数年前、余命幾ばくない父を田舎で療養させていた時、家の周りには都会では考えられないくらいの桜があって、満開になって桜吹雪舞う中、父の手を取ってよく散歩しました。
途中、路肩に設置されたベンチで休憩する父の吸うタバコの煙が本当に「紫の煙」だな、と感じたのはこの時。
それからすぐ入院の為都会に舞い戻った父は、病室の窓から見える貧弱な桜が散り、葉桜になっていくのと共に次第に寝つくようになり、やがてこの世を去りました。
その年、家の近くの街路樹の袂に植えられたオトギリソウの黄色い花が一斉に開花したのに気付いた数日後のことでした。毎年パラパラとしか咲かず、キレイな花なのに、残念だなぁ、などと思っていたのに。
朝、病室を尋ねたにゃんこが、
「今日さぁ、家の近所のオトギリソウが珍しく全部満開になってん~、毎年ちょっとずつしか咲けへんのに、今年はどしたんやろねぇ、桜やあるまいし、なぁ?」
その時父が声にならない声で微かに笑った気がしました。
不思議なことに、その年のにゃんこには桜とオトギリソウの間に咲いていたはずのツツジの記憶は一切ないのです。
桜より、オトギリソウより、町のあちこちに咲き誇っていたはずのツツジ。
あの時、にゃんこの魂は一体どこに行ってたのでしょう、今もナゾです。
途中、路肩に設置されたベンチで休憩する父の吸うタバコの煙が本当に「紫の煙」だな、と感じたのはこの時。
それからすぐ入院の為都会に舞い戻った父は、病室の窓から見える貧弱な桜が散り、葉桜になっていくのと共に次第に寝つくようになり、やがてこの世を去りました。
その年、家の近くの街路樹の袂に植えられたオトギリソウの黄色い花が一斉に開花したのに気付いた数日後のことでした。毎年パラパラとしか咲かず、キレイな花なのに、残念だなぁ、などと思っていたのに。
朝、病室を尋ねたにゃんこが、
「今日さぁ、家の近所のオトギリソウが珍しく全部満開になってん~、毎年ちょっとずつしか咲けへんのに、今年はどしたんやろねぇ、桜やあるまいし、なぁ?」
その時父が声にならない声で微かに笑った気がしました。
不思議なことに、その年のにゃんこには桜とオトギリソウの間に咲いていたはずのツツジの記憶は一切ないのです。
桜より、オトギリソウより、町のあちこちに咲き誇っていたはずのツツジ。
あの時、にゃんこの魂は一体どこに行ってたのでしょう、今もナゾです。