惑星ダルの日常(goo版)

(森下一仁の近況です。タイトルをはじめ、ほとんどの写真は交差法で立体視できます)

横田順彌さん(その3)

2019-01-18 21:16:30 | ひと

 横田さんとの個人的なお付き合いについての思い出も多いのですが、今日はもう少し、その仕事について。

 横田さんが日本の古典SFに興味を抱くきっかけとなったのは、押川春浪の『海底軍艦』でした。
 作品だけてなく、作者である春浪その人についても興味は尽きることなく、ずっと春浪およびその周辺の人についての研究を続けました。その結果、春浪が育ち、活躍した時代――特に明治の人と文化について、独自の造詣を深めていったのです。

 横田さんが見出した明治人たちは、純粋で、情熱家で、ロマンチストで、馬鹿馬鹿しいことにも懸命になっていました。つまりは、横田さんのような人たちだったといえるでしょう。これは、つまり、横田さんが自分自身を明治人に投影していたということなのでしょうか。

 ともかく、そうした研究結果や、そこから生まれた創作は、今、もっとも広く受け入れられようとしているように見えます。
 宮藤官九郎が脚本を書いたNHKの大河ドラマ『いだてん』を、横田さんが目にすることなく逝かれてしまったことが残念でなりません。


横田順彌さん(その2)

2019-01-17 21:15:35 | ひと

 亡くなられた横田さんの仕事についての感想。昨日の続きです。

 笑いに意味を与えようとせず、自分の感覚に忠実だった横田さんですが、古典SFの研究についても、似たようなことがいえます。
 どういうことかというと、従来の通説や、権威の意見に惑わされることなく、自分が感じて面白いと信じるものを評価し、世の中に伝えようとしたのです。

 そのためには、まず、古い作品を読み漁り、「古典SF」を発掘してゆくこと。自分の嗅覚だけを頼りに古書の海に潜り込んでゆきました。

 その成果が『日本SFこてん古典〈Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ〉』。

 珍妙な学習参考書『炭素太功記』や山田孤帆という人の『吾輩は猫被りである』などというあきれた小説を教えてくれただけでも凄いのですが、そうした作品を楽しむ姿勢が、何よりも見事でした。たぶん、何人もの人の、世の中への対処の仕方を変えてしまうほどのインパクトがあったと思います。

 横田さんの「古典SF」への興味は生涯、薄れることなく、その後も研究を続け、『近代日本奇想小説史』を結実させます。権威とは無縁の横田さんでしたが、これだけの成果を世間も無視することはできず、日本SF大賞特別賞・大衆文学研究賞・日本推理作家協会賞が授与されたのでした。

 他人の意見に惑わされず、自分で面白さを見つけてゆくこと。それを教えてくれた横田さんは素晴らしい「教師」でした。ただし、この教師はちっともエバラなかったんですよねぇ。


横田順彌さん(その1)

2019-01-16 21:29:07 | ひと

 昨夜は横田さんの訃報に接し、呆然自失状態。何もできずに時間が経ってしまいました。

 一夜明けて、少しは気持ちの整理がついたものの、気がつけば横田さんのことを考えていたり。
 なかなかショックから立ち直れそうにありません。命あるものならばいずれ亡くなるものと分かってはいても、こんなにふうに別れが来るとは。
 今月4日逝去。享年73。

 凄い人だったと思います。天才といっていいのか、誰もがたどり着けない境地というか、ものの見方を身につけていました。
 「ハチャハチャ」と名づけられたギャグSFで広く知られましたが、その真髄は「無価値」だったといってしまいたい。徹底してくだらない、と言い換えてもいいかも。
 価値観をひっくり返し、すべての意味を無にしてしまうかのような、天衣無縫の笑いが繰り出されました。
 しかも、さらに凄いのは、それを「バカだろう?」と、情けなさそうに差し出してくるところ。アナーキーな戦士ではなくて、おバカな語り手に徹していたのです。

 最初に〈SFマガジン〉に掲載された「宇宙ゴミ大戦争」は、ファンジンに書いたものに手を加えての転載でしたが、その際、浅倉久志さんの強い推薦があったといいます。ユーモアものの翻訳を得意とする浅倉さんならではの、笑いへの理解力が、横田さんの面白さに太鼓判を押したのでしょう。

 横田さんがいて、浅倉さんがいた。日本のユーモアSFのためには、これ以上ない幸せな巡り合わせでした。


蟄居

2019-01-14 20:46:30 | 日記

 締切間近のため、今日は、家から出ませんでした。朝、畑にも行かず、夕方の散歩にも出かけず。ずっと本を読んでいました。

 40年、この仕事をやって来て、今でも、締切はかなりのストレスです(昔よりは精神的圧迫感が軽減している感じはありますが)。
 ただ、これがないとメリハリが出ないことも確か。乗り越えた後の充実感・解放感が、次のステップへの推進力となります。

 もしかしたら、精神力というか、脳のためにも良いのかも。
 筋トレをすると筋肉が傷めつけられ、そこから回復する過程で筋力がアップするようですが、それと同じように、脳の力も回復・増強して欲しい。

 ただ、実感としては、衰退に少しブレーキをかけてくれているのかなあ、という程度ですけれど。


ICカードリーダライタ

2019-01-12 21:35:00 | 日記

 朝からどんより曇った寒い一日。夕方から宵のうちにかけて、雨が降りました。

 降りだす前に、駅前の家電量販店へ出かけ、「ICカードリーダライタ」を購入。せっかくマイナンバーカードを作ったのだから、それを利用して税の電子申告をしてみようと考えたのです。帰途は、雨が降りだしていて、傘を差しました。

 余談ですが、「ICカードリーダライタ」と、語尾の音引き「ー」がないのは、好みではありません。「リーダーライター」とするのが、適切なような気がするのですが。
 一時は、コンピーューターも「コンピュータ」と音引きなしで表記する方が多かったですね(今でも半々くらいでしょうか)。
 音引きどおりに発音すると、間の抜けた感じになりますが、文字での表記は「ー」が語尾にある方が、個人的には落ち着きます。これは新聞の表記に馴染んでいるということだと思います。ま、好みの問題ではありますが。

 話をもどしてICカードリーダライタ。NTTコミュニケーションズの接触型「ACR39」というのを購入しました。
 USB端子をパソコンに挿入すると、ドライバ(これは音引きつけないなぁ)が自動的にダウンロード、インストールされます(かなり時間がかかる)。
 気になるのは、インストールされた後、ツールバーから取り外し用のボタン(なんというのか、USBのアイコンのついたやつ)が消えてしまうこと。無理矢理、引き抜けばいいのでしょうか。
 不安なので、とりあえずはパソコンの電源を落としてから、取り外すことにしようと思っています。