OKESAN 公的年金保険情報

公的年金および健康保険の社会保険関係の最新情報をお届けします。

離婚時年金分割(臨時編)

2006-01-08 18:05:57 | 離婚時年金分割
 明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。
 といいつつ、もう8日も過ぎたのでこの表現は正しくないのかもなあ。

 今回はご挨拶と雑談ということで、ちょっとお茶を濁します。

 年末、忘年会が続いてその席上で、また田舎に帰省していろいろな人とお話をしました。当然離婚時年金分割の話も話題もあちこちで出ました(わしが年金の仕事(勉強)をしているということで特に話題として振られた部分もあるかもしれません)。
 
 で話をしていて、離婚時年金分割に関して「年金分割は夫の年金を半分にしてもらえる」という誤解をしている人が多すぎ。
 まあ、おおっぴらに年金分割を聞いてくる人は、話の種として聞いてくるだけで、離婚を真剣に考えている人は、そんないい加減な噂を真に受けてはいないと信じてはいますが(裏切られるかなあ)。
 年金の素人さんばかりですから、丁寧に説明すると、ある程度は概要がわかっていただけるのですが、それにしてもこの現状はまずいよなあ。

 20-60歳まで夫が働いていて妻は専業主婦、結婚が30歳 という場合、夫が20万円の年金(月額かつ国民年金と厚生年金合わせて)だった場合には、約5万円の年金が分割されるだけ。

 この辺のカラクリは、ブログに書いたし、これからも書くので説明しませんが、本当に「噂話の一人歩き」が巷にどんどん進行していることに恐怖を感じています。

 離婚時年金分割の制度が始まるまであと1年と3ヶ月。
 本当にこの制度は上手く機能していくのでしょうか。
 来年の今頃は、いよいよ本番直前で緊張感に包まれるということになっているのでしょうか。

 今年も最新記事をなるたけリアルタイムにUPしていく所存です。
 できれば、またご訪問をよろしくお願いします。
 

離婚時年金分割ー15(週末投稿)

2005-12-18 15:02:08 | 離婚時年金分割
 第3号被保険者(専業主婦の妻)の分割の場合は、自動的に半分分割ですから、何ら悩むことはないですけれど、そうでない場合の分割は、「年金が半分」なんて期待しないほうがいいという話は前回書きました。

 そんなことを書いてから、寝床に入って考えても、悩んでいたのは
 「年金以外の財産との調整ができるものなんだろうか?」 ということ。
 
 別れる妻の側が、「年金は将来65歳とかにならないともらえないもの」なんだから、年金分割で年金を貰う権利よりも「安くても現在時点で価値のあるものが欲しい」として、年金分割で按分割合を沢山貰わない代わりに、「財産を普通の協議より多く貰える」 というような取引ができるか否か。

 目の前に預貯金が1千万円ある。あとの財産は家くらい。

 そういう家庭が離婚する場合の財産は、「何を分割したらいいのか」が明確(もちろん、具体的に幾ら分割するかは大変面倒です)。目的の特定は今までは楽だった。
 ところが、年金受給権は「年金を貰う時点になってみないとわからないもの」、物価スライドしますし、法律改正も入るかもしれない。海のものとも山のものともわからない。空に浮かんでいる雲なのかもしれません。
 
 そんな年金のような将来、「支給額が不明確な」ものを現在ある財産分割の取引の材料として利用できるのか?

