暫く前から、朝日新聞の中国駐在経済関連の記者として、彼女が書いた記事を注目して読んでいた。経済は私の分野外であるが、中国社会を読み解く上で欠かせないと思って読むように努めていた。吉岡さんの記事は解り易く、視点に共鳴するものを覚えていた。気が付くとこんにち彼女は日本に帰って、中堅のジャーナリストとして活躍している。最近、中国社会科学院の于建嵘(ユィジエンロン)教授にインタビューして記事にしていた(6/12)。この于氏は、私が中国の家庭教会について調べていて目にしたことのある人物であったので、興味をもって読んだ。一部を以下に引用したい。
中国の現状について:
「中国社会の衝突は1989年の(天安門)事件を境に、知識層が主導する権力闘争から、労働者や農民を中心とする権利の擁護、経済的な利益を求める闘争に変わりました。知識層の多くは政治から離れ、経済成長の波にのって商売でもうけたり、体制内に入っていったりした。こうして現体制内で共通の利益を得られるエリート同盟ができあがった。そこから排除され、一番遠くにいるのが労働者と農民です。互いに移動することがない、二元化した社会になってしまった。」彼自身苦労の後に知識層の一員として活躍するに至っているが、視点は体制から遠くにいる人々を常に意識したものである。
今の中国が安定して見えても:
「もろさを抱えた硬直的な安定です。安定が国家の最高目標になり、デモやストライキ、陳情、小さな集会も不安定要因にされてしまう。立派なビルが並び、広い道路が延び、繁栄を満喫しているように見えても、頻発する事件が当局者の自信を動揺させているのでしょう。」
家庭教会を調査した彼の観察:
「家庭教会(非公認の教会)を調査したことがあります。そこでわかったのは、宗教は圧力をかければかけるほど発展する。開放したほうが問題は深刻にならない。ここ数カ月、取り締まりが一段と激しくなっています。しかし、市民運動も労働運動も含めて、圧力がすぎると秘密結社として地下に潜ってしまう。統治にはより危険な存在になります。」
彼は経験から感慨を込めて言う。
「どんなふうに住民に向き合うべきか、私のところに話を聞きにくる役人も少なくありません。中国にも、理想を捨てない人々はいるのです。」
なお、吉岡桂子さんのtwitterを読んでいて、「そんなに自信がないのかなあ、習さん。中国の民主活動家に実刑判決を下すのを見て」と書いていた(6/19)。Twitter は記事にする前の生の声(本音)が聞こえて楽しい。(私の場合、Twitter は自分のためのメモか情報を蓄える引出しかファイルとして使っている。)
参考
吉岡桂子「愛国経済: 中国の全球化」朝日新聞出版 2008年
吉岡桂子「問答有用: 中国改革派19人に聞く」岩波書店 2013年
于建嵘、横澤泰夫訳、劉燕子解説「安源炭鉱実録」集広舎、2014年
本ブログ 2014/05/02 中国温州市の教会堂、県当局によって取り壊される
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