電気羊に旅を

「東南アジア一人旅32日」からブログタイトルを変更。東南アジア・中国・ネパール・インドの旅日記あり。南米ネタを公開中

犬とカイラスと私

2008年04月29日 | イヌ・ネコ写真
チベット・カイラス神山看板
チベットの奥地に「カイラス」という山がある。到着直前の道路標識で「神山」と書かれるこの山は、仏教(特にチベット仏教)・ボン教・ヒンドゥー教・ジャイナ教において聖地とされている。

チベット人は、この山を一周するように作られた約52kmある巡礼路を一日で歩いてしまうらしい。中には五体投地をしながら数十日をかけ巡礼する熱心なチベット教徒もいる。
※五体投地とは、体を地面にスライディングさせながら、一メートル程度つづ前に進んでいくというお祈りの仕方。

チベット仏教では「コルラ」という巡礼スタイルがある。
コルラとはチベット語で「回る」という意味で、神聖なものの周りを時計回りに回ることで功徳を得られる行為のこと(ボン教は反時計回り)。

僕らは旅友3人と一緒に、このカイラス巡礼路を一泊二日でコルラすることになった。
コルラの様子は、過去に書いた旅日記を参照してもらうとして、今回はコルラ犬と呼ばれる犬のお話。

チベット・タルチェン
コルラ前日の夕方、到着した麓の町タルチェンを見たとき、その風景は北斗の拳に出てくるような「世紀末の町」のようだった。
チベット人はあまりきれい好きな民族ではない。建物は日干し煉瓦を積み上げた大雑把なつくり、アスファルトやコンクリートで道が整備されているはずもなく町にはゴミが散乱し、特に仕事をするわけでもなく暇をもてあましている人々、グレーな曇り空が余計に怪しげな雰囲気をかもし出す。

宿の屋外トイレは、囲いこそあるが、6畳ほどのスペースの地面に穴が三つあいているだけ。当然、自分が用を足している最中に、チベット人が平気で隣にしゃがみこみウンコをする(しかもオシリを拭かない)。
皆、穴にちゃんとウンコを投入(?)していればいいのだが、なぜか穴の周りにウンコが散乱している状態・・・。トイレも「世紀末」なのである。

チベット・カイラス・コルラ犬
翌日の朝 荷物をコンパクトにまとめ8:25AM、タルチェンの町を出発。

歩いてから数十分して、タルチョ(5色の小さい旗)がたなびく場所あり、その辺りから二匹の犬がついてくるようになった。

ここカイラスをコルラしたバックパッカーの噂で「コルラ犬」がいるというのは聞いていた。彼らがそのようだった。
コルラ犬なんて、なんだか神聖な響きだが・・・事実、なんどか道に迷いそうな時は僕たちを導いてくれることになる・・・が、おそらく実情は旅人が与えるエサ目当てなんだろう。

僕たちは、人懐っこい茶色の方の犬を「ラパ」と名づけた。この名前は西チベットの旅のためにランクルを運転し続けてくれている東幹久似のチベット人ドライバーの名前である。

チベット・カイラス・コルラ犬

チベット・カイラス・コルラ犬
このようにずっと僕たちの後を物静かについてくる。

チベット・カイラス・宿
2:00AMにカイラスの北側の宿泊所に到着し、一晩過ごす。

翌朝、宿の外でラパは僕たちの出発を待っていた。
そして、標高5668mの恐怖の峠・・・ドルマ・ラを越え、しばらく歩いたときに、例の事件が起こる。

当時の日記から抜粋。

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おそらく2:00PM頃、サンポ氏を抜かし一人歩いていると、ルートから外れたらしく苔がついている川石が広がるところに来た時、後ろに犬の「ウォン!」という低い声が!
振り返ると犬が4匹今にも自分に襲い掛かろうとしている。ヤバイ!!

もうわけも分からないが、とりあえず逃げる。おもいっきり走り、普段は通れないと思うような川の浅瀬も少しだけ頭を出している石の上を必死にジャンプしながら川を越える。
一匹茶色い犬が左のジーパンの裾を噛み付いた。その勢いで川の中州で転倒。仰向けになりながら見ると3匹がさらに襲い掛かってくる。必死で右足で蹴りをいれ(当たらない)ると、一瞬 犬がたじろぎ、その隙に逃げる。前方のチベタンのおばさん二人が目に入り、その方に向かう。
振り返ると、4匹が遠くに走り去っている光景が見え ようやくホッとする。