 社労士的には、離婚時は「財産分割」と「年金分割」を完全に分けて考えてもらうほうが楽。財産分割と年金分割って全く話が違うものですから。財産分割の主たる担い手の弁護士さんとしても、「なんだか良くわからない年金まで手を突っ込むのは嫌だな、財産分割と年金分割が分けて考えられるなら、年金分割の具体的な解説は社労士に頼んでしまえばいいだろう。」と思う人も多いかもしれません。

 でも、世の中のお母さんたちの中には「子供を2人引き取るんだから、老後の年金より、今の生活費がはるかに大切。だから例えば「子供が20歳まで月々10万円の現金を送るという約束を確実に履行してもらったほうがよくて、それを反故にした場合には悔しいから、年金を分割して欲しい。とか とにかく年金受給権より今お金が欲しいから年金要らないから金をくれという風な現実的希望を持たれる方がいらっしゃるかもしれない。

 そう思うと、世の中の離婚する妻の立場からは、使い勝手は「年金分割」という武器を「財産分割」に使えるようにしたほうがいいのかなあとも感じられます。
 (上の、10万円の現金を送らなかったら云々ということは、できるか否かまた不明です。ただ2年以内に手続きしろということになっているので、ダメでしょう)
 
 本当に、一体どうなるんだろう。

 最初に、弁護士さんは「年金がわからないだろう」と書きました。でも社労士は逆に、「離婚時の財産分割の現状がわからない」。離婚時の財産分与と年金分割が絡むと本当に困ります。

 夫6:妻4 というような按分率の指定は誰でもできます。
 ただ、妻が4となったということはどういうこと? というのは難しい。
 現在価値でいいから幾ら年金が私のほうに来るようになったの? そういうことは皆聞きたいし、その具体的な額がわからないの他それ以外に貰う財産が妥当なものかもわからない。これじゃ財産分割も進まないかもしれない。
 

 そろそろ、書店に出向いて、離婚の手続きと財産分与についての解説書を買って、勉強しないとダメですね。

 離婚の扱い件数の多いベテラン弁護士さん、誰か紹介してくださいな。年金知識は幾らでもこちらから出しますから。 そんな気になります。
 



 
 


 
 



 


 
 



離婚時年金分割-14(週末投稿 再開しました)

2005-12-11 23:08:53 | 離婚時年金分割
10月から、FP試験、旅行(台湾)、引越し(パート1=居宅)、引越し(パート2=仕事場)で、しかも週末は毎週来客が相次いだりして、殆ど更新をできずにいました。
 ご贔屓にしてこちらのブログをお読みになっている方は皆無だと思いますが、それでもまれに迷い込んでいらっしゃる方がわずかでもいらっしゃるので内心更新ができないことにイライラとした気持にもなっていました。

 やっと身辺も落ち着き、更新ができる状況になりました。

 さて、離婚時年金分割のこと、最初の前提部分が飛んでいることに、長期間間を空けたことで気づきました。

 離婚ということをしたことがないから、離婚の手続きがわからなかったのです。
 
 長期間書かない間に気になったのは、「離婚時年金分割」と書いてあるけれど、「離婚前にする」のか「離婚後にする」のかが明確になっていなかったこと。そこは相当に重要な問題です。で、今まで偉そうに離婚時年金分割と書いていたんですが、どうも「離婚手続き後年金分割」と書いたほうがいいのかもしれない。

 条文に戻って読んでみるとと、「離婚等をした場合」つまり離婚をした後に「年金分割」を協議し始めるという手はずになるような書き方をしてある。

 いや、これが実は非常にヤバイです。

 平成20年から開始される、第3号被保険者の自動分割は年金の自動的な分割なのでもめる可能性はほとんどない。でも、それ以前の期間にかかる離婚時年金分割は「当事者の協議」で「協議がまとまらないときは、家庭裁判所」が、按分割合を決定する。となっている。

 つまり、離婚時には「幾ら年金がもらえるかわからない」状態で離婚するということ。
 それなのにすでに、「夫の年金の半分がもらえる」が一人歩きしている。
 夫の年金の半分は「厚生年金部分」であって、しかも「婚姻期間中」のものであって、しかも「按分割合は協議または家庭裁判所が決める」という条件の部分が全く飛んでいる。

 なお余談ですけれど、年金だけではなく離婚時の財産分与も離婚をした後に協議することになっている。そうなると、財産分与の時に同時に「離婚時年金分割の按分」も決定されるのかな?この辺は離婚手続きをもうちょっと突っ込んでみないとわからない。

