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人は何者なのか?

「私は誰で、何者なのか。私の答えはこうである。私は自分の前に
存在した全てのものの総和である。私がしたことの全て、私になさ
れたこと全ての総和である。私は、この世にいて私の影響を受けた
全てのものと無縁ではなく、そこに私の一部がしみ込んでいる。私
が居なくなってから生じるどんなことにも私の影が及んでいる。私
が居なかったら起こらなかったことがあるのだ。このことについて
は、私が例外的であるわけではない。6億人強の一人一人個人は同
様に大勢の片鱗から成り立っている。繰り返すが、私を理解するに
は世界全体を相手にしなければならないのだ。」(沼野治郎私訳)

“Who what am I? My answer: I am the sum total of everything
that went before me, of all I have been seen done, of everything
done-to-me. I am everyone everything whose being-in-the-world
affected was affected by mine. I am anything that happens after
I’ve gone which would not have happened if I had not come. Nor
am I particularly exceptional in this matter; each “I,” every
one of the now-six-hundred-million-plus of us, contains a similar multitude. I repeat for the last time: to understand me, you’ll
have to swallow a world.” (“Midnight’s Children,” ’80)

ラシュディは自身の信仰について次のように言っている。

「私は正式には信仰を持っていない。しかしそれは脱落したカトリ
ックのようなもので、信仰がなくなるということはないのだ。人は
その知的伝統を受け継いでいるのであり、それが自分の重要な一部
をなしているのだ。そうした意味で私はムスリムだけれども、実際
的な意味ではそうではない。」(栗原行雄訳)

[追記1]パレスチナのアル・クドス大学教授サリ・アンワル・ヌ
セイバも、「人と人とは連続していて、他人と思う人も実は自分
の延長線上にある。同様に他宗も自分の宗教のもう一つの形態と
見ることができる」と「連続性」の視点で世界を見るように提案
している。('06/5/6 NHK第二放送「土曜フォーラム」)'09/1/5

[追記2]オバマ米国次期大統領「私の親類はすべての人種と肌の
色を網羅し、三大陸に散らばっている。」オバマ氏は著書や演説
で自らの混血性を強調してきた。黒人でも白人でもあり、ハワイ
という多人種の島で生まれ、イスラム教徒の多いインドネシアで
少年時代を過ごした。('08/12/7「脱ぎ捨てた怒る宿命」真鍋弘
樹 朝日新聞 p.4) '09/1/5


コメント ( 8 ) | Trackback ( 0 )



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コメント
 
 
 
難解 (wasatch_15)
2008-04-11 13:06:35
>しかしそれは脱落したカトリックのようなもので、

カトリックの意味
脱落の意味

まだ私には言葉の意味自体が理解できなくて
でも気になる言葉です。

>私の答えはこうである。私は自分の前に存在した全てのものの総和である。

こっちは解りやすいです。
実感としても共感できます。

少し話がズレますが
死海文書の入門書を読んでいて聖書偽典が多く引用されています。偽典は自分たちの信仰(ユダヤ教、キリスト教、そしてモルモン)を理解する手がかりになるような気がしてきました。

BYUが偽典の翻訳を進めていることは素晴らしいと思いました。
 
 
 
数が・・・ (大豚)
2008-04-11 17:37:01
>6億人強の一人一人

60億じゃなかった??世界の人口・・・。

この人の思考は、仏教の「縁起」「因縁」と言った考えに近いように思いますね。

「阿頼耶識」にも通ずるのではないでしょうか?
 
 
 
厳密には (NJ (コメントにコメント))
2008-04-11 23:39:34
カトリック、脱落の意味:
 カトリックはカトリック教徒
 脱落は信仰を持たない、私たちが言う不活発な、という意味ではないかと思います。厳密には訳書や原書に当たらなければなりませんが。

> 偽典は自分たちの信仰(ユダヤ教、キリスト教、そしてモルモン)を理解する手がかりになるような気がしてきました。

とてもよい視点であると思います。トルーマン・G・マドセンが最初にBofMを偽典視する学者に注目し、本人もそれを歓迎し、偽典は敬意をもって宗教書と認められるものと書いています。
(MF誌19号「モルモン書に対する聖書学者の視点」)。

60億ではなかったか:
 ノートを確かめましたが、英語でも6億と読める数字になっていました。なんかの間違いかもしれません。

> 仏教の縁起、因縁といった考えに近い・・

そうですね。そう思います。「阿頼耶識」勉強してみます。
 
 
 
6億とは.. (トマ2)
2008-04-21 16:09:34
 6億とは、当時のローマ・カトリック教徒の人数かもね?
 現在では、世界人口:66億人(ローマ・カトリック教徒の人数:11億)を超えていると思います。しかしながらエキュメニズムを推進している状況から彼らの然るべき立場の方々は、区分けをした表現を薄らせてきそうな感じがします。 
 
 
 
ラシュディはイスラム教徒 (NJ(やはり1桁違う?))
2008-04-22 06:10:13
コメント ありがとうございます。しかし、ラシュディはイスラム教徒ですから、カトリック教徒の人口を持ち出すことはないと思います。文脈からも考えられないことです。

きっと1桁違っているのでしょう。

ところで、トマ2さん、トマスと言えばインドのチェンナイに行ったときそこにサントマ(セイント・トマス)と呼ばれる教会があり、トマスがインドに伝道に来ていた、という話を聞いたことを思い出します。パンフを読んだ程度でしたが、奇跡を含めた伝承を現地の人々は信じていることが窺えました。
 
 
 
60億 (トマ2)
2008-04-22 19:17:03
>(“Midnight’s Children,” ’80)
1980年以前と解釈したのですが?

【参考】
AD1960年:人類の人口30億人。
AD1974年:人類の人口40億人。
AD1987年:人類の人口50億人。
AD1999年:人類の人口60億人。

よって、世界人口60億強に達したのは、
どんなに鯖読んでも1990年代に入っ
てからですが....。
 
 
 
それでも謎が・・ (NJ(なるほど))
2008-04-22 22:27:01
なるほど、気がつかなかった点でした。しかし、それでも謎が残るような気がします。(本当は原典に当たる必要を覚えます。)ありがとうございました。

それとも当時のイスラム教徒の人口?(機会があれば調べてみます。)
 
 
 
アル・クドス大教授とオバマ氏 (NJ(「人は人類の総和」に追記))
2009-01-05 01:29:04
ラシュディの言葉にアル・クドス大学(エルサレム)教授サリ・アンワル・ヌセイバとオバマ次期大統領の言葉を追記しました。この記事('08/4/10)本文を参照してください。
 
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