やばかったぁ・・・。気づくと川の支流を3本越え、ジーパンの裾に犬が噛んだ二つの穴が空いていた。足には傷は無し。あそこで噛まれていたとしたら、一体どうなっていたんだろう・・・。ルートをはずれ一人になっていたのがよくなかった。

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ジーパン
その時に噛まれてあいたジーパンの穴である。

前兆はあった。ここのポイントの前のドルマ・ラ(峠)で、ラサで購入しておいたタルチョを結びつけ、「バルス!」などと叫びながらルンタ(護符)を空にまいていた時、何匹かの犬がうろうろしていたのだ。その時は、ラパと同様おとなしいコルラ犬と思っていたのだが・・・。
この時 ふざけて唱えたラピュタの滅びの呪文が災いしたのかもしれない。い・・・いや、チベット仏教のご利益でむしろ噛まれずにすんだと考えよう。

遠くに走り去っていく野犬をラパが咆えて追っかけているのが見えた。もっと早く助けてくれ。

アジアや南米の国々では、街中で普通に野良犬がうろうろしている場合が多い。多くがぐったりと寝ていたり大人しいのがほとんどだが、たまに旅人を目の敵にして咆える犬がいる。
この「チベット野犬に襲われる事件」以来、そういう犬を見るたびに、この事件が脳裏をかすめ、ヒヤヒヤするのだ。いわゆうるトラウマってやつだ・・・。

チベット・カイラス・コルラ犬
さて、この写真、ラパの鼻のあたりが赤くなってる・・・。

チベット・カイラス・ねずみ?
この写真に写っている大きなねずみのような生き物を襲って食べたからである。
ラパ、お前・・・。

チベット・カイラス・コルラ犬

チベット・カイラス・コルラ犬
コルラも終盤、天気も良くなり崖下に川が流れる景色が美しく、気持ちよく歩けた。

チベット・カイラス・コルラ犬
6:00pm、絶景ポイントで、旅友メンバーとラパと一緒に集合写真。みんな何枚も撮影したがずっと大人しく座っていて、いい写真が撮れた(顔が写ってるので非公開)。
皆それぞれが、おやつ代わりに持っていたソーセージをご褒美にあげる。

チベット・カイラス・コルラ犬

ラパはここで一眠り、お疲れ・・・ラパ。



当時の日記
2005年7月6日(水) カイラス巡礼一日目
2005年7月7日(木) カイラス巡礼二日目 ~野犬に襲われる~



[2005年7月 西チベット・カイラス]

ブログの現象の裏にある本質

2008年04月13日 | 雑感
トルコ パムッカレの食堂

前回「嘘にこそ、真実がある」という記事を書いた。
その理由を挙げると以下の5つ。

1.エイプリルフールのネタの為の前フリ
2.嘘について興味があったから
3.国家ぐるみの歴史教育やメディアの報道について思うところがあったから
4.ニュースサイト「まなめはうす」さんを釣る為
5.過去のデスノート記事を紹介したかったから


トルコ パムッカレの食堂

1.エイプリルフールのネタの為の前フリ

ほぼ毎年恒例としているエイプリルフールの記事を書こうと、そのために前フリとして書いたものだったのだが、不幸にも前日にパソコンがウイルス(?)によりクラッシュ。起動しなくなりました。
休日や私用が重なり三日後にサポートセンターに電話。再インストール。おかげでCドライブのデータがすべて吹っ飛びました。
旅写真や旅日記は外部メディアに保存していたのですが、普段フル活用している「紙copi」というメモ書きソフトの保存データがCドライブにあり、ブログネタの書きかけやネット上の名言やらお気に入りページなどの保存データが無くなってしまいました…。南無三。



2.嘘について興味があったから

<「ハンバーガーを待つ3分間」の値段~企画を見つける着眼術~ 斉藤由多加著>によると、「現象」の反対語は、「本質」なんだそうだ。
ということは、前回の記事に置き換えると「嘘は現象であり、嘘をつかなければならない理由が本質」ということかな。

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 私たちが目にするものはすべて「現象」ですが、もし「本質」がその反対側にあるとすれば、それを発見するためには、すこしあまのじゃくな視点が必要に思えます。
   「ハンバーガーを待つ3分間」の値段~企画を見つける着眼術~より
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仮に、「あまのじゃくな視点」でその「本質」を見えたつもりでいても、それが真実かどうかを確かめるすべがない場合が多いというのが難しいところ。



3.国家ぐるみの歴史教育やメディアの報道について思うところがあったから


先日(前回の記事を書いた後)、中国在住で日本語がペラペラの中国人と話す機会がありました。

私「中国の毒入り冷凍ギョーザ事件があって食品の輸出業界は大変じゃない?」
※ちなみに、その中国人は食品業界とは関係のない一般の人です。
中「奈良の件は日本が悪いです。奈良ではスーパーの棚に並べるときに日本人が毒を入れたんだと思います」

なんだそれ?なんでそうなるの…?