 期待に胸を膨らませて(かどうか知らないが) 年金を半分もらえるから我慢して今まで離婚しなかったのに、半分じゃないの?たったこれだけ? というグチが聞こえてくるような気がします。

困ったことに、年金分割の一人歩きが始まっている。月額20万円夫が貰っている年金であれば、夫の国民年金分の6.6万円を除いた13.4万円が対象。
そのうちの半分だから、最高で6.7万円(全期間が対象として)。結婚が遅ければ婚姻期間が短いから5万円くらいが最高になる事だって十分ありえる。

しかも、夫が激しく按分に抵抗した場合には、協議が決裂し裁判所に審判を仰ぐことになる。

どういう基準で按分割合を決定するのか? 諸般の経緯から、多分半分を原則に決定されると私個人も予測はしているのですが、それは予測の範囲内でしかない。これは本当に喉から手が出るほど知りたいけれど、手元に資料がない(これは多分始まらないとわからないことだろうな)

離婚件数が減少しているそうですが、あくまでも未確定要素が多すぎて「絶対に早まったらダメ」ってこと。
先例も、前例も、審判例も何の蓄積もない状態で、離婚時年金分割に踏み切るというのはある意味冒険なのです。こういうのは事例の積み重ねを経て世の中に定着していくもの。
年金がもらえることについて、期待通りに行くかもしれないが行かないかもしれない。

ただ、やっぱり「自分の思ったとおりの年金がもらえるとは限らない」と覚悟はしておいたほうがいいです。

離婚時年金分割ー13(週末投稿)

2005-10-16 13:38:34 | 離婚時年金分割
 離婚時年金分割の説明をHP上でしている人は沢山いらっしゃいます。でもどこかからパクってきてそれをそのまま載せているようなのがとても多い。
 何か自分の参考になるかなといろいろと調べてみようと思っても、参考になるどころか、ちょっとみて「お前これ違うだろう!」って思うようなネタばかり。
 良くわからないけれど、みんな興味があるネタだから、一応載せておこうかなと受け止められるような安易な内容の物が目立ちます。

 本当に真摯に離婚時年金分割を勉強していらっしゃる方は、「全く手探りな状態なんだろうなあ」と思うのが現状です。

 さて前々前回、前々回と標準報酬の話をしました。

 おさらいすると、年金(厚生年金)の額の計算は、働いているときの給与(報酬)を基にして、それを現在価値に戻し、さらにその現在価値に戻したものに一定の率を掛けて年金額を算出する。

 で離婚時年金分割の場合も、これをたたき台にして分割割合を決める。年金分割の法律を読むと、まず平成16年改正法で、「標準報酬の改定または決定をすることができる」と書いてありますからね。
 
 「年金の額を分割するのではない=具体的に年金の額を算出しその年金額を調整するのではない」ということは繰り返しますがしっかりご理解ください。
 でもすでに、一部のHPでは「年金額の分割」とか、誤解されかねない書き方をしているところがあります。これは間違っていると思うのですが(HPの作成者にメール出して聞くわけにもいかないし、現時点では放置しかない)、うーん何回読んでも法律には「標準報酬を分割する」ということが書いてあるんだが。

 で、按分の方法ですが、前にも書いたとおり、対象期間=婚姻期間の各月の標準報酬(つまり各月の給与)と平成15年4月以降の給与 に調整率(物価や賃金の上昇反映)を掛けたものを総合計しその額(夫と妻の額を別々に出して)按分の割合を出す。話し合いの前に婚姻期間の全期間の報酬情報をさらけだせってことですね。もちろん分割してもらう側も全部見せないとダメです。

 これについては社会保険庁長官に情報提供を求めることができますし(78条の4)、裁判所からの資料請求に関しては義務を課せられています。拒否することはできません(てか拒否する前に自分の10年前の報酬を覚えている人は皆無だから、情報を貰わないと話し合いのスタートにも立てないでしょう)

