すばるに恋して∞に堕ちて

新たに。また1から始めてみようかと。

STORY.45 やさしいKISSをして

2014-09-06 03:00:22 | 小説

ある日つぶやきさんで拾った妄想シーンをモチーフに、
膨らませた妄想小説。

もともとは、もっと違う方向のお話だったのに。
何度も書き直し書き直している間に、
ちっとも前に進まず、季節が変わり。
冬のお話が、春になっても夏が来ても完成せずに。

夏の終わりの、こんな時期に。
まさかリアルで、彼のうわさが落ちてこようとは思ってもみなくて。

しかも。

考え考えたどり着いていたラストシーンのキーワードに、
それは見事にハマってしまっていて。

落ち込んだ、というか。
自爆した(笑)

自爆しすぎて。
そのキーワードを出さずにいこうと自縛して。
なんとか。
それらしく仕上げたものの。

気に入らない(笑)
けど、もうこれ以上、このお話は続けられない気分(笑)

繋がらない部分もあります。
解決してない部分もあります。

なので深夜に置き逃げします←

おつきあいくださる方は、続きからどうぞ。

ちなみに。
いつものことですが。

モデルとなる人物は実在しますが、
物語はフィクションです。

そのつもりで、どうぞ。

あ。
元となった妄想モチーフをつぶやいていた方には、
当時それを使って小説にすることをご許可いただきました。
ただ。
若干。というか、
かなり意図したところと変わっておりますことをお詫びいたします。

STORY.45  やさしいKISSをして




薄墨を流したような空が広がる。

グレーの濃淡がゆらめき、形を変え、
時折吹く冷たい風に交じって。
風花がひとひら、ひたひら。
舗道に舞ってゆく。

肩を寄せ、手をつなぎあい、温めあい、
並んで歩く影を。
ぼんやりとみつめながら。

俺は、ただ立ち尽くしていた。

どこ、や。
どこへ行った?
こんなとき、どこを探したらええ?


スケジュールの空きを見つけて、時間作って。
会えるんも久しぶりやったから。
とにかく二人きりになりたくて。
部屋取って。

せやのに。

なんでや。

なんで、こうなるん?



きっかけは、なんやったんやろう。

そんなことも覚えてない、
わからへん。

「思い出の中に君がいる・・・」

車の中、つけたラジオから流れ出る音楽。

運転してた俺には馴染んだ曲のひとつ。

彼女にしたかて。
初めて聞くってわけでもないはずやのに。

それまで楽しそうやった彼女から、少しずつ言葉が消えた。

「止めて」

少し間をおいて、彼女がぽつり。
消え入りそうな声で、
絞り出すように発した。

「は?なんで?もうすぐ着くよ」

事実。
目的のホテルまでは目と鼻の先やったし。
それに。
車の流れは順調で。
脇に寄ろうにも、寄られへん。

「どこでもいいわ、止めて」

いつになく。
語気の荒い彼女の横顔。

俺は仕方なく、隙間をぬって車を歩道わきに寄せた。



ドアを開け、彼女が下りてゆく。

「ちょ、どこ行くん!?」

「ごめん、一人になりたい」

言うが早いか、
彼女はドアを閉めた。

ドアガラスの向こう側。

怒ったような、
泣いたような表情を見せたかと思うと。
彼女はそのまま俺に背を向けた。

「は?ちょい待て・・・」

俺の声が、ハザードランプの無機質な音とともに、
狭い車内に残される。

「なんやねんて!」

追いかけて車を出ようとしたものの、
そこは駐車スペースですらなく。

「あああああ、もうッ!あかんやん!」

クリスマス前の。
どことなくせわしい人の流れに、彼女の姿が紛れていく。

なにがどうなって、
一人になりたい、に繋がっていったんかが、さっぱりわからん。

わからんけども。

いや、あかん。
一人にしたら、あかん。

それだけはわかる!

