電気羊に旅を

「東南アジア一人旅32日」からブログタイトルを変更。東南アジア・中国・ネパール・インドの旅日記あり。南米ネタを公開中

とっていいのは写真だけ、残していいのは・・・

2008年07月06日 | 雑感
イタリア・フィレンツェ ドゥオーモ
最近、落書きに関したニュースをいくつか耳にする。
そのきっかけは、イタリアのフィレンツェにあるサンタマリア・デル・フィオーレ大聖堂に岐阜市立女子短期大学の落書きだ。
初めてそのニュースを見たときは「何をいまさら」という感じだった。

イタリア・フィレンツェ ドゥオーモ 落書き

イタリア・フィレンツェ ドゥオーモ 落書き

イタリア・フィレンツェ ドゥオーオーモ ラクガキ

イタリア・フィレンツェ ドゥオーモ ラクガキ

イタリア・フィレンツェ ドゥオーモ ラクガキ
以下、その報道に関していくつか感想と考察を

1、なぜ岐阜市立女子短期大学と野球部監督の落書きが今クローズアップされたのか?
2、なぜ日本人と韓国人の落書きが多いのか?
3、なぜ落書きをするのか?


イタリア・フィレンツェ ドゥオーモ 落書き

イタリア・フィレンツェ ドゥオーモ ラクガキ

イタリア・フィレンツェ ドゥオーモ ラクガキ
●1、なぜ岐阜市立女子短期大学と野球部監督の落書きが今クローズアップされたのか?

今回の件が問題になったのは、あるブログ作者が大聖堂の落書きを岐阜市立女子短期大学に通報したことがきっかけである。
茨城の高校野球部監督の方は、ネット上の他の画像に写っていた落書きにフルネームで自分と奥さんの名前が書かれていることから個人を特定されたようだ(おそらく2ch)。ニュースや新聞では「野球部監督」としか出ていないが、検索をかけると個人名やら夫婦が写った顔写真までネットで公開されている。

僕が、2006年の7月にフィレンツェにあるこの大聖堂のクーポラを訪れたときに、すでに大量の落書きで埋め尽くされていた。(※クーポラとは一枚目の写真の茶色い屋根のドームの上にある狭いバルコニー部分のこと)
最初の報道を観た時の落書きの画像は、それだけがトリミングされた写真だったので「もしかしたら、これだけ話題になるんだから、僕が見た大量のラクガキが補修で消されて、綺麗になったばかりのところに書き込んだんだ」と思ったのだが、後の報道をみるとそういうわけではないらしい。

ネットでは、このクーポラの沢山の落書きの現状は、昔からネット上にさらされてはいた。
ではなぜ今 問題となったのか?
それは、大学名という社会的組織の名前が書かれていたからだ。
僕が撮ってきた画像を見てもらえれば分かるが、あだ名やファーストネーム(with日付)が書かれていることがほとんど。
仮にフルネームが書かれていたのを見つけてもその個人を探すということは通常しない。しかし大学名が書かれていれば抗議の電話をかける人がでるのも不思議ではない。
そしてそれが報道されるとネット上の多くの目にとまり、もともとさらされていた他の落書きの画像からフルネームを見つけ、それが、特定されやすい名前であった(夫婦セット)ことと、高校野球部監督だったことからこの二件がクローズアップされることとなった。(※ぼかしをいれたが上のハートマークで囲われた写真が監督のものらしい)
監督の方は、女子大生の件がなければ問題となることはなかったと思うが、「夫婦の名前」「高校野球部」「監督」「甲子園前」という要素がクローズアップされる要因となったと思う。


イタリア・フィレンツェ ドゥオーモ ラクガキ

イタリア・フィレンツェ ドゥオーモ ラクガキ

イタリア・フィレンツェ ドゥオーモ ラクガキ

イタリア・フィレンツェ ドゥオーモ ラクガキ

イタリア・フィレンツェ ドゥオーモ ラクガキ 冷静と情熱のあいだ
●2、なぜ日本人と韓国人の落書きが多いのか?

この大聖堂のクーポラに書かれた落書きを国別で見ると(数をカウントしているわけではないのであくまで印象では)、
日本40%、韓国45% その他15%。

ハングルが特徴的な文字なので一番目立って数が多く感じるが、アルファベットで書かれている文字をよく見ると日本人の名前であったりする場合が多く、印象より日本人率は高いかもしれない。
外国では、ラクガキというのはそれほど珍しくないのだが、この大聖堂のクーポラでは、日本人と韓国人の落書きが際立っていた。
おそらくその理由は、映画「冷静と情熱のあいだ」にある。

主人公(竹之内豊)は、学生時代に付き合っていた恋人(ケリー・チャン)の「わたしの30歳の誕生日に、フィレンツェのドゥオーモのクーポラで会ってね。約束してね。」(ウィキペディアより)という10年前に言っていた言葉を頼りにこのドゥオーモ(大聖堂)まで会いに行く。
この場所は映画の中で印象的に使われていた場所だ。

