog
今日のY新聞Web欄。著作権の問題があるので、あまりリンクは張りたくないけど、
間違えてしまう人のために一言いっておかなければいけないな。

 http://www.yomiuri.co.jp/iryou/ansin/an542702.htm

文中のように、1号 自営/2号 会社員・公務員/3号 主婦
と、言い切ってしまうのは、「素人的には○」「プロ的には×」です。誤解を招く書き方ですね。

年齢のことが全く触れられていない。
つまり、1号と3号は20~59歳、2号は年齢関係なし(原則)というもの。

例えば、夫はサラリーマン妻が専業主婦であったとしても
1.夫が61歳、妻が57歳のとき妻は第3号になれるか?
2.夫が58歳、妻が60歳のとき妻は第3号になれるか?
3.夫が66歳、妻が57歳のとき妻は第3号になれるか?

1秒以内に答えられますか? 意外と第1号、第2号、第3号の区別というのは、難しい。じゃ、

4.夫が19歳、妻は22歳のときは? どう?

1の答えは夫が第2号、妻は第3号なので、第3号として保険料負担なしで年金に反映

2の答えは夫が第2号、でも、妻が60歳に達しているので、第3号ではない。

3の答えは夫は第2号の場合とそうでない場合がある。妻もそれに呼応して第1号の場合と第3号の場合がある。

※ 法律では第2号は65歳まで(原則)だけど、年金受給権(原則加入25年)がないときはずっと(受給権が発生するときまで)第2号だという規定があるのです。てことは、年金受給権のない人は夫は第2号、妻は第3号被保険者、受給権ある人は(普通は65歳で受給権はあります)いくらサラリーマンでも65歳で第2号の期間はおしまい。妻も第3号となって保険料個人負担なしで納付扱い。という特典はそこからなくなる。

3の実例はいまだみたことないけど、条文を仔細にみるとそうなるでしょう(違う実例があったら教えてください)

さて4ですが、19歳の夫もやっぱり国民年金法では第2号被保険者、そうすると妻は第3号被保険者に該当する。

 注意が必要なのは冒頭で第2号は年齢関係なし(受給権ある人は65歳まで)って書いたんですが、老齢基礎年金に反映するのは、20~59歳の間の40年、19歳の時点は第2号被保険者だけど「国民年金の計算基礎に入れない期間」 第2号被保険者は、国民年金に入っているけど年金計算をしない期間があるんですね。

 かように、第1号、第2号、第3号 というのは正確に把握するのは難しいのです。でもそれがわからないとプロとしてコンサルタントができない。

上のような話を丁寧に文章にして某FP雑誌に寄稿したら、編集の人から「あなたの書いた文章は、簡単すぎてFPには物足りない。素人向きです」といきなり言われて、その後アッサリ切られた。そんなに簡単なことですかねえ? FP資格を持つ人、即答できましたか?







新聞記事ちょっとおかしい

2005-04-25 20:27:19 | Weblog
 本日のA新聞Web記事、なんだか突っ込みどころ満載。多分年金のわからない記者が書いたのでしょう。

(記事)国民年金の加入歴に「空白」期間が生じていたサラリーマンの妻が約41万人にのぼり、社会保険庁が2年前に把握した数の倍以上いたことが分かった。こうした主婦を救済する改正国民年金法が1日に施行され、同庁は空白解消を知らせるはがきを全員に発送した。長年放置されてきた年金制度の欠陥の一つは、これで解決する見通しだ。  

 うそっ、まだ未届の第3号被保険者がたくさんいるはず(実は届け出てこないと実態がわからない)、確かに法的には解決したけど、まだまだ届出る人がこれからも出てくるんだし、それが大変なんだから、厚生労働省の「大補運営発表」を鵜呑みにしちゃだめだと思いますが。

(記事)また、夫が転職した場合でも改めて届け出をしないと、3号に戻れないことがあった。
 ん? 今でも共済ー厚生年金とか夫が転職した場合は届出が必要(種別確認の届出)、ただ届出は勤め先がしてくれますけどね。

(記事)同庁がすでに届け出を済ませた人を集計した結果、対象者は40万9259人。4月以降に届け出た約3800人も、手続きが済み次第、救済される。  すでに年金を受給している人も、届け出をすれば納付済み期間が長くなるため受け取る年金が増える。
 今後、空白が発生しても、届け出をすればすべて解消される。  

