起業会計

公認会計士による仙台TEOの起業支援活動、会計トピック、監査トピックの解説

新株予約権は負債か資本か

2005-03-10 00:45:24 | 会計
日本でもストックオプションの会計処理について公開草案が公表され、国際基準と同等の基準が整備されることになりました。


国際会計基準審議会、およびアメリカの財務会計基準審議会は、【ストックオプションに関する会計基準】を以下のように公表しています。

2004年 2月  国際財務報告基準第2号(IFRS 2)「株式報酬」
2004年12月  財務会計基準第123号(FAS 123R)「株式報酬」


日本では、企業会計基準公開草案第3号「ストック・オプション等に関する会計基準(案)」が公表されましたが、新株予約権の貸方項目の取扱は、IFRS 2ともFAS 123Rとも異なっています。

日本の公開草案では、新株予約権の貸方項目は【負債の部と資本の部の中間の独立項目】とするとしています。
一方、IFRS 2もFAS 123Rもともに新株予約権は【資本】(持分)に計上するとするとしています。

それでは、新株予約権は、負債なのでしょうか。資本なのでしょうか。
それとも負債でも資本でもないのでしょうか?


新株予約権を発行すると、その新株予約権は①行使されるか②失効するかのどちらかになります。
①行使されると、資本剰余金が増加します。
②失効すると、現行基準ではP/L(戻入益)を通じて利益剰余金が増加します。
いずれの場合にも純資産の増加につながります。

いずれの場合にも剰余金の増加につながるわけですから、新株予約権を【発行した段階】で純資産が増加しているとは考えられないのでしょうか?


新株予約権を負債または中間項目に計上した場合、いずれの場合も純資産の増加は、新株予約権を【発行した場合】ではなく、【権利行使時】または【権利失効時】になります。
発行時には、資産と負債(または中間項目)が増加し、純資産の増加にならないからです。
法形式的には、【権利行使時】または【権利失効時】に純資産の増加といえるのかもしれませんが、
経済的実態に着目して考えると、新株予約権の発行時に純資産は増加しているのではないでしょうか?


また、新株予約権は株主からの払込ではないので資本・資本剰余金項目とするのは、望ましくないという意見もあります。
しかし、減資差益(引退株主へ出資を返還しなかった部分)・・・資本準備金減少差益は、資本剰余金としているわけですから、現行上も株主からの払込のみが資本剰余金に計上されているわけではありません。
資本剰余金は、株主からの払込金のみとするならば、資本準備金減少差益は利益剰余金に振替えるべきです。


新株式払込金および申込期日後の新株式申込証拠金も株主からの払込ではありませんが(株主予定者からの払込金)、資本・資本剰余金に準じる扱いになっています。

なお、申込期日前の新株式申込証拠金は資本ではなく流動負債に計上されますが、新株式の割当がなかった場合には、申込証拠金を返還しなければなりません。
しかし、新株予約権は払込金を返還する必要がない点で申込証拠金とは異なります。

資本の部について、法形式を重視すると、新株予約権は資本の部に計上できないことになります。
しかし、そもそも会計は、法形式ではなく経済実態を重視することとされているわけですから、新株予約権は資本の部に計上するべきではないでしょうか?

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