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遺族年金支給、戸籍の妻より実質同居の内妻優先

2005-04-22 12:01:03 | Weblog
○私立学校共済の遺族共済年金が、死亡した男性と別居していた戸籍上の妻と、同居していた内縁の妻のどちらに支給されるかが争われた訴訟の上告審判決が、最高裁第1小法廷であった。

 泉裁判長は、「男性と戸籍上の妻との婚姻関係は修復の余地がないほど形がい化しており、内縁の妻とは事実上婚姻と同様の状態にあった」と述べ、日本私立学校振興・共済事業団の不支給決定を不服として提訴した内縁の妻に、年金を支給すべきだとした。
 
 2001年に死亡した元夫は私立大学の元教員で、約23年間戸籍上の妻と別居。一方内縁の妻は、約17年間同居しており、同事業団に遺族共済年金の支払いを請求、しかし、同事業団は、別居が男性側から始められ、戸籍上の妻に離婚の意思もなかったことなどを考慮し、戸籍上の妻に年金を支給したため、内縁の妻が02年、東京地裁に提訴していた。

<解説>
 判決は、ちょっとわかりにくいので、噛み砕きます。

 夫が死亡した場合には遺族厚生(今回の場合は共済)年金が出ます。戸籍上夫婦で、同居してればほぼ無条件に妻に年金が行きます。
 戸籍上夫婦でなくても10年以上同居して、実質夫婦である場合にはその奥さんに年金が行きます。この場合は戸籍上夫婦である場合より、ちょっと証明が難しくなりますが。

 さて、今回の場合はそのミックス版。
 戸籍上は夫婦だけども、23年間も別居している。しかも内縁の妻として後に女性が夫にできて17年間も同居している。一体どっちに年金をだせばいいの? って話です。

 判例は実は1983年に、「戸籍上の婚姻が形がい化し、その状態が固定化しているような場合には、戸籍上の妻は支給対象にならない」との判断を示しているので、戸籍上夫婦であっても、夫婦関係が実質形骸化している場合は、遺族年金は受取れないのです。

 でも、今回は「この婚姻の形骸化」の実体判断が問題になった。
 少数意見の裁判官は、「男性は勤務先には戸籍上の妻を被扶養者として届け出て扶養手当を受け取るなどしており、形がい化とは言えない」として、内縁の妻への不支給決定を妥当とする反対意見を付けたそうです。

 つまり、自分の職場に元夫は、別居している正妻を被扶養者として届出てたのですね。これで、正妻のほうが、「別居はしているけど夫婦生活は完全に破綻はしていない。事実証拠もある。だから私に年金を頂戴」と主張したのでしょう。

 判決の結論としては、「実質関係重視」でした。 今回のケースはかなり特殊ですが、結婚の「形式」より「実質」をより重視する。と言う判例の立場を強固にしたということはいえると思います。

 一般論としては、争いをさけるために、こういう場合は、「早めに離婚して身の回りを綺麗にしていたほうがいい」と思いますが、そうはいってもズルズル行くのが男女関係なんでしょうか。

<個人的危惧>
 平成19年から、離婚時の年金分割制度が始まります。

 妻が専業主婦の場合は、自動的に夫の厚生年金の半分は妻に行きます。

 じゃ夫が、正妻と離婚しないで、新たに女性と恋におち実質的夫婦として暮らし始めた今回のような場合は、この半分をどちらが貰うの? という話。

 内縁の妻が同居し始めた時点で切って、その前は正妻、その後は内縁の妻に分けられれば、一番ですが、今の遺族年金の内縁の妻の受給要件は、おおむね10年以上の同居が条件となっている。ならば婚姻関係が実質破綻してから10年は、夫婦関係もないのに年金を半分正妻が貰えるの? そもそも夫婦生活が破綻しているのに年金半分もらうのは如何なものか。

 考え出したら、きりがないし、制度が実際走り出してからでないと、そういう難問にはでくわさないでしょうから、この辺でやめておきますが、ほんと頭の痛い問題です。

 頼みますから、世の男の人、好きな人ができたら、前妻との関係は「法律的にも実質的にも」きちんと切ってくださいね。そいうしないとわけわからなくなる。