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ちゅう年マンデーフライデー

「奇想の王国・だまし絵」展を観に行ってきた

 「奇想の王国・だまし絵展」を渋谷のBunkamuraミュージアムまで観にいく。アルチンボルドの「ルドルフ2世」の肖像をはじめとした古典から、20世紀のマグリット、ダリ、エッシャー、さらに日本の河鍋暁斎、国芳、広重、そして福田繁雄、本城直季などのコンテンポラリー・アートまで、古今東西のだまし絵、トロンプルイユというジャンルの絵画、写真、造形を一堂に集め、なかなか楽しめる展覧会だった。

 夏休みの土曜日の午後とあって入場券を買うのに10分ほど並んだが、館内はそれほどの混雑ではなかった。若いカップルやグループが多いせいか、立ち止まっておしゃべりに夢中になっている輩が多く、そのせいで進路に渋滞が起きる。こちらは、律儀に付き合っている暇はないので、割り込み、逆周りなど、人を押しのけて鑑賞したのだった。絵の中心に円柱形の鏡を置くと、奇怪な文様がキリストの受難を描いた聖画になるとおもいきや、その反対側に男女のまぐわいの図がたち現れるアナモルフォーズ、16世紀のエアハルト・シェーンの横長の判じ絵は、絵に対して斜め30度くらいの横から覗くと、野原で脱糞している男の姿が見えるというものだった。図録(2,200円)の表紙は、「ルドルフ2世」の果物や花の一部が型抜きになっていて、一見フェミニンな装いだが、表紙を開くとグロテスクな「ルドルフ2世」が現れる趣向。アナモルフォーズ用の銀紙もついていて楽しい。

 アルチンボルドの「ルドルフ2世」は、高校の時、澁澤龍彦の本で知ったと思う。澁澤龍彦や種村季弘らが、こうした「奇想の系譜」を熱心に世に紹介していて、いわゆる幻想文学などとともに、夢想する10代後半の私の知的関心の半分を占拠しており、それらは社会に対して強烈な毒を発していた。その毒を浴びることで、精神の開放感を味わっていたのだった。だから、こうしたテーマで展覧会が開かれ、実物にはお目にかかれないだろうと思っていた絵画に、40年も後に出会えたというのは僥倖といってもよいかもしれないが、これらの絵画も、今日においては「奇想」や「毒」というより「ギャグ」として受容されているのだと、はしゃぐ若者の多い会場で感じた。むしろ、やなぎみわや、超美人の日本画家松井冬子の作品こそ奇想の系譜につらなるにふさわしい作家なのではないかと思ったのだった。

コメント一覧

のりへい
そうですか、だまし絵展よかったですか。
僕は行こうとは思っていなかったのですが、ちょっと行きたくなっちゃいました。
マグリットやダリは何度も見てるし、エッシャーはハウステンボスで見たし、河鍋暁斎は西川口の河鍋暁斎美術館へ行こうと思っているし、国芳、広重は気になるけど、ど、どうしよう。
明日は谷中の全生庵で今年も円朝の幽霊画コレクションを見る予定です。
昼飯は喫茶乱歩゜で。
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