 でその後具体的に、話し合い(調停)が終わったあとの年金については、
 第1号改定者(あげるほう)
 新標準報酬月額(要するに給与) =以前の自分自身の標準報酬月額×(1-改定割合)
 第2号改定者(もらうほう)
 新標準報酬月額(要するに給与) =以前の自分自身の標準報酬月額+第1号改定者の標準報酬月額×改定割合

 という風に計算され(平成15年以降の賞与も同じ方法で分割)、改定請求のあった日から効力を生じるということになります。
 なお、第2号改定者(もらうほう)がずっと専業主婦だった場合には、前からの数字を改定するのじゃなくて前がゼロ(つまり専業主婦で標準報酬はなかった)のですから「改定」という言葉を使わず、「決定」という言葉を使っています。
  
 そして、決定が終わって分割が解決したら社会保険庁長官は、その記録をしないといけないし、当事者に通知をしなければならないということになります。

離婚時年金分割ー11 (週末投稿)

2005-10-01 19:24:26 | 離婚時年金分割
第11回
 前回の続きです。昔貰った報酬は何らかの補正をしないといけないのです。その補正率のことを「再評価率」といいます。
 再評価率は生年月日やその働いた歳によりまちまちですけれど、「物価と賃金の上昇率」を考慮し当時の報酬額を現在に引きなおす率と大雑把に考えておいて良いでしょう。
 40年前の再評価率が6.87なら1965年(昭和40年)の1万円が現在価値では 6.87万円となるわけです。

 さてその按分する標準報酬ですけれど、どういう風に計算するかは法律に規定があります。
 「請求すべき按分割合は、当事者それぞれの対象期間標準報酬総額の合計額に対する第2号改定者の対象期間標準報酬額の割合を超え2分の1以下の範囲内で定めなければならない。」
 
 ちょっと難しいですね。原文だと。でも言っていることは簡単。仮に夫が第1号改定者(分割して与えるほう)の場合、夫の標準報酬+妻の標準報酬 =全体の標準報酬 と 妻の標準報酬 を比較し、妻の標準報酬を超えて、夫の標準報酬+妻の標準報酬の2分の1以内にするように定めなさい、となっている。この場合の報酬には平成15年4月以降の場合には賞与も入ります。

 さらに噛み砕けば、夫の分ー妻の分=差額 これをゼロから2分の1までの間で分割する割合を決めなさいということ。

 (例)婚姻期間内の夫の標準報酬合計が100 妻の標準報酬の合計が60ならば、財産分与に関して、夫が100(100は含まない)-80 妻が 80-60(60は含まない)の間になるように分配率を考えなさいということ。

 ここで、第2改定者(分割される方)の対象期間標準報酬額の割合を「「超え」」 という文言は、「ゼロじゃダメ」ってことを意味していると思います。自分で読んで素直に考えるとそうです。だとすると、極端な話、妻が100%離婚に対して責任がある場合、つまり夫はどこも悪くないのに「妻が若い男を作ってどこかに駆け落ちした場合」などでも、妻のほうから離婚時に分割を求められたら年金を分割せざるを得ないってことですかね? 何かしっくりきませんが。でも、後で述べる「第3号被保険者の場合は、それどころか妻に全面的に責任があるケースでも自動的に夫の年金折半ということですから、妻が新しく男を作って駆け落ちしてなおかつ年金まで半分抱えて逃げてしまうということですから(それに対して夫のほうは何らの対抗策もない)、それに比べたらまだマシなのかもしれません。

 離婚時の慰謝料などは、離婚の原因(浮気したとか子育て非協力だったとか其の他諸々)が大きく影響を及ぼしてくると思いますが、離婚時年金分割の分割割合を決める場合、そのポイントは一体何なんでしょう(これは現時点ではわかりません)。
 第3号の専業主婦の年金が自動的に半分ならば、共働きの場合の夫婦もそのお互いの稼ぎを合算して年金額を半分に自動分割するほうが制度としてすっきりしたのではないかと思うのですが。