話は変わってチベットの「暴動」に関して尋ねると

中「あれはチベット人が悪いです」
私「あの映像でチベット人と思われる人がスクーターに乗った人を殴る映像があったけど、あれ中国人のやらせっていうYoutubeを見たよ」
中「それは外国メディアが流している嘘でしょう」
私「じゃあ、南京大虐殺とかやっぱり信じてるの?」
中「あぁ、あれは100パーセント本当です」
私「100パーセント!?どうしてそこまで信じてるの?」
中「写真で見ましたから本当です」
私「君、あの事件、何月にあったか知ってる?」
中「知りません」
私「12月と1月だよ。だけど南京大虐殺といわれる写真に移っている人は半そで着てるんだけど、なんかおかしいと思わない?」
中「その日だけ暑かったんでしょう」

彼は、中国国内で(ネットを含めて)情報統制されていることを知っていると言うので、

私「情報が制限されてるってことは、都合の悪いことを隠しているとは思わない?」
中「私は子供ではありませんので自分で判断できます。それと、私の国の言っていることを信じます」とのこと

会話はだいぶ省略してますが「私の国の言っていることを信じます」という台詞は何度か出てきて非常に印象に残ってます。

中国や北朝鮮などのメディア発表とか、昔のオウム事件の記者発表とか、「そんなの誰も信じねぇヨ」ってことを我々は思うけど、内部の人間はちゃ~んと信じちゃってるところが興味深い。
しかし、自分は彼らより情報が制限されてない分、「自分のほうが正しい判断が出来てる」と思う反面、遠回りに自分もだまされている可能性もあることは否定できないのだ。
自分のほうが正しいという自負をそれぞれが持っているからタチが悪い。

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互いに事実を見すえているつもりでも、見えているものが違うから二者の言い分は完全に決裂します。自分の目に見えるもの、形のあるものだけを事実としてしまう習性は、人間世界の争いごとの原因となってきました。
   「ハンバーガーを待つ3分間」の値段~企画を見つける着眼術~より
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二人が目の前で同じものを見ていたとしても、二人の捕らえた事実は別のものになるかもしれない。
見た人の位置・距離・性別・人種・国籍が違えばなおさらだ。
また「出来事」が、二人が見ていなかったことだったり、過去のものだった場合はその事実の相違はさらに広がるでしょう。


トルコ パムッカレの食堂

4.ニュースサイト「まなめはうす」さんを釣る為

ニュースサイト「DONTAK」さん、リンクをして頂きありがとうございます。
そのおかげで「まなめはうす」さんが取り上げてくれ、その波及効果でいくつかのサイトにもリンクを張って頂いたようです。
まなめさんこういう記事好きそうだよナァ、って意識しながら書いたので、
「こういう記事大好きだわー。嘘にはつかねばならない理由がある。」って、一言コメントですが、飛び跳ねるくらい嬉しかったです。



5.過去のデスノート記事を紹介したかったから

まなめさんにリンクを張られた翌日には、該当の記事とトップのリンクあわせて約400アクセス(それが三日間くらい続いた)があり、前回の記事をたくさんの人に読んでもらったはずなのですが、期待していた過去のデスノート関連の記事「デスノートの死神界はバチカンにある」と「TABI NOTE ータビノートー」のアクセスは一日3~5アクセス…実に100分の1。
記事の最後に付ける「関連記事」を読んでもらえないというのは、いろいろなブログを読んでいて聞いていたが、ここまでとは。
デスノートの死神界にでてくる人間界を覗くための「球体」が、バチカンにあるオブジェにそっくりだということは、記事を書いた当時、(自分が探した限り)検索かけたときには誰も書いていなかったので、もう少し知られてもいいかナァと思っているのだが、なかなかうまい事いかないな。


トルコ パムッカレの食堂

まだまだ、僕はブログの「現象」しか見えてないらしい…。


[写真;トルコ パムッカレの食堂]


「ハンバーガーを待つ3分間」の値段―企画を見つける着眼術 (幻冬舎文庫 (さ-21-1))
斎藤 由多加
幻冬舎

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