 おーい、ウソ書くな。これは誤解されるぞ。
 届出すれば全て解消? とんでもない。今後(平成17年4月から)は、止むを得ない場合に限って、2年以上の第3号被保険者の期間は救済される。
 新聞記者さんは、今後届出ても平成17年3月までの期間については、無条件に救済されることを言いたかったんだろうとは推測できる。でもそれは専門家が見たらわかるだけ。我々の仲間うちでも、「止むを得ない場合」ってどんな場合なんだろうね?って話で盛り上がるくらいで、今後のことはまだはっきりわかっていないのに、こんな記事を書くなんて酷すぎる。









-->

学生無年金訴訟もどき新聞記事

2005-04-23 14:39:59 | Weblog
○学生時代に重い統合失調症を発症したが、国民年金への未加入を理由に障害基礎年金を不支給とされた福岡県内の元学生の男性が国などを相手取り、不支給処分の取り消しと損害賠償を求めた訴訟の判決が22日福岡地裁であった。
 一志裁判長は、障害の発症が障害基礎年金の支給対象となる20歳前と認定し、不支給処分の取り消しを命じたが、賠償請求は退けた。

 判決によると、元学生は大学に入学後、19歳のとき、不眠を訴えて医院で受診。20歳の86年12月、統合失調症と診断された。98年5月、県に障害基礎年金を請求したが、県は国民年金に入っていなかったため不支給とした。社会保険審査会に審査請求したが、01年4月に棄却。

<解説>
 これ、新聞の内容わからないんです。
 20歳までの間に、重い障害になった場合は、20歳から国民年金の障害年金がもらえます。
 保険料を払うのは20歳以降ですから、19歳までの間は支払義務はなく、一律障害者には20歳から年金が支給されます。
 現実に、障害者の通所する施設ですと、全体の通所者(入居者)の何分の一とかが、そういう障害年金を貰っている人だったりするそうです。

 この裁判の原告の元学生は19歳の時点で予兆が表れ病院に行ったようです。そして新聞記事から推測すると、障害の固定した日(通常は初診日から1年半後)に、「所定の障害状態になっていない」と判断されてしまったため、審査請求、提訴にもちこんだということ。

 学生の無年金の問題は、20歳を過ぎた学生が加入が任意加入なので保険料を大抵の人が払っておらず、かつその間に重い障害になったため、障害年金を受けられないことが問題になったのです。だから、そもそも「20歳になる前に障害状態」であった場合には、年金は支給され問題は発生しない。

 この学生の場合、19歳で病院に通院し始め、20歳の時点で障害年金を請求したのに「所定の障害状態に該当しない」と認められ、さらにその後「学生として大学在学中に病気が進行し所定の障害状態になった」場合にのみ、「学生障害者の無年金」の問題が発生します。

 今回、「障害が19歳で発生し、20歳で障害認定された」と裁判所が認めてしまったら、学生無年金障害者の問題がなく解決がついてしまうと思うんですが。

 なんだか新聞の見出しをよむと、学生が訴訟を起こしたら、全部「学生無年金訴訟」となるみたいですね。新聞には、同様の訴訟は9地裁で起こされ、東京、新潟、広島の3地裁で「無年金学生に国が立法措置をしないで放置したのは、法の下の平等を定めた憲法14条に違反する」との判決が出た。しかし、3月にあった東京高裁の控訴審判決では、元学生側が全面敗訴したとありますが、「ちっとも同様な訴訟じゃないと思うのですが、新聞だけでは、「争点が何」だったかわかりません。
 
 わしの読み方が足りないのかなあ。なんで新聞が学生無年金訴訟とからめているのかわからない。どなたかご存知でしたら教えてください。

 あと、もう一点
 「98年5月、県に障害基礎年金を請求したが、県は国民年金に入っていなかったため不支給とした。」 えええっ、障害基礎年金を県に請求するなんて聞いた事ないですよ。で損害賠償は、国を相手取ってか。県もいい迷惑でしょう、こんな記事を書かれるのは。当然ですが社会保険事務所は国の機関(現行)です。単なるミスか、はたまた、障害年金は何処が支給するのかすらわからないで適当に記事書いているのか。

 こんな間違いは見た時点で何もいう気が起こらなくなります。てか、この報道自体正しいのかな、と疑問が増幅してしまう。



みのもんた の 年金解説(3)