離婚時年金分割ー10 (週末投稿)

2005-09-24 17:24:19 | 離婚時年金分割
 何だかんだ言って離婚時年金分割も10回目になりました。ちっとも本論が深まらず、脱線しまくりですけれど、怒らないでください。

 今日から少しずつ、条文に則って年金読み解いていきましょう。お手元に条文がある方は78条の2くらいの辺から(でも物好きな人や仕事で使う人以外は読まないほうがいいと思う)。

○第1号改定者、と第2号改定者

 法律では、年金を分割して差し上げるほうを「第1号改定者」、年金を分割して受け取る方を「第2号改定者」という呼び方をしています。まあここは知らなくてもOK。
 ただ、単純に夫が働く、妻は主婦な場合はいいんですけど、夫と妻が20年共働きで、最初の10年間は夫のほうが稼ぎが多かったけれど、後の10年は妻のほうが稼ぎが多かった。
 
 そういう場合にどういう風な呼び方をするのか。やっぱりトータル20年で損得を計算して、結論的に夫のほうから妻に行く年金のほうが多いと決まってしまえば(共稼ぎの場合は注意しないと、年金分割というのは夫から妻の片務的なものではないですからね、妻ー夫もありえる)、夫が第1号改定者、妻が第2号改定者という風になるんだとは思うんですけど、厳密には後の10年は「第2号改定者」から「第1号改定者」に年金が行くことになってますよね。その辺は何を持って、1号、2号というのかまだわかりません。混乱しなきゃいいけど。


○年金分割って一体何を分割するの?

で、正直な話一体何を差し上げるか?(ここはとおおおおおおっても重要)

年金そのものじゃないんです。ここはすごく間違いが多い。結局は年金分割ですから年金を分割するということになっているんですけれど、実は法律には年金の計算基礎となる、標準報酬というものを分割して差し上げるということになっている。

じゃ、標準報酬って何? ってことになりますよね。
一言で簡単に言うと、「給与」ただし、普通に貰っている給与じゃありません。

 給与は明細見れば一目瞭然ですけれど、給与って残業があったりして固定給といえども毎月少しずつ変わっていきます。それじゃ計算が面倒だろうってことで、一定の幅を持ってランク付をしている。
37万円から39.5万円までは38万円とする とされる。これが標準報酬月額といわれるもの。

 年金の履歴を調べに社会保険事務所に行くと、こういう資料をくれます。
その資料に、その当時の標準報酬月額が乗っているんですね。月・賞と書いてあるところです。
 年金相談で、時々ご年配の女性に、ああ昭和40年にお勤めに初めて出られたんですね。その時の初任給は1万8000円くらい? 本当に物価上がりましたねえ。
というような雑談ができるのは、その時期の記録が残っているからに他なりません。

 じゃあ、夫がその時給与が3万円だったら?今の初任給は大卒で20万円くらいするでしょう。不公平じゃない?
 
 普通はそういう疑問が起こりますよね。
 当然ながら今の1万円と昔の1万円は違います。
 昔の1万円も10年前の1万円と30年前の1万円は違います。
 だからそれを修正しないといけない。当たり前といえば当たり前ですけれども、その作業をして年金額を決定します。

 あら、長くなったので続きは次に


離婚時年金分割ー9 (週末投稿)

2005-09-18 10:41:03 | 離婚時年金分割
 前回は遺族厚生年金は、内縁の妻にもみとめられる場合があるけれど、離婚時年金分割は「法律上届出をした夫婦の場合に限定される」ということを書きました。 そうすると、悩ましいこともいろいろと出てくることも考えられます。

