ちゅう年マンデーフライデー

ライク・ア・ローリングストーンなブログマガジン「マンフラ」

バット・ビューティフルはバガボンのパパの口癖?

2007年05月31日 | 音楽
「バット・ビューティフル」について、以前、「いろいろあっても、それでも恋はすばらしい」みたいな意味だろうと書いたが、こういう間違いは、よく間抜けなボーカリストがやるんだそうだ。「楽しい恋、悲しい恋、皆さんはどんな恋をしていますか。恋にもいろいろあるけれど、しかし美しい。私の大好きな曲です。聴いてください。バット・ビューティフル」。ね、気持ち悪いでしょ。だから大いに反省しています。大筋、まちがってはいないんだけれど、どっちかというと、「バガボンのパパ」風に、「それでいいのだ」というニュアンスなのだそうだ。「酸いも甘いもあるけれど、それが恋。そんなもんだよ。それでいいのだ」なのだそうです。いや、お恥ずかしい。

「バット・ビューティフル」という曲は、2コーラスで詞も短い。変化に乏しい曲だ。「Love is funny~」という魅力的な出だしが、この曲のポイントになる。モニカ・ルイスの「フールズ・ラッシュ・イン」の一曲目の「バット・ビューティフル」、このアルバムの他の曲に比べ、比較的飾らず歌っているので、この一曲だけ聴いている。このアルバムは、ベツレヘム・レコードのジャケット写真やデザインを手がけていたバート・ゴールドブラットの写真がいい。ジャケ一流、歌二流。はっきり言って歌は好みではない。つくりすぎるからだ。ほら、美空ひばりが、おちゃめな歌のときは、めちゃくちゃ可愛く歌ったり、七色の声をつかうでしょ。ちょっとそんな感じ。過剰だとちょっとひいてしまう。モニカ・ルイスは女優さんなので(ドン・シーゲル監督の「突破口」に出ていたっけ)、歌詞の内容に合わせて演技しているかもしれない。美人シンガーの一人といわれているけれど、同じモニカならモニカ・ベルッチのほうがいいな。はは。

この曲なら、ローズマリー・クルーニーのビング・クロスビーへのトリビュート・アルバム「ロージー・シングズ・ビング」(コンコード盤)の一曲目「バット・ビューティフル」がおすすめ。それにしても、スタン・ゲッツはこんな地味な曲をなんと魅力的な歌にかえてしまうことか。


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第3巻でがぜん面白みが増した『チェーザレ』

2007年05月25日 | 
『チェーザレ』第3巻購入。新宿のジュンク堂にたくさんありました。この本屋に行くと時間を忘れる。本がたくさんある、見やすい、探しやすい、意外な本に出合える、寛げる。だから、ついつい長居してしまう。

 で、第3巻では教皇の座をねらう各派閥の対立の構図が次第に露呈してきて、大学内でのその代理戦争が激しくなる。メディチ家の密偵としてマキャヴェッリが登場、チェーザレと遭遇する。一方、チェーザレに憧れに似た敬愛の念を抱くアンジェロの裏で、チェーザレの冷酷な顔が描かれ、側近ミゲルがアンジェロに「信頼しすぎると失望する」と警告の言葉を発するところで終わる。1、2巻に比べ、がぜん緊張感が増してきたぞ!

「ボルジア家の毒薬」(クリスチャン・メッツ監督)という映画があったように、ボルジア家といえば毒殺だが、最近、至るところに毒をばらまいている国がある。パナマでC国製の練り歯磨きから致死量の毒物ジエチレングリコールが検出、日本ではC国から輸入した土鍋から、鉛やカドミウムが検出されたとのニュース。これは、使ってみなければ分からないので、恐い。ジエチレングリコールは車の不凍液に使われるらしい。独特の甘みがあるので、C国では甘味料に使っていて、同じパナマでは、ジエチレングリコール入りの咳止め薬を飲んで100人が死亡したという。いまや日本の国力を低下させるには、軍事力は不要かも。技術や知的財産の盗用、コピー商品の大量生産による経済的打撃、黄砂による汚染の越境、医療廃棄物などの危険な漂流物、汚染された農産物、海産物などの食品、危険なコピー医薬品の流通に、さらに食器、日用品までとくれば、10年後に健康な日本人はいなくなる。

 表示のあるものなら、買わなければいいが、とくに恐いのは外食産業で扱っている素材。以前冷凍ホウレンソウが問題になったけれど、これは、もう消費者がチェック不可能だ。信頼できるところで飲食するしかあるまいよ。安全な食品を扱う団体から食品を購入していても、たとえば「はちみつ」の原産国が「中国」となっていると、ちょっと不安だ。
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血のボルジア家をどう描くか楽しみな『チェーザレ』

