豪州帰りの「えりー」日記

メルボルンでの学生ワーホリ経験をシニカルに慎ましくご紹介。その経験を映像業界で活かしたり殺したりな趣味ブログ。

小説れびゅー的な⑧/恩田陸『ネクロポリス』

2020-06-06 11:11:00 | 小説れびゅー

ふと写真フォルダを覗いてみると見事な雪化粧の写真がありました。その写真の日付は今年の3月末。2ヶ月前は雪が降っていたのに、今では半袖のシャツを着ないと不快になる程の暑さです。


春よ。遠き春よ。いつの間に過ぎ去ってしまったのか。


「夏と冬どっちが好き?」と聞かれると必ず「どっちも嫌い」と答えます「えりー」です。梅雨のシーズンが近いですね。


今回は恩田陸『ネクロポリス』になります。ファンタジーにホラーとミステリをブレンドしたちょっと不安で怖いけどどこか賑やかで楽しい小説です。


・「何が普通か、何が現実か、何が正しいかなんて誰にも分からん。われわれがいるところ、君が今向かっているところも紛れもない現実なのさ」(上巻p.88より抜粋)

ジュンは「死者」に再び会うことが出来る不思議な孤島「V.ファー」の「アナザーヒル」に個性豊かな親戚たちと滞在する。和洋折衷を思わせるその孤島で「ヒガン」が始まる。「血濡れジャック」に殺害された死者が「お客様」として現れるのか、また何を話すのか、滞在する者たちはその話題で持ちきりに。


・「ーこれまでは、『ずっとずっとそうやってきてるからそういうものだ』とか『みんなこうしてきたんだ』という説明で済んだものが、だんだんそれでは済まなくなってきて、知らずに済んだことまで知らなければならない時代になってしまったー」(下巻p.362より抜粋)

今年の「ヒガン」はどこかおかしい。連続するように発生する不可解な事件そして現象。そしてジュンが出会った不思議な「お客様」は誰なのか。「血濡れジャック」は結局誰なのか。それらの謎が少しずつそして確かなスピードで氷解していく。


・それでもフィクション

完成された世界観、まるで本当に死者と再び会うことが出来る世界が存在するのかもしれない。そんな期待感を感じさせてくれますが、これはあくまでもフィクションで存在し得ない世界なのです。いや、実は何処かに


・これがイギリスの国民性!

私も英文学(アガサクリスティだけですが)をよく読んでいたので、イギリス人の国民性がよく表現されていると感じました(小並感)芯があって少々ニヒルなところがあり、またゴシップ好きでついついパブで自論を話し込んでしまう。日本人であるジュンイチロウとの対比が強調させてくれます。


・怖いけど気になる

個人的に夜遅くに読むのはおススメしません。作品の雰囲気のせいで何というか不安になりますし、作品の展開が気になって徹夜してしまいそうになります。そんな小説の持つ魔力を感じさせてくれる作品です。


次回は上中下の3部作を読んで紹介しようと思います!誰のどの作品かはお楽しみに!

それでは!



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