明日のカープ

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育成とは ファーム勝利から学べ~木下富雄

2012-01-20 12:32:20 | 頑張っとるけ 応援してぇの カープ!
 去年の暮れから毎週日曜日の中国新聞恒例となった「カープV逸20年・私の提言」。1回目の古葉監督のフロントや監督には耳の痛い内容でスタートしてから今週で6回目。その6回目は木下富雄氏。これまでの5回も、濃い内容のものだったが特に今回の木下氏の提言はカープが弱体化している原因がよくわかる内容だった。

~以下、全文~

▽隣は敵 厳しい競争必要

 ファームで勝利と育成を両立するのは確かに難しいですよ。2001年に二軍監督を引き受けた時、球団からは「全部負けてもいいから1年間で1人を1軍に上げてくれ」と言われた。

 ただね、僕はカープが強い時期に選手時代を過ごしたから「勝負は勝たなければいけない」との気持ちが強かった。由宇球場での練習も緊張感を感じなかった、これではいけないと思った。勝たないと覚えられないこともありますから。

 03年は1番天谷、3番末永、4番栗原と若手を固定し、育成も重視しながら前期の優勝争いをしていた。そして、残り10試合になった時にスタッフミーティングで「優勝争いの重圧の中でプレーしてこそ、1軍で通用する。この10試合は勝ちにいく野球をやろう」という話をした。

 球団の担当者には「それは困る。球団の育成方針と違う」と反対されました。でも、僕のクビをかけてでも選手に教える時は今しかないと思った。だから全員を集めて「今後は起用方針や作戦が変わる。勝ちに行くぞ」と伝えたんです。

 一つ勝つごとに優勝へ近づくでしょう。そしたら何も言わなくても選手が一生懸命練習をし始めた。1点をどう取るか、どう防ぐかは僕もコーチ陣も考えるんだけど、選手も一生懸命考える。一体感が生まれて、いいムードも生まれてね。そのまま、ほとんど負けずに優勝できた。

 自分の挙げた1打点でチームが勝てば、自信が何倍にも増す。投手も同じですよ。だから負けに慣れちゃあダメ。相手もファームなんだから。カープの黄金期はファームも強かったんです。

 最近は選手同士の仲がすごく良いでしょ。これも伸び悩み、勝てない一因かなと思う。2軍監督時代によく言っていた。「ベンチでお前の隣に座っているやつは敵だ」ってね。人より練習して、成績を残し、初めて1軍入りが近づく。

 僕の現役時代なんかは、皆がバラバラだったし、だから強かったのかもしれない。レギュラー争いの競争じゃなく、レギュラー同士の競争なんですよ。山本浩二さんと衣笠祥雄さんを筆頭にね。野村謙二郎や前田智徳、金本知憲、緒方孝市といった世代も、レベルの高い競争があった。ファームでも、こういう争いをさせなくちゃいけない。

 ファームの指導者に一番必要なのは、情熱でしょう。原石を何としても育てるんだという思い。当時は2軍スタッフが交代で大野寮に泊まり込んで、夜間練習に付き合っていた。苦労を共にした選手が1軍で初めて試合に出たり、ヒットを打ったりした時には、必ず電話がかかってくる。ありがとうございましたと。あのうれしさは忘れられない。

~以上~

   
 これまで中国新聞が球団批判と思われるような内容を掲載することはあまりなかったが、随分と思い切った内容が過去5回を含めて掲載されている。

 今後も随時紹介していきたいと思う。