モルモニズムの情報源、主要な主題を扱うサイト。目次を最新月1日に置きます。カテゴリー、本ブログ左下の検索も利用ください。
NJWindow(J)



明治天皇の心に残る歌 矢野信保

 最近、明治天皇の御製を読む機会があった。そしてその英訳
があることも知った。その事をご教示下さった直方高校の小野
吉宣先生によれば、初めて英訳したのは斉藤秀三郎という方で
あるという。(”A Voice out of the Serene” 「雲の上の声」
大正元年)。

 心に残った多くの歌の中から、今回は三首をご紹介したいと
思う。小野先生よりご教示を得た英訳も付したいと思う。

  目に見えぬ かみの心に 通ふこそ
   ひとの心の まことなりけれ
  With heavenly powers invisible
In silence it communes;
The heart of man sincere and true
Precious beyond all boons!

 明治40年に詠まれた。「私心を去り、神の心に自分を近づ
け、波長を合わせることが出来た状態こそが、人の心のまこと
(まごころ)というものだろうなあ」というのが、私なりの理解
であるが、斉藤氏はどうとらえ意訳されたのだろうか。私には、
恥ずかしながら英語の心得がないので分からない。英語の分か
られる方のご教示をいただきたい。

  わかこころ およばぬ国の はてまでも
   よるひる神は まもりますらむ

 明治42年の作である。「天皇は、ご病気の時を除き早朝毎
日皇居の神殿において祭祀をなさり、国の安泰と人々の幸せを
お祈りになるという。その陛下が、神の慈愛の広大さ、深さを
感じてへりくだり、自分はまだまだ、と自戒していらっしゃる
のだ。これが私の感想である。」
 斉藤氏は、以下のように英訳されている。

  The utmost confines of my realm
That escape my vigilance
The gods watch over night and day
To guard against mischance

 内外でよく知られた明治天皇の歌に「よもの海」がある。作
られたのは、明治37年だから丁度、日露戦争開戦の年である。

  よもの海 みなはらからと 思ふ世に
   など波風の たちさわぐらむ

 「世界中の人は皆兄弟だと思っているのに、どうしてこんな
に波風が立つのだろう」日本が明治維新を成し遂げて国際舞台
に出た時は、既にアジアのほとんどは、欧米列強の植民地と化
していた。お隣りの中国も既に半植民地状態であった。食うか
食われるかの中で日本だけが、何もせずに安全であれるはずも
なかった。特に世界一の陸軍国であったロシアは、満州を占領
し要塞を築き、さらに北朝鮮に進出、南朝鮮を狙うという有様
であった。朝鮮半島が、日本に敵対する勢力の手に落ちれば、
日本の安全ひいては独立は危うくなる、というのが当時の認識
であった。
 日本は外交交渉を図ったが、要求は無視され、その間にも進
出は続けられる。戦いもやむなしと日本政府が決断し、天皇の
裁可をねがった時、天皇は「さらに交渉の努力をせよ」と言っ
てすぐには裁可されなかった。ぎりぎりまで、平和を望まれた
が、その甲斐なく戦争に至るのである。「など波風の たちさ
わぐらむ」に、その深い思いが感じられる。斉藤氏がこの歌を
どう英訳されたのか、残念ながら知る機会を得ていない。だが、
幸いなことにこの歌を読み、感銘を受けた西南学院の創立者C.
K.ドージャー師が英訳されたものが手元にあるので紹介してお
こう。

  We are brethren all!
If this be truth why do we
A quarreling fall
So easily Must we be
As wind torn waves on four seas?

 明治天皇は明治45年7月、61歳で崩御された。そのご生
涯で詠まれた和歌は93,000首におよぶという。そのうち、刊行
されている歌8,900余首。


コメント ( 3 ) | Trackback ( 0 )



« モルモン教関... 今は誰がゴリ... »
 
コメント
 
 
 
こんにちは (夢陰)
2006-07-09 20:58:18
オムナイさんのHPでは、ありがとうございました。



明治天皇の歌、素晴らしいですね。



>明治天皇は明治45年7月、61歳で崩御された。



ということは、16歳の時に即位された訳で、明治の前は江戸時代で…さすが、劇乱の世の中を渡ってきた方だけありますね。

 
 
 
少ししか知らない私 (NJWindow)
2006-07-10 07:37:32
コメントありがとうございます。オムナイさんの掲示板は大きな役割を果たしていると思います。



「明治維新直後の天皇」であることを意識していなかった私です。というのはキリスト教徒にとって、教育勅語と内村鑑三の不敬事件の時代いう国粋主義的日本の印象で明治天皇を見勝ちであったからです。(例1887-1907を国粋主義の時代とみる 古屋安雄'95)
 
 
 
明治天皇の大御心 (苺冬梅)
2006-07-17 12:51:02
英訳の付いた御歌を、拝見致しました。詠まれた当時の明治天皇の御心境は図りかねますが、日露開戦の御英断は、日本が被占領国家となる昭和の時代を、或いは予想されて居られたのでしょうか?米国の占領下に幼児期を生きた小生としては、崩御なされた明治天皇の生涯の年齢を超えて、生かされえている現在に、特にその平和な国家の在り様に、深甚の感謝を申し述べます。
 
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。