豪州帰りの「えりー」日記

メルボルンでの学生ワーホリ経験をシニカルに慎ましくご紹介。その経験を映像業界で活かしたり殺したりな趣味ブログ。

小説れびゅー(12)/恩田陸『三月は深き紅の淵を』

2020-08-22 23:11:00 | 小説れびゅー

8月は夏らしい暑さで参っちゃいますね。こんな刺すような熱気の中で昨年はサッカーをしていたんだから驚きです。感染予防も大切ですが、水分補給もお忘れなく!


さて今回は恩田陸『三月は深き紅の淵を』になります。これまで何冊か紹介させて頂きましたが、個人的には恩田陸の世界観が詰まった1冊がこの『三月は深き紅の淵を』だと感じています。この小説は四部に分かれており、それぞれが「三月は深き紅の淵を」という小説の1部分をなぞるようなストーリーになっております。ではそれぞれを簡単に紹介していきたいと思います。


 待っている人々

普通の本好きな会社員が会長の屋敷に呼ばれて始まるとある1冊の本探し。会長と会長の友人に翻弄されながら主人公の鮫島巧一は屋敷に隠された秘密を解き明かすのか


 出雲夜想曲

2人の編集者がとある1冊の本の過去を解き明かす為に出雲へ夜行列車で向かう。車中で語られるその1冊の過去を解き明かす鍵が出雲にある理由とは。


 虹と雲と鳥と

女子生徒が2人投身自殺した。何故彼女たちは死を選んだのか。2人と親しかった人々がその理由を求めていく。


 回転木馬

互い違いに展開されるストーリーの数々。まるでそれは回転木馬に乗っているかのよう。個人的に恩田陸ワールドそのものが詰まった短編。


とりわけ第④章では別作品と繋がっており、理瀬という少女は『麦の海に沈む果実』と『黄昏の百合の骨』、さらに章末に語られる『黒と茶の幻想』はそのままのタイトルで出版されています。


上記の小説も久し振りに読みたくなったので随時紹介出来ればと思います!

それでは!


小説れびゅー的な(11)/東野圭吾『白夜行』

2020-08-13 23:11:00 | 小説れびゅー

更新はまた今度でいいや。気付けば1ヶ月も放置していました。以下の内容は1ヶ月前に書き上げて温めていたものですので悪しからず。


さて今回紹介するのは東野圭吾『白夜行』です!



・「あの時に摘み取っておくべき芽があったんや。それをほったらかしにしておいたから、芽はどんどん成長してしもた。成長して花を咲かせてしまいよった。しかも悪い花を」(p.739より抜粋)

質屋の店主が廃ビル内で何者かに殺された。被害者の周辺を調査すると浮かび上がる数人の大人達に疑惑が。しかし彼らにはアリバイがあった。そして時は流れて被害者の息子と被害者が懇意にしていた女性の娘たちは成長する。2人に翻弄される人々。時効が切れた事件を追い掛ける男。白夜に生きる2人を描いた長編サスペンス。


・おススメポイント

 圧倒的ボリューム

文庫本で約850ページに渡るこの長編サスペンスでは前述した2人の成長を余すことなく描きながら、発端となった事件の解決という最大のカタルシスに向かって、散りばめた伏線を回収していく王道と言えば王道らしい展開になっています。この場面を何故描いたのだろう。そんな風に読み進めていくと驚きがあると思います(私は驚きました)


 ちょっぴり苦めなストーリー

この「小説れびゅー的な」を始めるより前に読んだ『さまよう刃』という作品を読み終えた時に私はとんでもなく鬱になりましたが、この『白夜行』はちょっぴりスッキリしないぐらいの後味でした。人間の本質を突き過ぎたせいで作品の登場人物に同情してしまい、酷く感情を揺さぶられるようなきらいが東野圭吾の作品にはあります。この作品も例になくその1つです。是非ご賞味あれ。


次回は優しい作品を紹介出来ればと思います!

それでは!