 夫と妻、夫が別なところに女性を作って、結婚10年目に完全に破綻。 
 その後に別居し、完全に夫婦としての関係は切れるも離婚の届出はせずズルズル。
 
 完全に婚姻関係は破綻しています。でも、法律上離婚していないんだから、その実質破綻している期間も、「年金分割の対象になる?」 
 
 なりそうですが、わしも正確になるとはいえない部分です。こちらが知りたいくらい。法律的には、よく年金で出てくる「生計維持とか生計同一」とか言う言い回しがなく、生計をともにしている人限定という風には書いていないからそうなるような気がします。

 もう完全に離婚と同じ状態になって、ただ形の上で「最後の離婚の届出」という後処理が終わっていないだけの状態、それでも、離婚時に妻から請求があった場合には、その冷え切った期間も含めて分割の対象期間とされるってことで良いのでしょうか? 離婚時の財産分与も同じ考えなのでしょうか?

 うーん、それは後妻さんにはつらい(前妻との籍が抜かれていないから、入籍もできない)、有責配偶者(離婚を作った責任のあるほう)からの離婚請求は最近は認められますけれど、でも100%は認められるとは限らない。
 前妻が、夫の不貞に腹を立てて、離婚なんかさせてたまるか、と頑固に離婚届にハンコを押さない意地悪を続けた場合には、ずっと年金の分割対象期間が延び続ける。後妻さんは蚊帳の外の放置状態になる。

 内縁関係がおおよそ10年続き、籍は抜かないものの前妻との婚姻関係が完全に破綻している状態だと、後妻さん(内縁)のほうが「遺族年金の受給権を得る」ことは前回触れました。まず正妻との婚姻を検討するので当たり前ですが正妻が有利ですけれど、正妻と夫との関係が完全に切れて、内縁の妻のほうが10年ほど妻としての実体がしっかりあった場合にはそちらが優先されます。

 てことは、いよいよ離婚を決めて、年金分割を幾らにするかって調停をしている間に、夫が死亡した場合には、遺族厚生年金の対象になり後妻がマルマル遺族年金を貰う。でも年金分割を決定して、夫の年金の半分を妻に渡すという決定後だと、後妻の遺族年金の基準になる標準報酬(給与の累積)は分割分は減り、遺族厚生年金が減額される。

 そんな風になっちゃいますね。

 いずれにせよ、実体関係と離婚がリンクしていれば(夫婦生活が冷め切ったら即離婚するということ)あまり問題はないのですが、実体関係と離婚がリンクしてない(冷め切ったのに離婚の届出を出さずにズルズルと放置してある)場合には離婚分割はとても厄介なことになりそうです。

 こういうのは、今後「紛争や裁判が相次いで」、判例や先例が出てからやっと落ち着くものだとは思いますが、それまではなかなか確かなことがいえませんから大変です。

離婚時年金分割-8 (週末投稿)

2005-09-11 12:21:28 | 離婚時年金分割
 そもそも、離婚時の年金分割の離婚とは何を指すのでしょうか?
 離婚について、厚生年金法には「離婚(婚姻の届けをしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にあったものについて、当該事情が解消した場合を除く)」と書いてあります。

つまり、どんなに「結婚と同様な関係もあり同じ場所に住み、同じような生活をしていたとしても、「籍を入れてなけれ何もない」
ということ。

なあんだ、当たり前だろ。と思うなかれ。
年金については、その社会保障的観点から、内縁(婚姻の届出をしていないが事実上婚姻と同じ状態にある者という意味です、一般に想像される夫が二股かけている場合は重婚的内縁関係はまた話が異なります)の扱いが他の法律とは異なっています。

