ちゅう年マンデーフライデー

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速水御舟展を山種美術館まで観にいく

2009年10月19日 | 絵画
 先週、広尾に新たにオープンした山種美術館に行った。オープンを記念した「速水御舟展」を見るためだ。

 恵比寿から駒沢通りを歩いて12,13分だろうか。PAPAS本社のファサードに立つ巨大なダビデ像の巨大なポコチンに見下ろされながらしばし坂を登ると、角の八百屋に「山種美術館はこの先」と段ボールの紙片にマジックで書いた案内看板がぶら下がっている。よっぽど、聞かれるのだ。日本画を中心とした美術館だから客層の中心は中高年。坂を登って、まだなのかという思いで、この八百屋に聞くのだろう。実際、この八百屋のほぼ隣に新しいモダンな佇まいの山種美術館はあった。

 まだ第1作さえ完成していない身で日本画を描いているなどとはいえないのだが、それでも西洋画を見る視点とは異なった日本画の技法に対する興味から、できるだけ巨匠たちの作品に触れたいと思う。だから御舟の絵は新鮮だった。天才と言われ、40歳で亡くなった御舟は、変化しながらもその年代年代で完璧な技法と表現力を発揮しているが、まだ発展途上だった。「一度登った山をおりる勇気」といったそうだが、それだけにもっと生きていれば、日本画の新しい可能性をどのような開拓しただろうかと思わないわけにはいかない。

 琳派風の初期作品、未完の婦女群像もすばらしいが、1920年代のヨーロッパを旅した折に描かれたイタリアの路地裏のカフェだかトラットリアだかの椅子に腰掛けた女性がいる午後(と思われる)の風景を坂道の上から縦の構図で描いたスケッチの、速筆のタッチと着彩された色のすばらしさに驚嘆したのだった。ものすごい速さでその風景を切り取ったのだろう。だが、まるで見るものをイタリアの小都市の路地裏に連れて行ってしまい、そこに吹く風やら漂う匂いまで感じさせてしまうのだった。「京の舞妓」の絵が酷評されて以来、敬遠していた人物画に挑戦するために描いたヌードデッサンの力強さ。炎の中を舞う蛾を描いた「炎舞」の黒、桃の花の蕾の繊細な描き方。墨と白緑で描いた桔梗など、大作から小品まですべてがすばらしい。速水御舟おそるべし。

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