2005-04-23 13:45:04 | Weblog
 みのもんたの年金解説(1,2)で言いたいことはほぼ言い尽くしたのですが、一言補足を入れておきます。

 在職老齢年金制度というのがあって、60-70歳の場合、給与を貰って働いていた場合には「年金の全部または一部が停止」されるということがあります。
 みのもんたさんはこの停止がかかって年金が1円ももらえなかった。なのでテレビで不平を言ったと思うのですが、厚生年金法にはこういう条文があります(国民年金にもあるけどここでは省略)、

第41条 保険給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。ただし、年金たる保険給付を受ける権利を別に法律で定めるところにより担保に供する場合及び老齢厚生年金を受ける権利を国税滞納処分(その例による処分を含む。)により差し押える場合は、この限りでない
 
 要するに、年金は差し押さえできないということなんです。
 会社は、必ず倒産リスクがあります。で、会社の社長は個人財産を会社の保証にしているところも多い。
 そうなると、会社が潰れたとき、社長は老後どうやって生きていけばいいのか? という問題にあたるのです。老後資金のつもりで貯蓄していても、金に用途と名前はついていませんから、全部差し押さえられてしまいます。年金以外に、「差し押さえからも逃れる貯蓄の方法」が世の中にどのくらいあるでしょう?

 公的年金は、どんな怖い借金取りも防げます(まさか、社会保険事務所にいって、金を貸しているから○○会社の社長の年金をよこせと言えないでしょう)。
 社長の倒産リスク(倒産した場合の老後の不安)を除去し、より会社の経営に専念させようとする働きもあるのです。

 在職老齢の話ばかりで悪口をおっしゃいましたが、会社の社長の年金加入にはこういうメリットがあることをご存知でしょうか?

 年収何億の金を動かしている社長さんであれば、老後の年金が月額10万とか20万とかいう世界はチャンチャラおかしいのかもしれませんが、もし不幸にして会社が倒産してしまったときは5000円1万円のお金が重要になるのです。

 みのオフィスは、倒産にはノーリスクなのかもしれませんが、だから入らないわけにはいかない。もしそれを認めるならば、トヨタの社員も従業員が10人の町工場の社員もみな等しく、雇用保険(失業保険)に加入している事が矛盾になります。トヨタの倒産リスクは町工場の倒産リスクの何万分の一(それ以上?)でしょう。でもみな加入している。

 もうちょっといろいろ勉強してから発言してください。



 

 

遺族年金支給、戸籍の妻より実質同居の内妻優先

2005-04-22 12:01:03 | Weblog
○私立学校共済の遺族共済年金が、死亡した男性と別居していた戸籍上の妻と、同居していた内縁の妻のどちらに支給されるかが争われた訴訟の上告審判決が、最高裁第1小法廷であった。

 泉裁判長は、「男性と戸籍上の妻との婚姻関係は修復の余地がないほど形がい化しており、内縁の妻とは事実上婚姻と同様の状態にあった」と述べ、日本私立学校振興・共済事業団の不支給決定を不服として提訴した内縁の妻に、年金を支給すべきだとした。
 
 2001年に死亡した元夫は私立大学の元教員で、約23年間戸籍上の妻と別居。一方内縁の妻は、約17年間同居しており、同事業団に遺族共済年金の支払いを請求、しかし、同事業団は、別居が男性側から始められ、戸籍上の妻に離婚の意思もなかったことなどを考慮し、戸籍上の妻に年金を支給したため、内縁の妻が02年、東京地裁に提訴していた。

<解説>
 判決は、ちょっとわかりにくいので、噛み砕きます。

 夫が死亡した場合には遺族厚生(今回の場合は共済)年金が出ます。戸籍上夫婦で、同居してればほぼ無条件に妻に年金が行きます。
 戸籍上夫婦でなくても10年以上同居して、実質夫婦である場合にはその奥さんに年金が行きます。この場合は戸籍上夫婦である場合より、ちょっと証明が難しくなりますが。

 さて、今回の場合はそのミックス版。
 戸籍上は夫婦だけども、23年間も別居している。しかも内縁の妻として後に女性が夫にできて17年間も同居している。一体どっちに年金をだせばいいの? って話です。

 判例は実は1983年に、「戸籍上の婚姻が形がい化し、その状態が固定化しているような場合には、戸籍上の妻は支給対象にならない」との判断を示しているので、戸籍上夫婦であっても、夫婦関係が実質形骸化している場合は、遺族年金は受取れないのです。

