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起業会計

公認会計士による仙台TEOの起業支援活動、会計トピック、監査トピックの解説

実査

2005-04-04 23:35:20 | 監査
4月の初めは実査の季節です。

久しぶりに一通り、一人で実査をしに行きました。
実査の対象は、
・現金
・預金通帳
・有価証券
・ゴルフ会員権
・手形帳
・小切手帳
・切手、はがき
・収入印紙
です。

ちなみに、預金通帳の実査は「必要ない」という人もいますが、そんなことはないと私は思っています。

<ヒント>
そもそも実査は「資産の実在性」という観点(監査要点とかアサーションとかいったりもします)から実施するんですが、実は「資産の網羅性」もそれなりに検証することができます。

つまり、金庫に入っている預金通帳を持ってきてもらうと、時々帳簿に載っていない通帳が出てくることがあります。
「会社のクラブ活動の通帳なんですよ」とかいう場合は、あまり問題ないんですが、ここから架空の得意先のトンネル会社とか見つかることもあるので要注意です。

あと、ゴルフ会員権の実査をするときには、ゴルフ会員権に記載されている内容をよく見ることが大事です。
よく見ると、「入会時の預かり金は5年とか10年後に返還する」と記載されているものが多いのですが、入会年月日をみるともう返還されているはずのゴルフ会員権(預託金)が時々あります。
「資産の評価」の妥当性が気になるところです。
必ず担当者に突っ込まなければならないところです。

「あれ、このゴルフ会員権ってもう返還期限が来てますけど、お金返してもらえました?」
「・・・いやーそれが、ちょっと待ってくれっていうんですよ。資金繰りが苦しいらしくて、順番待ちみたいです・・・。」
「資金繰り?」「順番待ち?」「返す気はあるのか?」

果たして、預託金は返してもらえるのでしょうか?
そして、ゴルフ会員権相場の行方は?(・・・つづく)


手形帳・小切手帳の実査も重要な手続です。
使用済みの控え(通称:手形のミミ・小切手のミミ)の記載事項を確認して、その後の支払内容とチェックしたりします。
いわゆる「カイティング」を発見するための手続です。

そういえば、有価証券の実査をする時には、後のために時価のチェックもしておきます。
昔は日経新聞を持っていっていたものですが、今は、Yahoo! Finance の時系列データでチェックです。(時代も変わったなぁ)

サンプリングによる試査 その2

2005-03-26 22:10:33 | 監査
前回の続きです。


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売掛金の実在性を検証したい(架空計上されている売掛金がないか検証したい)場合を想定します。
得意先が10,000件、全部で100億円の金額が計上されているとします。
売掛金の実在性を検証するため、サンプルをして確認状を発送することとします。
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今回は、サンプリングによる試査で何を行おうとしているかについて、解説してみようと思います。

前回、これは、売掛金全体に、

①「重要性の基準値を超える間違いがある」
②「思ったとおりの少額の間違いしかない」

のどちらが正しいかを検証することにあると書きました。
このことを理解するためには、統計について若干理解しておく必要があります。

簡単な事例を紹介してみようと思います。
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ネジ工場で、ネジの出荷をしているとします。
1箱に1万個入れてあるとします。
1級品は1万個につき10個、2級品は1万個につき500個傷がついているとします(使用上の問題はないものとします)。
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通常は1級品と2級品を区別するために箱にラベルを貼ってあるのですが、ラベルの貼っていない箱があったとします。
この箱が1級品か2級品か見分けるためにサンプリングで調査をしようと思います。
さて、何個サンプルすればよいでしょうか?

100個サンプルした場合、1級品なら0~1個、2級品なら5個ぐらい傷物があるはずです。
つまり、1級品と2級品はサンプリングで区別することは可能です。


これを監査に当てはめてみると、どうなるでしょうか?
1級品は、②「少額の間違い」
2級品は、①「重要性の基準値を超える間違い」
に例えることができます。

実は統計学的には、「1級品か2級品かを見分ける」よりも、「2級品でない」ことを見分ける方がサンプル数が少なくてすみます。
したがって、2級品でないことを見分けることとします。

