若生のり子=誰でもポエットでアーティスト

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「チェ・28歳の革命」を観て

2009-01-27 | 映画
ソダーバーグ監督、ベニチオ・デル・トロ主演件プロジューサー

先ず一番感じたことは、革命家チェ・ゲバラの“人となり”というか人間味溢れる魅力でした。

[真の革命家は偉大なる愛によって導かれる。
人間への愛。正義への愛。真実への愛。]

というだけあって、過酷を極めるゲリラ戦のさ中でも隊員達に対する厳しいながらもきめ細かな配慮や人間味ある実際の対応などに合点が行きました。

例えば、隊員のある一人が、他の隊員が自分の悪口を言っていて不愉快であるという訴えに、その場で直接相手の隊員を呼び、真意のところはどうなのかと問いただして誤解を解いていくところや、山中の道無き道の行軍では、足手まといになって危険を呼び寄せる結果になる重傷者でも、見捨てることなくみんなで担いで手厚い看護をするところや、最も危険な最前線で率先して指揮をとる姿や、農民への略奪を戒め、裏切り者で農家に押し入り娘を犯し、家を焼き払い皆殺しにした元隊員達に対して、問答無用の死刑を執行するところや、勝利に酔いしれて驕ることなく淡々と次なる情況を切り開いてゆくリーダーとしての規律ある沈着冷静な振る舞い、等等。
机上のイデオロギーでは無く、生身の人間の血の通った大地を這う革命家の魅力いっぱいでした。

商業的にナンデモ大仰なスペクタクルにして繊細さを欠くハリウッド映画なのに、けたたましい爆音轟く血みどろのどぎつい戦闘シーンや、レイプシーンも無く、7年間もかけた膨大なリサーチやインタビューに基づいて淡々と描かれるそれぞれのシーンは、ドラマティックな盛り上がりに欠けるがそれが反って真実味を帯、ゲバラに対するソダーバーグ監督の真摯な態度と史実に忠実に描こうとした誠実さとが感じられ好感のもてるものでした。
それ故ややもすれば退屈と紙一重のところを救っていたのは、1964年の国連演説とインタビューを白黒の映像のプロットとして入れ込み、まるで当時のニュース映像と見まがうように描写していたことでした。当時の緊張感みなぎるチェの鋭いアメリカ帝国の中南米干渉を糾弾する、国連での演説は圧巻でした。