 でも、今回は「この婚姻の形骸化」の実体判断が問題になった。
 少数意見の裁判官は、「男性は勤務先には戸籍上の妻を被扶養者として届け出て扶養手当を受け取るなどしており、形がい化とは言えない」として、内縁の妻への不支給決定を妥当とする反対意見を付けたそうです。

 つまり、自分の職場に元夫は、別居している正妻を被扶養者として届出てたのですね。これで、正妻のほうが、「別居はしているけど夫婦生活は完全に破綻はしていない。事実証拠もある。だから私に年金を頂戴」と主張したのでしょう。

 判決の結論としては、「実質関係重視」でした。 今回のケースはかなり特殊ですが、結婚の「形式」より「実質」をより重視する。と言う判例の立場を強固にしたということはいえると思います。

 一般論としては、争いをさけるために、こういう場合は、「早めに離婚して身の回りを綺麗にしていたほうがいい」と思いますが、そうはいってもズルズル行くのが男女関係なんでしょうか。

<個人的危惧>
 平成19年から、離婚時の年金分割制度が始まります。

 妻が専業主婦の場合は、自動的に夫の厚生年金の半分は妻に行きます。

 じゃ夫が、正妻と離婚しないで、新たに女性と恋におち実質的夫婦として暮らし始めた今回のような場合は、この半分をどちらが貰うの? という話。

 内縁の妻が同居し始めた時点で切って、その前は正妻、その後は内縁の妻に分けられれば、一番ですが、今の遺族年金の内縁の妻の受給要件は、おおむね10年以上の同居が条件となっている。ならば婚姻関係が実質破綻してから10年は、夫婦関係もないのに年金を半分正妻が貰えるの? そもそも夫婦生活が破綻しているのに年金半分もらうのは如何なものか。

 考え出したら、きりがないし、制度が実際走り出してからでないと、そういう難問にはでくわさないでしょうから、この辺でやめておきますが、ほんと頭の痛い問題です。

 頼みますから、世の男の人、好きな人ができたら、前妻との関係は「法律的にも実質的にも」きちんと切ってくださいね。そいうしないとわけわからなくなる。

厚労省、厚生年金の加入チェックを厳格化

2005-04-19 23:13:28 | Weblog
○厚生労働省は厚生年金の未加入事業所の加入を促すため、公共職業安定所(ハローワーク)で求人募集する事業所への加入チェックを厳格化する。
 具体的には、受け付け時に厚生年金に加入していることを明示しなかった場合、社会保険事務所に相談するよう指導する。
 また、必要に応じて社保事務所に情報を提供し、加入指導を要請する。未加入事業所がそのまま職安で求人活動するのを防ぐ。などの措置を講じるそうです。
 明日20日から実施予定。

<解説>
 この件はつい最近どこかの新聞記事で叩かれていた所の改善措置ですね。悔しいけれど我々のような場末が声を上げるより、全国紙が一回問題提起をするとあっという間に改善されるという典型例でしょうか。新聞の影響力は大きいです。

 うろ覚えですが、その記事は新聞記者が職安(ハローワーク)で求人票を調べてみたら、社会保険未加入だけど、求人を出している会社がボロボロ見つかった。というような内容だったと思います。

 当たり前だけど、「法人企業(株式、有限会社)は厚生年金にたとえ従業員が1人でも加入する義務」があります。個人の場合はまた別途規定がありますが、職安に求人をだす所って大抵「法人」ですよね。
  昔は、「社保完備」(社会保険=健保、厚生年金)入っているよというのが会社のセールスポイントになったのですが、今は社保不完備だと、「求人広告」すらできなくなる時代になりました。
 
 また、省庁の統合で昔とちがって職安と社会保険事務所の所管は厚生労働省で同一になりましたから、同じ省の機関なのに、組織が違うてんでバラバラの取扱で、法律に違背している事業所からの求人を受け付けるのでしたら、批判の対象になります。今まで、なんでこんな単純な協力体制ができなかったのでしょうね。

 社会保険に入っていない会社の社長からしたら、改悪そのものかもしれませんが、真面目に社会保険に入っている会社の社長からしたら、大変だけど「公平な競争のスタートライン」に立てたと思うでしょう。働く人の保護と言う点では歓迎すべきこと。競争はフェアにやらないと、絶対ズルしたほうが勝ちますから。


みのもんた の 年金解説(2)

