ちゅう年マンデーフライデー

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ヤクザコント集「アウトレイジ」は北野版「仁義なき戦い」だ。

2010年07月07日 | 映画
 北野武監督「アウトレイジ」を、新宿歌舞伎町のミラノ1で観る。この映画を観るならやはり歌舞伎町だろう。ミラノ座は入れ替えなしなのがうれしい。早めに行ってしまったので後半30分をまず観て、その後フルで観た。この結末は、知っていても観る楽しみを阻害はしない。

 タケシ演じる組織下層の組長大友が主役といえば主役だが、むしろ主役のいない群像劇だ。「仁義なき戦い」と「ゴッドファーザー」の抗争劇部分を合わせた、まさに仁義なき現代ヤクザ映画。鈴木慶一の音楽も北野版「仁義なき戦い」というにふさわしいアンダンテ。最後に笑うのは誰かより、誰がどう裏切り、どう殺すかが映画の推進力になっている。

 北野映画の基本はコントだ。「アウトレイジ」はいわばヤクザコント集だ。その連続でストーリーが展開されるが、これだけ抗争と殺しのコント(ヤクザ社会の人間関係そのものがコントという意味で)が続くと、いささか飽きる。しかも、凄惨な殺しのシーンも含め、結構、タケシのお笑いで観たパターンだからだ。それは、ヤクザ社会、あるいは日本の社会の構造がお笑いコントと表裏にあるから成り立つのだが、これもやりたいあれもやりたいうちに盛りだくさんになってしまったのは、芸人ビートたけしのサービス精神なのか。一足先に逃亡する大友の情婦板谷由夏との別れ際、黒のワンピを着ている板谷に「なんだもう葬式の準備か」と自嘲気味におどけてみせるくさいシーン。おまけに北野映画には珍しくセックスシーン(「その男凶暴につき」でシャブ漬けにされた妹が犯されるシーン以来か)まである。そもそも、ボッタクリバーのホステス、高級娼婦、ヤクザの情婦など、女性は出てくるが、これほど女性が映画的な役割をもたない映画も珍しい。

 キャストは悪くない。なかでも大組織の若頭役の三浦友和が、初めての悪役を演じてなかなかいい。現代劇でも時代劇でも主役ができる80年代の2枚目といった顔立ちだが、年を重ねて渋さと凄みが出てきた。エキセントリックなインテリヤクザ役の加瀬亮も秀逸だ。ヤクザの抗争劇とはいっても日本の社会そのものが「アウトレイジ」化している。そんなわけで、俺もあんなふうにクライアントの嫌な課長だの部長をたたきのめしてやりたいというフツーの人たちの鬱屈した情動を吸収する映画ではある。

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