豪州帰りの「えりー」日記

メルボルンでの学生ワーホリ経験をシニカルに慎ましくご紹介。その経験を映像業界で活かしたり殺したりな趣味ブログ。

小説れびゅー的な(14)/森見登美彦『宵山万華鏡』

2020-09-23 11:11:00 | 小説れびゅー

最近は翻訳ミステリばかり読んでいるので皆さんに紹介出来そうな小説があまり無くて更新が減ってしまっています。いつか個人的なアガサクリスティランキングでも記事に出来ればなあと思います(ちなみにポワロとマープルとその他の3部門でやります)


そんな今回は森見登美彦『宵山万華鏡』になります。最近初めて見つけて即購入した小説なので、そんなにメジャーな作品ではないのでしょうかね。しかし森見ワールド全開の作品でした!


・「金魚をね、すくってるんだけどね」「なんで?」「鍛えようと思って」(p.48より引用)


祇園祭宵山の1日を舞台に様々な人たちが出来事に巻き込まれたり巻き込んだりとファンタジーでホラーでコメディでミステリなエンターテインメント的小説。


万華鏡を覗いてくるくる回した時のように景色が異なるストーリーが章ごとに展開されます。そうは言っても同じ万華鏡の中ですから全てのストーリーは宵山のある1日で繋がっているんです。そんな技巧を魅せながら独特なキャラクターの台詞や大胆な行動、そして怒涛のヘンテコな世界観、まさにエンターテインメント!と言わざるを得ません。


ヘンテコな作品ですから説明するのが難しいので是非読んでみて下さい。『夜は短し歩けよ乙女』『四畳半神話大全』『有頂天家族』辺りがツボな方ならきっと楽しめると思います!

それでは!


小説れびゅー(13)/恩田陸『黒と茶の幻想』

2020-09-12 23:11:00 | 小説れびゅー

夜が涼しくなりまして遂に窓を閉めて寝るようになりました。夏らしいこと(夏らしいことって何だ)を殆どしないまま夏がいよいよ終わります。そして夏休みの課題を先延ばしたままにするようにブログの更新も先延ばしにしたままになるのでした。(お久しぶりです


今回は恩田陸『茶と黒の幻想』になります。上下800ページ程のミステリで、4人の登場人物が4章それぞれで語り部になって展開される「過去」をテーマにした作品です。


・「それでは、皆様、これより我々の『非日常の旅』を始めたいと思いまする。あ、これ、口上ね。やっぱりこれがないと気分が出ない」(上巻p.34より引用)


大学時代の同級生たちが集まり離島で非日常を過ごす。旅の発起人はそんな非日常を非日常たらしめるために、「過去」にまつわる謎をそれぞれ出し合ってみんなで解決しながら過ごそうと宣言する。その「過去」には忘れたくても忘れられない同級生の存在があって


前述した通り4人の登場人物がそれぞれ語り部となって全4章のストーリーを展開します。それぞれの目線や記憶からそれぞれの仕草や過去を掘り返したり紐解いたりするのは読んでいる方までもくすぐったい気持ちになります。


また「過去」にまつわる謎解きに関してはそれぞれの個性から生まれるであろう推理が良く出来ていて、陳腐な表現ですが親しい友人と飲み会で語り合うような打ち解けていて許されている空気感が伝わってきます。要するに何でも言える関係だからこそというようなテンポで会話が繰り広げられます。


旅のテーマになっている通り「非日常」をこれでもかと感じさせてくれるような作品です。

それでは!