2005-04-16 11:25:52 | Weblog
 続きになります、読む方は最初のほうからお読みください(わけがわからなくなります)。

 年金制度は、揺れています。それはわしも認識しています。
 しかし、人生一生のことですから、「年金制度」が必要か否か、必要ならば「どういう制度にもっていくのがいいのか」を真剣に討議することは、とても大切なことです。

 だからといって「ワイドショー」ネタにはして欲しくない。

 そういえば、年金の運用について、なんとみのもんたは「村上ファンドの村上さんとかそんな人に任せたら?」といってました。確かに今の年金資金の運用は問題があります。でもそれ以上に「あんたのその発言が問題」でしょ。
 年金資金は、その性格からして「きわめて安全な運用」が求められます。村上さんをどうこう言いたくないですが、公的年金が「徹底した安全運用」を求められるのは当然。相場の上げ下げで稼ぎを得る人は向きません。
 公的年金の02年度収支(時価ベース)が、過去最悪でしたが、?2003年度は持ち直しています。

 そもそも、公的年金の運用は、素人にはわかりにくく(企業の赤字黒字とは全く概念が違う)、もしテレビで放映するなら、それこそ財務(それも政府の財政に詳しい人)をつれて間違いのないようにしないとダメです。
 わしも、今はブログだから適当なことをいってますが、他人にちゃんと話をする時は財政の問題は怖いので必要最低限に控えるものなのです。

 年金運用が上がらないから相場師みたいな人に「年金資金を預けろ」って、一体どういうつもり? (?×5くらい)。
 
 ご忠告申し上げます。
 「みのもんた」さんは、あなた自身の番組を見て、「年金なんて信じられない」と年金保険料を支払うのを止めてしまった人」の老後の面倒を見れますか?

 それだけの覚悟がなければ、「年金不信を焚き付けるようなことは言って欲しくない」です。
 本人は「そういうことは言っていない」とおっしゃるのかもしれませんが、「貴方の言い方態度演技其の他いろいろ考え合わせると、第3者が誤解してもおかしくない」ような要素はテレビの中に多分にあります。テレビのプロなんですから、視聴者が自分の意図とは別な受取られ方をされてしまった。そういう経験は沢山おありだと思いますが。
 そういう演技の部分があるからあちこちのテレビ番組で引っ張りだこなのでしょうが、十分お気をつけください。

 繰り返すけれど、「年金制度の必要性」と「厚生労働省や社会保険庁のお役人の不祥事」とは別問題。一般の人が混同して、「役人に甘い汁を吸わせくらいなら年金はいらない」と感情的になった場合に「いや、年金の必要性と不祥事の問題は別だから少し頭を冷やして議論しましょう」といえないのでしょうか。そんな冷静な態度だと、マスコミ的に盛り上がらないんでしょうかね。

 年金批判大いに結構、年金不信大いに結構、公務員批判大いに結構。
 批判されることにより、物事は改善していきます。どんどんすべき。

 でも、批判できるだけの知識や能力のない人が批判すれば、それはマイナスでしかない。みのもんたの朝の番組をみるとつくづく思います。コメンテーターも沢山鎮座しているけど、「年金に関しては素人」ばかり。

 全く関係ない話ですが、経済破綻してしまった、ロシアでさえ、年金は生き残っています

 確かに、子供孫にお小遣いを与える余裕はなくなり、年金生活者はドン底の生活のようですが、記事にあるように、「最低生活費の4分の3の支給額」は確保されています。裏を返せば、あと4分の1の蓄えがあれば何とかやっていける。
 ところが、年金が全くなければ確実に死ぬしかありません。

 ロシアのような経済破綻した国でも年金が残っている。このことは我々に大きな意味をあたえてくれないでしょうか。社会主義であらゆる批判が抑えられていた国でこれです。
 年金は息が長い制度ですから、今のうちにちゃんと手を打っておけば(そのためにも批判は大歓迎)、「潰れることは無い」と思うのですが。日本も酷い財政状態と聞きますが、ゴルバチョフやエリツィンの時代のロシアより酷いことになっているのでしょうか。

みのもんた の 年金解説

2005-04-16 10:56:26 | Weblog
 年金情報じゃないですけど、一言二言、最新情報じゃないけどたまには許してください。

 今日早起きして(別に理由はなく、単に目が冷めただけ)ぼんやりテレビを観ていたら、みのもんた が出ている。朝からハイテンションだなあと思いながらも続けてみていたら、なんとまた年金問題の話してる。
 
