今日は『みどりの日』ということで、環境がらみの記事を。
さて、環境省は去る先月の4月22日、佐賀市の東よか干潟と鹿島市の肥前鹿島干潟を含む4箇所をラムサール条約への登録に推薦すると発表しました。
環境省 ラムサール条約湿地の新規登録候補地について(お知らせ)―平成27年4月22日、環境省・報道発表資料より
一方、地元新聞の佐賀新聞のほうではもう決まったかのような表題をつけています。
佐賀市と鹿島市の干潟 ラムサール条約登録へ―4月23日、佐賀新聞LIVEより
まだ、登録されていないのに気の早いものです。しかし、今回は佐賀新聞のこの記事に文句を付けることではありませんので、ここまでにするとして、『ラムサール条約』とは一体何なのかについて調べて見ました。
ラムサール条約というのは『水鳥の生息地として国際的な重要な湿地及びそこに生息・生育する動植物の保全を促し、湿地の適正な利用を進めることを目的として1971年2月2日に締結され、1975年12月21日に条約が発効しました。
このラムサール条約においての『湿地』の定義は次の通りです。
(参考1)ラムサール条約における「湿地」の定義(第1条1)
この条約の適用上、湿地とは、天然のものであるか人工のものであるか、永続的なものであるか一時的なものであるかを問わず、更には水が滞っているか流れているか、淡水であるか汽水であるか鹹水(かんすい、注:塩水のこと)であるかを問わず、沼沢地、湿原、泥炭地又は水域をいい、低潮時における水深が6メートルを超えない海域を含む。
(外務省ホームページ『ラムサール条約』より)
有明海の『干潟』が『湿地』としてラムサール条約への登録に推薦される根拠は上記の理由によるもののようです。
次に、ラムサール条約の締結国(日本は1980年に批准)に対する義務と権利について紹介します。先の『湿地の定義』と同様、外務省のホームページから。
2.締結国の権利・義務
本条約は、湿地の生態学上、動植物学上等の重要性を認識し、その保全を促進することを目的としている。主な規定は、以下のとおり。
(ア)各締約国は自国の領域内にある国際的に重要な湿地を指定し、指定された湿地は国際的に重要な湿地の登録簿に掲載される(第2条1、2)。
(イ)締約国は、条約湿地の保全及び湿地の適正な利用を促進するため、計画を作成し、実施する(第3条)。
(ウ)締約国は、条約湿地であるかを問わず、領域内の湿地に自然保護区を設けることにより湿地及び水鳥の保全を促進し、自然保護区の監視を行う(第4条1)。
(エ)湿地の研究、管理及び監視について能力を有する者の訓練を促進する(第4条5)。
では、最後にこのラムサール条約登録による政治的影響について私なりの考えを簡単に書きたいと思います。
まず、鹿島市の肥前鹿島干潟のほうですが、鹿島市の近くに諫早湾がございます。ご存知の通り、有明海の環境に対する影響を調査すること目的とした諫早湾の開門調査を巡って、国(農水省)と佐賀・長崎両県が対立しています。簡単に書きますと、佐賀県側が開門推進派、長崎県側が開門反対派で、国はどっちつかずで結局開門調査せず、制裁金を佐賀県の漁業者側に支払い続けている状態が続いています(仮に開門調査した場合、今度は長崎県の干拓営農者側に制裁金を支払わなければなりません)。
このラムサール条約への登録によって、漁業者側は
『ラムサール条約に登録された『干潟』の保全』
を目的に国側に開門調査を求めることができます。
続いて、佐賀市の東よか干潟のほうですが、この近くにあります佐賀市諸富町の佐賀空港、今ここで、陸上自衛隊のオスプレイ配備問題が持ち上がっております。このラムサール条約への登録によって、
『ラムサール条約に登録された『干潟』の保全及びそこに生息・生育する動植物への影響』
を大義名分とした陸上自衛隊のオスプレイ配備に対する反対の声が勢いづくと予想されます。
佐賀県の二つの干潟をラムサール条約登録の候補地として推薦した環境省はこうした政治的影響を考慮したのでしょうか。
以上で、今回の記事を終わります。
(佐賀県唐津市 西岡大介)