監査的には、
①「重要性の基準値を超える間違い」のことを許容誤謬額(率)、
②「思ったとおりの少額の間違い」のことを予想誤謬額(率)といいます。


つまり、サンプリングの目的は、許容誤謬額を超える間違いがあるかどうかを検証することにあります。
その基本となる考え方は、売掛金に発生している間違いは「許容誤謬額」なのか「予想誤謬額」なのかを見分けること、
正確には、「許容誤謬額」であるのかないのかを見分けることにあります。

サンプリングによる試査 その1

2005-03-26 01:41:37 | 監査
公認会計士が行っている監査は、原則として試査を行っています。
試査というのは、母集団からサンプルを抽出して、そのサンプルの検証を行い、母集団の性質を推定する監査の手法のことです。

つまり、売掛金の実在性を検証したい(架空計上されている売掛金がないか検証したい)場合を想定します。
たとえば、得意先が10,000件、全部で100億円の金額が計上されていた場合、どのような手続きをとったらいいでしょうか?

売掛金の実在性を検証する際には、通常は確認という手続きを行います。
「確認」とは、確認状という文書を得意先に発送し、計上金額があっているかどうか記載してもらう手続きです。
ただし、すべての得意先に確認状を発送することは、コストもかかりますし、手間もかかります。(10,000件も送るのは大変です!)
そこで、試査の出番になります。


実は、監査というものには、「重要性」という概念があります。
つまり、監査は、「1円でも間違いがあってはいけない」とか「すべての間違いを発見する」ということは前提にしていません。
監査は、「投資家の判断を誤らせない程度の金額に誤りがあっても問題なし」と判断しています。また、「投資家の判断を誤らせない程度の金額を発見すること」を前提にしていません。
つまりは、「投資家の判断を誤らせる間違いはありません」ということを保証しているに過ぎません。

この「投資家の判断を誤らせない程度の金額」のことを「重要性の基準値」といいます。


先ほどの売掛金の例での「重要性の基準値」を10億円としますと、売掛金100億円のうち、5億円は間違ってもいいことになります。
つまりは、「売掛金の実在性」という観点からは、95億円計上されていれば問題ないことになります。
(例えは、売上が5,000億円ある会社にとって、5億円翌期に返品されたとしても大きな間違いとはいえません。)

このように、監査では、「重要性」とう概念があるので、すべての項目を検証するのではなく、その一部を検証することで、監査の目的が達成できるのです。


もう一つ、サンプリングによる試査を行うにあたって、理解しなければならないことがあります。
それは、サンプリングによる試査で何を行おうとしているかです。

実は、これは、売掛金全体に、①「重要性の基準値を超える間違いがある」のか、②「思ったとおりの少額の間違いしかない」のどちらが正しいかを検証することにあります。(*)

簡単にいえば、「サンプリングによる試査は、重要性の基準値を超える間違いがないことを検証する手続」ということになります。


この続きは次回に。。。  特に(*)を中心に。。。。

棚卸立会

2005-02-28 23:19:16 | 監査
会計士にとって期末は、棚卸の立会の季節です。

棚卸立会は、監査手続の中でも重要な監査手続のひとつです。
なぜなら、棚卸立会によって、現物の存在が確かめられる強力な監査手続であり、証拠力の高い監査証拠を入手することが可能だからです。

棚卸に行くと、会社のいろいろな面が見えてきます。
会社の倉庫・工場に往査するわけですから、会議室で書類とにらめっこするのと違い、現場の生の情報が見えてきます(一昔の台詞では、「事件は現場で起きている」というまさにそれです)。

何を作っている会社なのか?
どうやって作っているのか?
製品を作るのにどれだけの設備が必要なのか?
倉庫・工場は整理整頓されているか?
ゴミ箱に捨てられている仕損品はどれぐらいあるか?
工場の機械はどれぐらい稼動しているのか?
棚卸の方法は、どれぐらい厳密か?


棚卸立会は、ただ在庫をテストカウントするだけではなく、会社のいろいろな面を見ることができます。
また、棚卸の立会に往査すると、たいてい工場見学をさせてもらえます。

監査の仕事をするようになって、数多くの工場見学をさせてもらいました。
小学校の頃を思い出します。
工場見学をさせてもらうと、ターミネーターの溶鉱炉を思い出すことがあります。
工場って大体そんな感じです(そんなことないか?)。

小売業(量販店とかデパートとか)の棚卸はちょっと大変です。
大体夜遅くなるし、在庫の数も多いからです。
冷凍庫では、凍えてペンがもてなくなります。
また、日頃立ちっぱなしということはあまりないので、かなり足にきます。
会社の人(店員さん)は大変だなと思います。

今日は、2月決算の会社の棚卸の立会に行きましたが、3月にもまた行きます。
そういえば、1月末にも行ってきました。
そのたびに、工場見学をさせてもらっています(結構好きなんです)。
もちろん、工場見学をしてもお土産は付いていません。

公認会計士の監査は、誰がチェックするのか?