2007年05月23日 | 
 あまりの展開の遅さに『バガボンド』をあきらめて以来、単行本で読む漫画は『20世紀少年』『PLUTO』に山田芳裕の『へうげもの』くらいだった。今度、惣領冬実の『チェーザレ』が加わった。『チェーザレ』は、古田織部を主人公にした『へうげもの』と、最近よく一緒に論じられる歴史漫画だが、『へうげもの』が、奇想、荒唐無稽をコンセプトにしているのに対し、(何しろ、信長暗殺の犯人は秀吉だし、信長の警備隊長弥助は黒人で、エレクトリック・マイルスそっくりな風貌なのだ)、『チェーザレ』は、美少年モノの意匠を凝らしながら、しっかりとした時代考証に支えられ、人物、衣装、建物、風景、調度に至るまで、ルネサンスのフィレンツェ、ピサ、ローマなどをリアルに再現しているところが、見もの。ミケランジェロの天井画が描かれる前のシスティーナ礼拝堂が描かれる懲りようだ。

 なんでも、新鋭ダンテ学者・原基晶が監修し、世界的に最も定評のある「サチェルドーテ版チェーザレ・ボルジア伝」のイタリア語原書を翻訳した上で、書かれているらしいのだ。主人公は、メディチ家に縁のある聡明で善良だが世間知らずな少年アンジェロで、そのかかわりの中でチェーザレ・ボルジアが語られる。まだ、2巻しか読んでいないが(3巻がなかなか手に入らない)、今後が楽しみ。ただ、壮大なドラマとなることが予測されるだけに、完結までには何年かかるのだろうとも思うが、青春時代だけで終わらせてほしくないと願うばかりだ。なんせ、題材がボルジア家なのだから。

 ボルジア家の話をはじめて知ったのは高校のとき。桃源社刊行の澁澤龍彦著作集に収められた『毒薬の手帖』所収でチェーザレ(チェザーレと表記されているが)を論じた「ボルジア家の天才」、そして『世界悪女物語』所収の「ルクレチア・ボルジア」。ここでは、チェーザレはマキャヴェリ『君主論』のモデルにして、敵を次々と毒殺する独裁者、ルクレチアは淫婦として描かれるのだが、その話の面白さに、すっかりボルジア家ファンになってしまったものだ。もし犯罪を犯した高校生の書棚にこんな本があったら、猟奇的な嗜好があったなどと分析されかねない危険な臭いを発散させていたのが、澁澤の本だった。チェーザレにしても、ルクレチアにしてもこれまで語られてきたほど悪人ではないなどといわれたりもするが、惣領冬実の『チェーザレ』では、このあたりをどう扱っていくのか、とても楽しみだ。

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雨の日はジャームッシュと「サマ-タイム」

2007年05月22日 | 映画
 雨の土曜日。寝起きに前の晩から読みかけていた本を読了。ジム・トンプスン『残酷な夜』。朝一番にはいささかハード。夜寝る前に『荒涼の町』を一気に。音楽で言えば、1日中オーネット・コールマンでも聴いていた感じ。トンプスン2連発だっただけに、翌日読んだ佐藤多佳子『サマータイム』は、ミントティーかペリエのような清涼感。「本屋大賞」作家のデビュー作。「サマータイム」「セプテンバー・イン・ザ・レイン」というジャズの名曲をモチーフに、表題作他4篇で四季の物語になっている。うまいなー。

 しばし顔を出したお日様に感謝しつつ洗濯物を干し、録りためた映画を観る。ジム・ジャームッシュ監督『ブロークン・フラワーズ』。昔の恋人めぐりツアー。俳諧的な洒脱と簡潔さ。老いとかこれからの人生なんてことを考えながらも、ま、気楽にいこうよと思わず肩の力が抜ける。こんな気持ちにさせてくれる映画作家はジャームッシュくらいだ。

 WOWWOWで『羊たちの沈黙』『Vフォー・ヴェンデッタ』。『羊たち~』では、レクター博士が檻の中でグレン・グールドの「ゴールドベルク」を聴いていたっけ。静かな狂気。『V』では、ジュークボックスからジュリー・ロンドンの「クライ・ミー・ア・リヴァー」が流れてくる。なぜ、この曲なのかは分からないが、選曲は悪くない。今週の土曜も予報では雨。さて、どうしよう。

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先生といっても、あのセンセイではありません。

2007年05月18日 | 
 ヴィム・ヴェンダース監督「東京画」で、インタビューを受けた厚田雄春カメラマンが、小津監督の思い出を語りながら、感極まって「もう勘弁してください」と涙ぐむシーンは感動的である。原節子のいない小津映画はあっても、厚田雄春と笠智衆のいない小津映画は考えられない(もちろんそれは存在するのだけれど)。笠智衆著「小津安二郎先生の思い出」(朝日文庫)には、厚田カメラマンと同様、小津監督に連れ添ってきた笠さんならではのエピソードが、かなり補足され、編集されているとはいえ、独特の語り口を生かした文体で訥々と語られ、一気に読了してしまう。