2004年頃にオーストラリアを旅した時に会った韓国人に「冷静と情熱のあいだ」を観たという人が多かった(日本の話題になるとアニメかこの映画のことを話題にあげてきた)。どうやら韓国で結構ヒットしたようで、日本語の他にハングルが多いのは、そのせいじゃないかと推測する。
上の写真の「壱彦 小百合 5年後の12時に」なんてのはこの映画の影響だろう。


イタリア・フィレンツェ ドゥオーモ 落書き

イタリア・フィレンツェ ドゥオーモ 落書き

イタリア・フィレンツェ ドゥオーモ 落書き

イタリア・フィレンツェ ドゥオーモ 落書き

イタリア・フィレンツェ ドゥオーモ 落書き

イタリア・フィレンツェ ドゥオーモ 落書き
●3、なぜ落書きをするのか?

世界遺産の建物にかかわらず、他人の所有物に落書きをするのは犯罪行為であり許されるものではないが、「そうしてしまう環境」は理解できないことはない。
今回の件、ネット上の批評を見ると「割れ窓理論」で説明する人が多いが、どちらかというと「自転車のゴミカゴ理論」じゃないかと。
この現象の名前を知らないので勝手に名づけてみた。
自転車のカゴに一つでもゴミが入っているだけで、数時間後にはゴミで一杯になるという現象がある。
日本人は、道にゴミが一切無いところではゴミを捨てないが、ゴミを手にしているときに「ゴミが入った自転車のカゴ」を見つけると「捨ててもいいかな」という気になってしまう(実際に捨てるかどうかは人それぞれ)。
「割れ窓理論」は、例えば、割れた窓一つを放置していると、それがどんどんエスカレートして治安が悪くなり、やがて殺人事件まで起こるようになる・・・という話だが、日本の場合は、割れ窓が一つあると、その割れた窓の数が増えることはあっても、エスカレートすることということは少ないんじゃないか?(データがあるわけじゃないが印象として)
自転車カゴのゴミは一つを許すとゴミの数がひたすら増えていくだけ。犯罪の種類がエスカレートするのと数だけが増えるのとで性質が違う。だから今回の日本人の例は「割れ窓理論」とは別として考えた。
いずれにしろ今回の場合も、落書きの初期の段階で対処しなければならないが、消すといっても大理石を数ミリ削るくらいしかできないだろうからそう簡単ではないだろう。

沢山落書きがあるという「空気を読み」、他の人もやっているから「流されて」、映画の舞台という「ミーハー心」、旅の記念を残すという「ログ体質」、悪いことはお天道様がみているという犯罪抑止力も「自転車のゴミカゴ理論で罪の意識が低下」する・・・日本人的な性質の本領発揮でこのクーポラでの落書きは増えていく。

いろいろ書く理由を予想したが、そもそもなぜその場にサインペンを持っていたんだろうか?
旅行に行く際に、入出国の書類を書くときやメモをするためにボールペンを持っていくことはあるが、サインペンなんて通常持っていかない。はじめから、ここにラクガキをするつもりでサインペンを持って行ったのか??


イタリア・フィレンツェ ドゥオーモ フレスコ画
この大聖堂のドーム状の屋根の内側には、ヴァザーリとその弟子たちによるフレスコ画「最後の審判」が書かれている。
ラクガキをした人達は、天寿を全うした後、あの世で悪魔に、↑こんなこととか

イタリア・フィレンツェ ドゥオーモ 最後の審判
↑こんなこととかされてしまえばいいと思った。

イタリア・フィレンツェ ドゥオーモ 落書き防止
テレビの自然系の番組である外国人が言っていた・・・



「とっていいのは写真だけ、残していいのは足跡だけ」



[2006年7月 イタリア・フィレンツェ]


<追記>
2008年7月9日放送のフジテレビ「めざましテレビ」のめざまし調査隊のコーナーで、スタッフが実際に現地に行き、読み取れる落書きの国別の数を数えていた。

1位 韓国語 104個
2位 日本語 81個
3位 イタリア語 43個
4位 英語 37個
5位 スペイン語 14個

全部で279個の落書き。
比率を計算すると、韓国語39パーセント 日本語29パーセントだった。
僕が旅行したときから二年がたってるけど(変化があるかもしれないが)、大体 印象どおりの結果だ。
でも疑問点が一つ。「○○語」と書いてあるがローマ字で書かれた日本人の名前も「日本語」にカウントしているのだろうか?
ところで番組では、いたるところに落書きがある同じフィレンツェにあるその他の建物を映し、そこには日本語がほとんど無い・・・ということを言っておきながら、ここの場所だけ韓国と日本が多い理由を言及しなかった。
調べてみると映画「冷静と情熱のあいだ」の製作に「フジテレビ」とある。
あ~なるほどね!