 たとえば、籍を入れずにずっと同居し、10年以上経っていた。生活に必要経費は同居人(籍を入れたら夫ですね)が月々の分を入れていた。
 そういう場合であれば、夫が死亡したとき「遺族厚生年金」がもらえることになるのです。
 相続などの場合、籍を入れていない内縁の妻は完全につまはじきですけれど、年金は死亡していた人の扶養者の生活権という問題があるためこういう扱いになっていた。
 正式に籍を入れた場合は、籍を入れた3日後に夫が死亡しても遺族厚生年金はでますが、内縁の場合はその状態が10年は続かないといけない。
 そういう認定の差、厳しさはありますが、内縁の妻に年金支給が全面的に認められないことはない。

 ところが、離婚時年金分割の場合は、上のように「明文で、内縁の解消はダメ」といっているので、内縁関係の消滅は「離婚には当たりません」。多分しかるべき役所に出向いても、貴方は籍がないから申し訳ないけれどダメ。と多分いわれて返されてしまうでしょう。

 最近は「籍は入れないで、同居」というカップルも増えているようですが、例えば10年同居し10年目に正式に結婚、15年目に離婚となった場合にも、1年目から15年目まで全く夫婦としての生活が同じようなものであったとしても、年金の分割対象は最後の5年間になりますよね。

 籍を入れない結婚(内縁)に関しては、離婚時年金分割に関してははっきりとマイナス。
 そこはまず頭に入れて置かれたほうが良いと思います。で、あわてて婚姻届をだしても、もう間に合いません。


離婚時年金分割-7 (週末投稿)

2005-09-04 20:52:25 | 離婚時年金分割
 今日は脱線しちゃいます(笑)、今日は極めて我々専門家が頭を抱えるお話。
 年金のことが余りわからない人は1回休みでお願いします。読み飛ばしてもかまわないです。

 いやね、前々回国民年金と厚生年金の違いって書いたんです。まあ、国民年金と厚生年金の違いは、国民年金は自営業者、主婦が加入、厚生年金はサラリーマンが加入(国民年金と兼ねて入る扱いになりますが)、そうですよね。

 でね、昨日いろいろと同業者の方とお話してたんです。そしたらやっぱ離婚時年金分割は大変だなあ、って話になりました。
  
 厚生年金と極めて似通った制度として、「共済年金」があります。国家公務員、地方公務員それと私立学校共済の職員が加入している年金ですね。
 さらに、厚生年金と統合されたんだけど、JR、JT、NTTもあるし農林年金(農協や漁協の人が入っているやつ)もあった。
 さらにさらに、船員保険(ま、船乗りの保険)もあった。

 JR、JT、NTT、農林年金、船員保険は もう厚生年金と引っ付いちゃったんだけど、昔の名前で出ています。じゃないけれど「昔の状態=共済年金」のままで年金をもらっている人もいらっしゃる。既得権の保護のため経過措置がいろいろてんこ盛りになっているんです。

 当たり前だけど、夫が会社員の夫婦が離婚したら分割だけど、夫が公務員の夫婦が離婚したら分割しないなんてことはありえない。当然共済も分割の対象となるでしょう。国家(地方)公務員共済組合法も改正対象です。

 いや、それが年金分割を考える上では困るんです。
 夫が公務員、妻が会社員で標準報酬を分割する?
 夫が会社員、妻が公務員で標準報酬を分割する?
 夫は結婚時には会社員だったけど、途中から公務員になり離婚時は公務員だった。
 そんな場合もある。

 今はなにも実際の運用がわからないから、個人的にあまりうかつに発言はできませんが、
 こういう、「加入している年金制度を跨ぐ人」の場合は、「どういう風に分割されるかてんでさっぱりわからない」ってことになるのではないでしょうか。

 共済年金って厚生年金と似たような制度なんですけど、厚生年金にはない独自の仕組がたくさんあって専門家泣かせの制度ですしね。

 でもって、民主党と自民党の衆議院選挙の年金マニュフェスト。
 いや、頼むから民主党さん、ここは1つ大人になって、もし選挙で負けて政権を取れなかったら、「とりあえず、公務員の年金(共済)と民間企業の年金(厚生年金)の統合を先に進める」ようにお願いできませんでしょうか。
 民主党さんのメンツがつぶれるのはわかるんですけど、もう2年後から実際に法律は適用になり、今のままでは現場が大混乱する可能性もあるんです。
 今から、統合しても事務処理は間に合いませんが、少なくても「1つの場所から年金情報を手にいれられるということになるとずいぶん楽」になります。