2005-02-20 18:47:32 | 監査
「公認会計士・監査審査会が、日本公認会計士協会に対し、協会による会計士の不正チェックが甘いとして改善を求めた。」
という旨の記事が2/10の日経新聞にありました。

ちょっと誤解している記事かな?(読んだ関係者は、ん?と思われたのではないでしょうか)と思ったのですが、Webでは、無難な記事にまとまっていました。


公認会計士の監査がきちんと行われたかどうかは、「公認会計士協会の品質管理レビュー」でチェックします。
そのレビューが適切に行われたかどうかは「公認会計士・監査審査会」がチェックするという体制になっています。

今回の記事は、「公認会計士協会の品質管理レビュー」が甘いんじゃないですか?という趣旨でしたが(Webではそこまで行っていませんが)、レビューを受ける側からすれば、協会のレビューは非常に厳しいという認識を持っています。
このレビューがあるので(なくても当然ですが)、いい加減な監査はできないなというプレッシャーが常にあります。

そういう意味では、「公認会計士協会の品質管理レビュー」はかなりの成果を上げているといえます。
一定の成果が上がっているということは、「公認会計士・監査審査会」の提言にも書かれています。


ただ、いくつか問題点が指摘されています。主には、次のとおりです。
 ・レビュアーの数が少ない
 ・レビュー結果を外部公表していない
 ・リスクの高い会社の監査に対するレビューが少ない
 ・監査人が入手した監査証拠が妥当かどうかの判断を行っていない

これに対して、公認会計士協会もこのように対応策を明示しています。

協会のレビューもこれからは、監査法人だけではなく、クライアントまで行く時代になって来るんでしょうか?
監査をする方は重い責任をどんどん負わされて監査をする人がいなくなってしまわないか、ちょっと心配です。

・・・公認会計士も大変です。
監査の世界も今はどんどん変わっていっています。古きよき時代は二度とやってこないでしょう。
変化を楽しめる人でないと、この世界で生きていくのは大変です。








ちなみに、上記に記載した一番最後の問題点は、審査会の意見を意訳したものです。
原文は、以下のとおりです。
よく読まないと、言っている意味がわからないですね。

「監査人による監査会計慣行の適用の判断及びその判断の拠り所となった監査証拠の合理性について、品質管理レビューにおいて、監査証拠の収集状況、収集された監査証拠と監査人が当該証拠からどのようなプロセスを経て意見、判断、評価等を導き出したかを確認し、監査会計規範に対する準拠性に係る判断を行うこと等が必要である。」

「監査人による監査会計慣行の適用の判断(会計事象の実質判断を含む)及びその判断の拠り所となった監査証拠の合理性について、レビューアーが監査証拠の収集状況、収集された監査証拠と監査人が当該証拠からどのようなプロセスを経て意見、判断、評価等を導き出したかを確認すること。そしてこれら監査証拠と結論が論理的に合理的な範囲内にあるか否か、いいかえれば、当該証拠から論理的に結論が導き出される高い蓋然性があるか否かを検討し、監査会計規範に対する準拠性に係る判
断を行うことが必要である。」

カンバン方式

2005-02-05 13:40:23 | 監査
 先日、ある部品を作っている会社に、棚卸の立会に行った時のことです。

 在庫が減ってきているものの、1ヶ月ぐらいの水準で減っていなかったので、「在庫の水準は1ヶ月ぐらいを目標にしているのですか?」と、お伺いしたら、こんな答えが返ってきました。
 「トヨタのように、自動車を大量に作っている会社なら、需要も読めて計画生産ができるんですけど、最近はどこも入札をしているから、計画生産が難しいんですよね。」といっていました。

 部品も入札をしているのかなと思ったら、そうではないようです。

 「当社の部品を使って作っている製品が入札で発注が決まるので、落札すると短納期の発注があるんです。」と、おっしゃっていました。
 つまり、落札した製品の納期も短いらしいのですが、その製品を作るための部品の納期はさらに短くなるらしいのです。
 だから、入札制度が増えれば増えるほど、部品メーカーは需要が読めなくなって、計画生産が難しくなり、在庫を持っておく必要があるというのです。

