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 マーク・R・マリンズのこの本は、無教会など日本の代表的なキリスト教土着運動を扱った本であるが、日本におけるキリスト教や宗教の移植と土着などについても広く大変明快に分析していて、非常に興味深い書物である。

 前半は土着化が必然の方向であることを説く論調である。どこの文化においても現地の人々は移植された宗教伝統を再解釈しようと取り組んでおり、外来のものをわがものにしようと試みる。それは一種流用の過程ということができ、宗教は必ずその土地固有の形を
取って現れるものである。

 日本のキリスト教土着運動を興した人々は、移植された教会には使徒キリスト教に対して2千年にわたるヨーロッパ化の影響が浸透しており、変貌してしまっていると見て脱西洋化をはかろうとした。これは私にとって斬新な視点であり頷ける点である。

 著者は「正統か異端か」を問う神学的議論ではなく、社会学的観点から研究者として記述している。日本のキリスト者は従来の日本文化の中にキリスト教につながるものを感じ、神がいかに働いていたか、を考えていた。すなわちそれは「キリスト教以前の過去のキリスト教化」と呼べるものであるという。これは非常に広範な視点から見る古屋安雄やラーナーの立場に共通するものである。

 土着化は無教会を起点に類似の教会が20世紀初頭以降次々と興っていて、創始者の代が充実していた頃には小規模であってもそれぞれ急速な発展を遂げた歴史を残している。私が注目したひとつは、多くの土着運動が死者の救いを重大な問題と受けとめて、「イエスの御霊教団」が死者のバプテスマを執行している点である。

 後半に入って土着化の真剣な取り組みと一時見られた伸張にもかかわらず、土着化が万能薬ではなかったという論調に転じる。その前に日本のキリスト教そのものがいまだに人口の1%を占めるに過ぎず、不振を極めていることに触れ、「何がキリスト教移植を阻むのか」(8章)と問う。関連して終戦直後の日本基督教団の様子を取り上げている。近年(例えば1990年)受洗者が3千名にも及ばなかったのに対し、1947-1951にかけて毎年1万を上回って洗礼を記録していた。しかし、信者の維持は極めて困難で、「その様子はあたかも誰かが玄関から入ってくるあいだに大勢が勝手口から出ていっているかのようだった」、というロバート・リーの研究を引いている。そして今日無教会を含め多くの土着運動が会員数の激減に直面し危機に瀕していることを報告している。

 日本におけるキリスト教不振の原因として、西洋との文化的断絶が大きく、「逸脱した宗教」という見方が依然根強いこと、日本のキリスト教会の大半が主知主義を特徴とする聖職者中心の制度になりがちで、今日の求道者が経験志向であるのに参加の機会がないという点をあげる。「西洋化して成長しないひ弱な」存在という見方を紹介している。

 この書物は日本人の立場に立って記されていて抵抗を感じないで読むことができる。数々の示唆に富む分析は日本のキリスト教の指導者、一般会員にとって必読の書であると言える。

マーク・R・マリンズ著、高崎恵訳「メイド・イン・ジャパンのキリスト教」トランスビュー 2005年
原著 Mark R. Mullins, Christianity Made in Japan: A Study of Indigenous Movements, Honolulu: University of Hawaii Press, 1998


コメント ( 10 ) | Trackback ( 0 )



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コメント
 
 
 
古屋安雄のコメント (NJ (古屋氏言))
2008-02-25 00:39:33
日本の教会の苦戦に関連してこんな数字がありました。

「古屋氏によれば、ある教会の調査では、洗礼を受けてから教会に行かなくなるまでの「平均信仰寿命」は2・8年だったという。」(読売新聞)

http://osaka.yomiuri.co.jp/kokorop/kp60125a.htm
 
 
 
興味深いです (路人)
2008-02-25 11:35:11
友人の日本基督教団に所属する人は年に1度、クリスマスの時期にだけ時間を都合して教会に行くそうです。
その従姉の御主人はバプテスト教会の日曜学校の校長先生で以前、3人でそれぞれの教会の話をして大いに盛り上がったことがあります。

