「ヘタだけど」
冷たい風がそよぐ構内の中庭で軽音部の演奏を聴きながら私はおでんを食べている。今日は全国的に大学祭というイベントが開催される日で、私の通う大学も規模は小さいもののそこそこの盛り上がりを見せている。
「何かいいな」
そうは言ってもキラキラとしたキャンパスライフを描けそうにない地味なこの大学にわざわざやって来るキラキラ高校生はほとんどおらず、連携している小中学校の児童生徒と地域の方が多くを占めており、こじんまりとした地域のお祭りのような雰囲気が漂っているのが否めない。
それはどこもかしこも同じで、軽音部の演奏も前列は部員が立ったままの状態で占めており、後列に並べられたパイプ椅子は閑散としていて、椅子たちに向かって演奏をしているのではないかと感じるほど。そんな中で私はその中庭の端にある区切りのない出っ張りに腰かけておでんを食べている。申し訳程度に木の板で覆われた出っ張りは座るとひんやりしたが、時間が経つと気にならなくなった。
そうそうどうしておでんを食べているのかと言うと、私の後輩が所属する学科がおでんを出していて、それを買うことを以前から約束していたからだ。私の義理堅さがここに現れているので少しだけ尊敬して欲しい。そして後輩からおでんを買った私はどこで食べるのか悩んだ挙句、その後輩を連れて軽音部の演奏が開催されている中庭でおでんを食べている。私の後輩は優しいのでこの奇特な提案に快く承諾してくれた。とてもやさしい。
ちなみに軽音部の演奏を聴きながらおでんを食べることを選んだのはたまたまと言えばたまたまで、何となくと言えば何となくであるが、卒業論文を進めるために講義棟のコンピューター室を訪れたのが起因していると言えばそうなのである。
実は来週に卒業論文の研究内容とその進捗状況を発表する中間発表という卒業に関わる重大な発表が予定されており、発表用の原稿も仕上がっていない私は元々学祭に来るべきではなかった。なのに来た。家に居たらダメになりそうだったので許して欲しい。
学祭の日に大学で卒論を進める学生は私ぐらいなのか、訪れた講義棟のコンピューター室は無人の全40台程度のパソコンが貸し切り状態だった。図書館の方に行くか少し逡巡したが、独りの方が周りを気にしなくていいのでこのがらんとした空間を縦横無尽、傍若無人に利用した。その時に中庭の方から軽音部の演奏が耳に入ったのである。
後輩イチオシの大根はよく出汁が染みていて、ひと口齧るとどこか懐かしい味がした。実家で食べるおでんのあの味。コンビニおでんとは違う暖かさを感じた。懐かしい。最近はこの感覚を味わうことが何故か多いような気がする。通学中の窓外の景色、夕暮れ時の冷えた空気、このおでんの味、軽音部のヘタな演奏。
かつては私もあそこに立って歌って楽器を弾いていた。高校1年生の頃の私。ヘタクソなりに頑張った。それがもう6~7年前のことだと気付く。愕然。あの頃の私は今の私を想像していただろうか。このおでんを齧りながら演奏を聴く私を。ふとそんな思いに駆られた。懐かしさは今の私と過去の私を結びつける。そして時の速さ、残酷さを私に実感させてくれる。
ここまで話を進めているが、本来ブログの更新などしている場合ではないのである。中間発表に間に合わす気があるのか。卒論から逃げるな。勝手に感傷に浸るな。おでん美味しかった。またベース弾きてえなあ。学祭行って良かった。
そう言えば私の「内定式」は人事の方から「社外秘」と言われたので、記事に出来ませんでした。
それでは!
冷たい風がそよぐ構内の中庭で軽音部の演奏を聴きながら私はおでんを食べている。今日は全国的に大学祭というイベントが開催される日で、私の通う大学も規模は小さいもののそこそこの盛り上がりを見せている。
「何かいいな」
そうは言ってもキラキラとしたキャンパスライフを描けそうにない地味なこの大学にわざわざやって来るキラキラ高校生はほとんどおらず、連携している小中学校の児童生徒と地域の方が多くを占めており、こじんまりとした地域のお祭りのような雰囲気が漂っているのが否めない。
それはどこもかしこも同じで、軽音部の演奏も前列は部員が立ったままの状態で占めており、後列に並べられたパイプ椅子は閑散としていて、椅子たちに向かって演奏をしているのではないかと感じるほど。そんな中で私はその中庭の端にある区切りのない出っ張りに腰かけておでんを食べている。申し訳程度に木の板で覆われた出っ張りは座るとひんやりしたが、時間が経つと気にならなくなった。
そうそうどうしておでんを食べているのかと言うと、私の後輩が所属する学科がおでんを出していて、それを買うことを以前から約束していたからだ。私の義理堅さがここに現れているので少しだけ尊敬して欲しい。そして後輩からおでんを買った私はどこで食べるのか悩んだ挙句、その後輩を連れて軽音部の演奏が開催されている中庭でおでんを食べている。私の後輩は優しいのでこの奇特な提案に快く承諾してくれた。とてもやさしい。
ちなみに軽音部の演奏を聴きながらおでんを食べることを選んだのはたまたまと言えばたまたまで、何となくと言えば何となくであるが、卒業論文を進めるために講義棟のコンピューター室を訪れたのが起因していると言えばそうなのである。
実は来週に卒業論文の研究内容とその進捗状況を発表する中間発表という卒業に関わる重大な発表が予定されており、発表用の原稿も仕上がっていない私は元々学祭に来るべきではなかった。なのに来た。家に居たらダメになりそうだったので許して欲しい。
学祭の日に大学で卒論を進める学生は私ぐらいなのか、訪れた講義棟のコンピューター室は無人の全40台程度のパソコンが貸し切り状態だった。図書館の方に行くか少し逡巡したが、独りの方が周りを気にしなくていいのでこのがらんとした空間を縦横無尽、傍若無人に利用した。その時に中庭の方から軽音部の演奏が耳に入ったのである。
後輩イチオシの大根はよく出汁が染みていて、ひと口齧るとどこか懐かしい味がした。実家で食べるおでんのあの味。コンビニおでんとは違う暖かさを感じた。懐かしい。最近はこの感覚を味わうことが何故か多いような気がする。通学中の窓外の景色、夕暮れ時の冷えた空気、このおでんの味、軽音部のヘタな演奏。
かつては私もあそこに立って歌って楽器を弾いていた。高校1年生の頃の私。ヘタクソなりに頑張った。それがもう6~7年前のことだと気付く。愕然。あの頃の私は今の私を想像していただろうか。このおでんを齧りながら演奏を聴く私を。ふとそんな思いに駆られた。懐かしさは今の私と過去の私を結びつける。そして時の速さ、残酷さを私に実感させてくれる。
ここまで話を進めているが、本来ブログの更新などしている場合ではないのである。中間発表に間に合わす気があるのか。卒論から逃げるな。勝手に感傷に浸るな。おでん美味しかった。またベース弾きてえなあ。学祭行って良かった。
そう言えば私の「内定式」は人事の方から「社外秘」と言われたので、記事に出来ませんでした。
それでは!