 部品メーカーにとっては、

 入札制度の増加 → → 在庫の増加

 

・・・勉強になりました。

二項業務

2005-01-28 23:43:33 | 監査
 二項業務とは、いわゆるコンサルティング業務やアドバイザリー業務のことです。
 なぜ二項業務と言うかというと、公認会計士法第2条第2項で規定されている業務だからです。

 二項業務があるとすれば、一項業務も当然あります。
 一項業務は、監査業務のことです。

 公認会計士法が改正され、監査を行っているクライアントに対して、コンサルティング業務を行うことが大きく制限されました。
 つまり、一項業務を行っているクライアントに対して二項業務を行うことは大幅に制限されるようになってしまいました。

 具体的には、公認会計士制度委員会研究資料第1号「監査人の独立性について」を参考にしてください。


 なかなか、厳しい時代になりました。


 ちなみに公認会計士法第2条第2項には、こんなことが書いてあります。

 公認会計士は、前項に規定する業務の外、公認会計士の名称を用いて、他人の求めに応じ報酬を得て、財務書類の調製をし、財務に関する調査若しくは立案をし、又は財務に関する相談に応ずることを業とすることができる。但し、他の法律においてその業務を行うことが制限されている事項については、この限りでない。

買掛金の監査

2004-12-21 22:53:00 | 監査
 昨日に引続き、弘前にいます。弘前は今朝から雪です。結構降ってきたので、道路がアイスバーンになっています。今日乗ったタクシーは雪のせいでズルズル滑っていました。ちょっと滑りすぎで、こっちは怖い思いをしていましたが、タクシーの運ちゃんは平気そうでした。

 今日は、唐突ですが監査について書いてみようと思います。
 買掛金の監査ってどうしたら良いでしょうか?仕入先に残高確認状を発送して、相手先の債権の認識に問題となる差異が生じてないか検討するという手もあるかと思います。分析的手続(増減分析・回転期間分析・月次推移分析等)をするというのも必須でしょう。
 では、買掛金の網羅性で有効な手続にはどんな手続があるでしょうか?一般的には負債の網羅性の監査って難しいと言われています。先ほどの手続も有効ですが、もっといい方法があります。(もちろん魔法ではありませんが)
 それは、発注残リストを利用することです(利用できなければもちろん有効な方法ではありません)。つまり、発注残リストを入手して、納品予定日が期末日前になっているか確認するという方法です。
 納品予定日が過ぎても納品されていないものには、①本当に納品されていない、②納品はされたが納品入力(仕入計上)されていない、③納品されたが仕入れたことにしたくない、という3パターンがあると考えられます。
 ①はもちろん問題ありません。納品書を入手して納品日がいつか確かめれば監査手続は(問題なしということで)終了です。監査は通常期末日後に行われるので、監査前に納品されている場合が多いのでこの方法が使えます。
 ②の場合には実際の納品日がいつか確かめた段階で、納品計上(仕入計上)漏れだということが分かりますので、金額的重要性によっては修正仕訳を提案して会社がこれにしたがってくれれば監査手続は終了です。
 ③の場合にはちょっと厄介です。ただ、通常は発注残リストを改ざんすることや納品書を改ざんすることは、会社にとってかなり厄介(色々と辻褄が合わなくなることが出てくる)なので、あまりありえません。その可能性があるとすれば、もっと大きな問題が潜んでいるはずです。よって、②と同様の手続を実施すれば、通常はエラーを発見できると考えられます。

 実は、監査は会社の業務フローを理解してどんな手続を行うのが効果的か考えることが重要です。上記の手続は多くの会社では有効ですが、有効でない会社も当然あるでしょう。それは会社によって、業務フローが異なるからです(それ以外の要素も当然あります)。会社の業務フローを眺めていると、有効な手続が浮かんでくると思いますので、監査は会社の業務内容・業務フローをよく知る必要があるのです。残念ながら数字とにらめっこしても監査が出来るわけでは無いのです。

 また気が向いたら監査について書こうと思います。
 ちょっと大雑把な書き方をしてますが、その辺はあまり気にしないで読んでいただけるとありがたいです。