彼らをして一般的に捉えるのは危険だと思いますが、活発不活発、またキリスト教であればどこの教会に所属しても普通の人であれば、とりたてて違和感を持たない様子でした。

日本基督教団では幼稚園や高校など学校にいるうちに改宗される方も多いようですが、卒業と共に離れていくケースが多いとのことでした。
バプテスト教会のかたは伝道のことについてはあまり話しませんでした。

教会に集う人の高齢化はどこの教会でも変わりはないようです。
献金が減ってきて大変なようで、モルモン教会のの10分の1について、キリスト教は本来そうあるべきだと言っていたのが印象的でした。

3人とも奥さんのほうが熱心に活動されていることはモルモン教会と変わらないと、笑ったことでした。
 
 
 
日本基督教団のお話、感謝 (NJ (日基教団の話))
2008-02-25 11:45:43
路人さんの親戚にはクリスチャンが幾人かいらっしゃるのですね。

興味のある情報を書いていただいてありがとうございます。あまり違和感を持たないで互いに意見や情報を交換できれば楽しいと思います。(聖職者は立場上、親しくなれない場合もあるかもしれませんが。)
 
 
 
紛らわしくてすみません (路人)
2008-02-25 21:56:36
前記のクリスチャンは結構長い付き合いの友人です。
 
 
 
この頃どうかしています (NJ(私のとちり))
2008-02-25 23:24:44
私が路人さんの1行目を読みながら途中で思い違いしていました。失礼しました。
 
 
 
統計にはうるさい・・ (中豚)
2008-02-27 18:28:41
>近年(例えば1990年)受洗者が3千名にも及ばなかったのに対し、1947-1951にかけて毎年1万を上回って洗礼を記を録していた。

1947-1951と言えば、終戦後の混乱期じゃないですか?
この時期と比べるのはちょっとどうかと思います。

で、下記サイトに抜粋となっているのですが、本文はかなり長いのですか?

http://transview.co.jp/books/4901510304/text.htm#00
 
 
 
本文はかなり長い (NJ(350頁))
2008-02-28 22:18:59
>>近年(例えば1990年)受洗者が3千名にも及ばなかもったのに対し、1947-1951にかけて毎年1万を上回って洗礼を記を録していた。
>1947-1951と言えば、終戦後の混乱期じゃないですか?
この時期と比べるのはちょっとどうかと思います。

確かに戦後すぐの時代と90年代を比べるのは隔たりが大きすぎる(社会の状況が違いすぎる)ように思われますが、戦後まもなくはキリスト教に追い風が吹いていた時代で、大勢キリスト教に改宗したようです。逆に現代は大変停滞しています。その違い(典型的な異なる時代)を取り上げたものなのでしょう。古屋安雄も「日本伝道論」で1945-1965年をキリスト教にとって良いときと見ていて、よいとき/ 悪いときの周期がある、と述べています。

マリンズの「メイドインジャパンのキリスト教」は350頁の厚い本で本文はかなり長いです。座右の書のひとつにしたいと思っています。
 
 
 
BYU-Hの学者が発表 (NJ(台湾の土着運動))
2008-05-18 21:38:05
[memo]台湾におけるキリスト教の土着化運動に対してLDS教会がどのような立場を取っているか、BYU-Hの学者が'07年度モルモン歴史学会で発表している。

"In Taiwan, but Not of Taiwan: The LDS Church's Position in the Wake of the Indigenous Movement" Chiung Hwang Chen, Brigham Young University-Hawaii

(Mormon History Association Salt Lake City Conference May 24-27, 2007)
 
 
 
 
久々に訪問しました♪初投稿です♪ (薔薇の名前)
2008-05-20 14:43:21
親しい友人が2年間スペインに留学経験があり、現地の主流「カトリック」でも若い人の教会離れは深刻だと言っていたのを思い出しました。どこも定着率では苦戦しているようですね。
 
 
 
ありがとうございます (NJ(訪問に感謝))
2008-05-20 21:33:04
別のサイトで書き込みを読ませていただいています。初投稿 ありがとうございます。先進国において教会離れが著しいようです。
 
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