舞い始めた雪が、フロントガラスに当たっては消える。

車を動かし、少し先に駐車スペースを見つけた頃には。
それはかなり風に舞い始め。

痛みにも似た冷たさの中で。
俺はただ。
舗道に立ち尽くした。

彼女がどこへ行ったのかなんて。
わかるはずもなく。

だけど。

探さな。
とにかく、探さな。

今、彼女の手を放したら、あかん。





こんなはずじゃなかった・・・
戻らなくちゃ。
今日の時間を作るのに、彼がどれだけ無理をしたか。

知ってるのに。
わかってるのに。

ばかみたい。
ひとりで。
勝手に。
せつなくなってるなんて。

こんなわがまま。
わかってもらえるはず、ないのに。

そばにいたい。
それだけでいい。
思い出なんかいらない。
涙なんか忘れてしまいたい。
そばにいたい。
ただ、それだけでいい。

なのに。

「今日」が去ったら。
「次」がいつかを待つ日々が来る。

「次」があるのかどうかすら。
不安で仕方なくて。

消えてしまう言葉も。
ひとときのぬくもりも。

彼が私に用意してくれるものを、
与えてくれるものを。

信じきれない自分が。

悔しくて。
情けなくて。

好きなのに。
こんなに。
大事な。
「好き」なのに。

逢うたび、逢えるたび、
それを持て余してる。

どうしようもないくらいの、その戸惑いが。

彼に伝わってしまう気がして。

そばにいたいのに。
いられない。
もどかしい。





彼女は空を見上げ。
降る雪を掌に受け止め。
かすかな冷たさを残して姿を変えるそれを見つめた。





イルミネーションがきらめく中を歩き回り。
彼が彼女をようやく見つけたのは。
誰も気にも留めないくらいの。
小さな小さな公園。
街灯の光すら危ういようなベンチに、彼女はいた。

「やっと見つけた」

近寄った彼に気づきもしない彼女に、彼は声をかけた。

「風邪、ひくで?」

彼を見上げた彼女の頬に。
うっすら残る涙のあとを見つけて、彼は少しうろたえた。

たよりなさげな彼女の頬に指を這わせ。

「氷みたいやぞ?」

小一時間ほども探し回っていた彼の指だって、ずいぶん冷え切っていたのだが。
少しでも彼女を温めてやりたかった。

ただ、素直に。

彼は、彼女の隣に腰を下ろし。
身体を寄せ、肩を抱いた。

「あのね、私ね・・・」

何かを言い淀んだ彼女の口を、
彼はその唇でふさいだ。

言葉がこぼれだしてしまう前に。

自らの言葉で、彼女が壊れてしまう前に。

やわらかく。
優しいKISSを。

あたたかく、
優しいKISSを。

彼から彼女への、精一杯の、やさしいKISSを。


固く冷えた彼女の体が、
少しだけ緩んだのを感じとって、
彼は唇を離し。

「一人になるな、言うたはずやで」

と、言った。

「さびしいのも、つらいのも、しんどいのも、全部ぶつけてこいって言うたやろ」

「受けとめたるから、届くところにいろ。そう、言うたはずやんな?」

「一人で泣いたりすんな」

彼女の顔をそのまま首筋に寄せ、髪を撫でた。

ふわり。
かすかな香りが立ち上って消えた。

「なあ。一緒に、なろか」

身を任せていた彼女が、驚いたように顔をあげた。

「永遠、なんて・・・先のこと約束したってしゃあないとも思うてる」
「だから、紙切れ一つの約束はまだ、よう出来ん」
「でも一つ部屋におることで、お前が、それで安心できるんやったら」
「それくらいのことやったら」

彼を見つめる彼女の瞳が、みるみるうるんでいく。

「・・・・・・ばか」

「は?待てや、なんて言うた?」

思ってた反応と違う答えが返ってきて、彼は聞き返した。

「バカ・・・ね」


笑顔で、泣きながら。
彼女が言った。

「待て、バカはあかん、傷つく」

彼はおおげさに顔を歪めてみせた。

「一世一代の、勝負に出てんぞ?それ、くじくようなこと言うなや」

彼女は、もう一度、彼に体を預けて言った。

「大丈夫。そういってくれただけで、大丈夫」

彼女にとっては。
「次」の約束をもらうよりも、なによりも。
彼がそれを口にしてくれたことがうれしかった。

「次」がいつか、ということよりも。
いつか「次」が来ると思うことの方が、前を見ていられる気がした。

「あほ。二人で暮らしたら、いつだってこんなんしてあっためてやれるやん」

彼女の体を思い切り抱きしめて、彼は微笑った。

少しだけいたずら好きな、子供のような顔で。





Fin.





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