「東京物語」で、老夫婦が熱海の海岸の防波堤に腰掛けているシーン、笠智衆は背中を丸めて年寄りらしく見せるために、座布団を背中に入れたのだという。なるほど、そのシーンの写真を観ると、そんな感じがする。笠さん自身の小津映画ベスト1も「東京物語」なのだとか。監督ではなく先生と呼ぶ、純心とでも言えるような敬愛の念にあふれたこの本は、読み手の心にも静謐をもたらしてくれるのだった。
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トミフラの「レッツ」がすばらしい。

2007年05月17日 | 音楽
 日曜日に大学時代のOB会があった。ビッグバンドジャズのクラブで、創部40周年というわけ。すでに、僕らは黎明期の世代とあって、現役の学生とは隔世の感が強かった。学生バンド事情も大分変わっていて、可愛い女子学生が多いこと、他大学のメンバーもいて、演奏技術は高く、より高度な音楽性を追求しているのだった。でも、われらは昔話で大いに盛り上がり、昼から夜まで飲み続けた一日であった。

 クラブができたのは1966年というから、ビートルズ来日の年。学生運動が次第にエスカレートしていくころ。1967年にはコルトレーンが亡くなる一方で、グループサウンズ・ブーム、新宿にヒッピーがたむろするという時代であった。

 で、1970年代の演奏会のプログラムを見ると、結構サドメルの曲目をやっていて、以前、このブログでも書いた1968年のサドメル来日の話に関して、雑誌「プレイボーイ」のジャズ特集で、ヒノテルが、そのときサド・ジョーンズからオーデションを受けたと話していた。いずれにしろ、この初来日の音源が残っていれば、聴きたいものだ。

 サドメルの初スタジオ録音版「プレゼンティング」(むしろレーベル名のソリッドステイトのほうが目立っていたアルバム)が、いまだCD化されていないのはなぜなのだろうかと何度も疑問を投げかけたい。「ミーン・ホワット・ユー・セイ」「スリー・イン・ワン」など、名曲、名演ぞろいのアルバムだった。

 で、この2曲に「クワイエチュード」が聴けるのが、トミー・フラナガン・トリオによる「レッツ」。トミフラはサド・ジョーンズのデトロイトの後輩で、サドを敬愛しており、「レッツ」はトミフラが1993年に自費制作したサド・ジョーンズ作品集なのだ。この演奏がすばらしい。「ミーン・ホワット・ユー・セイ」は、ウクライナの怪人ピアニスト・シャフラノフもよかったが、トミフラを聴くと、品格が違うかなと思ってしまう。サドメル・ファンの方はぜひ一聴をおすすめします。
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「お城のエヴァンス」トリオにマイルスを加えたら

2007年05月08日 | 音楽
 昨年11月から関わっていたハードな仕事がようやくフィニッシュした。始まりがあれば、終わりはあることは分かっていても、何はともあれ、無事終了してメデタシだ。おかげで、4キロ痩せましたが、連休ゴロゴロで、リバウンドかな。そんなわけで、ご無沙汰していた皆さん、一杯やりましょう。誘ってください、誘います。

 この間、ほとんど読書らしい読書をしていないが、ジャズはよく聴いていたので、名盤紹介の類のガイドブックなどは、よく読んでいた。データを見るという感じ。こういうのは、何度見ても飽きることはないし、あまり考えなくていいので、同じ本を繰り返し見ていた。「ヴァン・ゲルダー決定版101」は、昔のブルー・ノートを改めて聴くに気にさせてくれた。

 ジャズ関係の本を読んでいて思うのは、ミュージシャンに関してしっかり考証した本が少ないということ。その点、中山康樹著「エヴァンスを聴け」「ビル・エヴァンスについてのいくつかの事柄」は、前者は詳細なエヴァンスのディスコグラフィとして、後者は、抄伝としても面白く、この数カ月でエヴァンスのCDが増えたのは、これらの本のガイドがあったからではある。

 もう一つは、寺島靖国の本「JAZZピアノ名盤500」「辛口!JAZZノート」など。これは、いままであまり聴く気にならなかったミュージシャンの扉を開いてくれた。JAZZのガイドは、どれを見ても、マイルス、コルトレーン、モンク、ロリンズ、エヴァンスと相場は決まっているので、JAZZの視界を広げてくれる水先案内人として役立った。和田誠「いつか聴いた歌」、和田誠・村上春樹「ポートレイト・イン・ジャズ」などの昔の本も引っ張り出してきて読みなおした。

 そんなわけで、最近よく聴いているのは、なんといってもスタン・ゲッツ。この半年がなかったら、僕はスタン・ゲッツをボサ・ノヴァしか聴かずに忘れてしまったかもしれないのだ。トミー・フラナガンもいい。サド・ジョーンズ作品集「レッツ」がすばらしい。ヴォーカルでは、ダイアナ・クラールの初期。あとは、エヴァンス。「お城のビル・エヴァンス」として知られる「モントルー・ジャズ・フェスティヴァルのビル・エヴァンス」を聴くと、このトリオにマイルスを加えて聴きたかったと切に思う。「ワン・フォー・ヘレン」を聴きながら、僕の中ではマイルスのオープン・トランペットが鳴っているのだった。

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