モルモニズムの情報源、主要な主題を扱うサイト。目次を最新月1日に置きます。カテゴリー、本ブログ左下の検索も利用ください。
NJWindow(J)



[メモ] 末日聖徒のキリスト論

末日聖徒(モルモン)の積極的な生き方や明るさはどこからくるの
か?一つにはキリストをどう受けとめているのかということ(キリ
スト論)、その受けとめ方にあるのではないかと思われる。

以前ある器量がよく明るい女性会員が、まだ会員であることを知ら
ない上司から君はモルモン教徒のように明るいね、といわれたと言
っていた。また、ジャーナリストのロバート・マレンはモルモン教
の教えを明るすぎる教義と書いていたのが思い出される。

その要因の一つはモルモンのキリスト論に源があるのではないか、
と最近気づいた。それはロバート・M・プライスの論文を読んでい
て、第三ニーファイに記されているのは「十字架に言及されない勝
利のキリスト教」という指摘に接した時のことであった。十字架
(cross)を背負うのではなく栄冠(crown)をもってアメリカ大陸に現
われた異なったキリスト論が提示されているという。

ただ、新約聖書においても初めはイエスの贖罪のための刑死を単純
に弟子に衝撃を与えたものと書いた(Iコリント1:18-25 奇跡や劇
的な記述はない)のが、イエスの再来が遅れるにつれイエスの生涯
に奇跡や神性を加味して福音書が記されるに至っている。ヨハネで
は一言で兵士を恐れさせる場面が描かれる(ヨハネ18:6)。キリスト
論も変遷しているのである。モルモン書はその延長線上にあるとプ
ライスは見る。

神の勝利と受けとめるキリスト論は新約時代に始まるのであるが、
アメリカでは宗派を問わず楽観的な「やればできる」(can-do)とい
う積極的なキリスト教が普及していた。しかし末日聖徒ほど専ら勝
利の一面でとらえるキリスト論を明確に打ち出した人々はなかった、
とプライスは指摘する。

贖罪の意義やその及ぶ範囲、救いの計画(現世の目的を含む)など
を含めて考えなければならないが、末日聖徒の勝利のキリスト論
(triumphalist Christology)が明るい末日聖徒を生み出しているも
のと思われる。

参考資料
Robert Mullen, “Mormons”
Robert M. Price, “Joseph Smith: Inspired Author of the Book
 of Mormon,” 2002, pp. 350, 351, 354 in Dan Vogel & Lee
 Metcalf ed., “American Apocrypha” 2002
本ブログ 2007/12/4 末日聖徒(モルモン)の価値観


コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )



« 聖書における... 講演「パレス... »
 
コメント
 
 
 
暗い国の明るい宗教 ()
2008-07-29 09:03:58
海の向こうのモルモンは明るいのかもしれませんが、日本のモルモンは明るくないですね。

同じ事を聞いても、捕らえ方が違う。

例えば
「戒めを守れば、昇栄出来る。」
と言うのと
「戒めを守らなければ、昇栄出来ない。」

物事を真面目に考え、忠実に実行しようとする国民は、戒めや教義を忠実に守る事によって、昇栄出来ると考える。いや、忠実に守らないと昇栄出来ないと考えてしまう。
そして、安息日、知恵の言葉、什分の一、神殿儀式・・等、多くの昇栄への必須項目をこなそうとする。それは、明るい楽しみではなく、苦行である。
元々苦行が好きな国民ではあるが・・。

さて、問題なのは、その「行いによる昇栄」と言う教義が、本来のイエスの教えである「イエスの十字架での死による万人の救済」と言うことから、信仰者を遠ざけてしまっている事ではないか?

誰もが、信仰によって救済されると言う福音が、「行いに寄らないと救われない」と言う強迫観念に摩り替わってしまっている。

この事を、NJ氏はどう考えますか?
NJ氏のモルモンとしての人生は明るかったのですか?(笑)
 
 
 
暗い国では暗い宗教に!? (NJ)
2008-07-30 07:27:54
いつものごとく深い洞察です。

>「行いによる昇栄」と言う教義が、本来のイエスの教えである「イエスの十字架での死による万人の救済」と言うことから、信仰者を遠ざけてしまっている

ldsのキリスト論に一つの重要な批判が込められていると思います。特に日本人の場合。

「NJ氏のモルモンとしての人生は明るかった?」総合的にはそうなるのでは?と考えたいです。

8月初旬から海の向こうにモルモンの世界を訪問しに行ってきます。(ネットへの接続、書き込みが激減、あるいは皆無になります。)
 
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。