 今日は、社会保険庁の「ずさん体質」の話。社会保険庁と厚生労働省の最近の不祥事は非難されてしかるべき話だし、わしも怒鳴り込みたいくらい腹が経ちます。でも不祥事と年金とは別。「みのもんた」の最大の罪は、「よく中身を理解していないのに、公務員不信をみな年金不信にすり変えて世論をたきつける」こと。

 年金は不信の歴史 これは否めない事実で、30-40年も前に当時の大蔵省の官僚が「年金なんて信じられないなあ」なんてコメント(私的に)としたという話も聞きますが、自分の将来について金を払うことは、「全ての人にとってある意味賭け」のようなもの。
 その時代にそういうことを「政府のお役人が言った」と信じたくなくなるのですが、だから未納してしまったらどうなるか。その発言をしたお役人は公務員で、今「共済年金」を貰い、さらに天下りでどこかに入って収入タップリ、「ウハウハな老後」でしょう、でもそれを信じた人は、「無年金」で悲惨な老後。
 
 笑い話のような話ですが、実際にあるのです。今でも同じことが実際にある。「年金なんてどうなるかわからない」と新聞や雑誌が書いていますが、書いた記者は「高い給与で厚生年金に入っている」だから老後の年金は多い。老後に「そういう記事を書いた人が、老後安泰で、そういう記事を信じた人が無年金」悪い冗談です。

 さてみのもんたに話を戻して、

 彼は最近の番組でこういうことをのたまった(これはわしが実際に聞いた)。
 「私にもね、年金証書が来たんです、なんとですね、年金は全額停止。私は1円も貰ってないんですよ。お金払っていたのにそんなバカなことがありますか?」

 年金は昭和61年に60歳から65歳支給に変りました。今は過渡期の特例措置で60歳からでも年金がもらえます。(みのもんた→生年月日1944(昭和19年)だそうです。だから受給権は発生している。

 しかし、財政状態が逼迫しているので、「ちゃんと働いている人はまだ年金はいいでしょう」ということで、60-70歳の間の人で働いている人には、「年金額の調整」がかかります。お金を稼いでいる人は停止です。

 実はその基準によれば、みのさんの年齢くらいの人だと、年金額にもよりますが50万円近くの給与だと確実に年金は全額止まります。年収で600万円。でみのさん、あんた収入はいくら?
 600万円ってみのもんたの月収以下でしょ?

 庶民でも60歳過ぎて年収600万円の仕事がある人といえば、かなり恵まれた人です、そんな人でも年金は停止。でも「60歳を過ぎても、こんな高給の仕事があるのは幸せ、引退するよりはるかに良い」と黙々と働いているのです。

 昔、松下幸之助や本田宗一郎(みなさん十分ご承知の通り、松下電器や本田技研の創立者)でさえ、年金を貰っている。という笑い話がありましたが(当時は支給停止制度がないのでこういう人たちにも年金が出ていた。大会社ですから社会保険の加入もきちんとしています)、みのさんにしてみれば、こういう人たちに「財政が逼迫していても、お金持ちに年金をださない制度にしたのは、年金制度の大改悪」だったんでしょうね。

 少子高齢化が続いて、年金財政が逼迫するなら、こういう「公的年金なんかお小遣いにもならないようなお金持ち」には年金を遠慮してもらうのは社会的に止むを得ないと思うのですが。

 年金の悪口で散々儲けているんですから、H19年から申出による年金の支給停止制度もできますしお使いになられたらどうでしょう。将来65歳を過ぎて、年金が出始めるようになっても年金貰わないですよね。さんざん年金をダシに稼いだんですから、年金を貰いながら年金の悪口を言うことはしないですよね?

 あと、みのさんが、「年金が全額停止」になっているということは、「みのもんた」が自営業ではなく、どこかの事務所から「給与」という形でお金を貰っていることがわかります。彼がもし自営業なら年金はいくら稼いでも「億単位であっても」止まっていない。
 もし年金が欲しいなら、「自営業」としてタレント活動を続ければいいわけで。でもそうしてない。つまり「従業員(役員なのかもしれませんが)として給与を貰う」というほうが税金面でお得だから、そちらを選択しているんですよね。
 
 年金の受取りのメリットを捨てて、税金のメリットを取ったのですから、普通の市井の会社員のように、「会社員」と「自営業」の使い分けができない人と同じような文句を言ってもしょうがないと思いますが。

(長くなるので2回に分けます)