 現状は、厚生年金の情報は社会保険庁から、共済の情報は共済組合からしか手に入らないので、分割したらいったい貴方たちの手取りは幾らになるのかという基本的なことさえ当事者には簡単には、わからないのです。

 離婚する場合に、具体的な金額もわからないまま、五分五分にするとか決めちゃっていいのかなあ。特に夫会社員で妻公務員の場合は、妻が給与が高い場合も十分考えられます(支給がいいから)。

 厚生年金と共済年金の統合は必須ですし、すぐ明日にでもしてもらわないこと困るんです。郵政法案のように、「究極は民営化だけど、自民党の民営化法案は反対」みたいなわけのわからない理屈は止めて大人になってください。一旦、共済と厚生年金を統合させて、その後厚生年金と共済年金を一本化しちゃえばいいじゃないですか。よろしくお願いします。

今回はちょっと脱線でした。また次回から本論に戻ります(実施が2年後ですから、のんびり行きましょう)。

離婚時年金分割 - サンケイWebの間違い

2005-08-29 10:05:19 | 離婚時年金分割
http://www.sankei.co.jp/news/morning/29iti003.htm

 普段は著作権の関係が完全に問題解決していない上(※)、なるべくリンクを貼る事はしませんが、これは明らかに間違いなんです。間違いは放置できない。すぐに訂正してもらわないと困る。「訂正してもらえたらこのブログも消去または内容を書き換えます」

間違い1
 「サラリーマンは六十五歳以降、老齢厚生年金が受けられる」が、

  ウソっ。確かに法律的にはそうだけど実質的には、「老齢厚生年金」が完全に65歳支給になるのは、男性昭和36年、女性は昭和41年生まれの方からで、まだまだ完全実施は先のこと。
 妻自身の年金は自らの基礎年金(国民年金)など、わずかな年金に限られる。

 などって何だ? などって。
 女性もフルタイムで男性に負けない働きをしていたら、厚生年金に入っているから同じだけ貰える。専業主婦の方は「など」なんてのはなくて老齢基礎年金(国民年金)のみ。 あまりに、「記事があいまい」

間違い2
 専業主婦なら婚姻期間に夫が支払った保険料の最大二分の一が分割され、ともに厚生年金に加入していた夫婦なら、婚姻期間に双方が支払った保険料を合算して分割する。

 はぁ?(エンタの神様にでてくる魔邪をつれてきたい)

 保険料、、、全く関係ないんですけど。
 分割されるのは、「標準報酬」
 標準報酬は、その加入当時の給与に物価や賃金の上昇による調整率等を掛けたもの。

 もー、むちゃくちゃな新聞記事。

 てことはこれから何がわかる、
 離婚時年金分割も、「全く訳わからないで、法律実施を待っている離婚予備軍がたくさんいるんだろうなあ。」ということ。
 
 いや、ホント実施が思いやられる。

 それはそうと、産経新聞さん すぐ訂正!

 (※) Webの専門家によると、リンクを貼ることにより、興味ある新聞記事の原本にあたることができる。逆にリンクを張られるのはWeb上で当たり前で、それで著作権云々ということは絶対出てこないといわれます。でも新聞社によると、新聞社のHPのトップにリンクを貼るのは、無問題だが、個別の記事にリンクを貼るのは、「著作権法」違反だという風に主張しています。
 なので、普段は直接リンクを張らない。でも「明らかに間違いな記事の場合は、悪影響を考慮して直接リンクを貼るのがわしの今の立場です。

 (だれかこの論争の結論を教えてください。いつも悩んでいます)