ちゅう年マンデーフライデー

ライク・ア・ローリングストーンなブログマガジン「マンフラ」

名人のDNAはどこへいく

2005年11月25日 | 
 子供の頃、僕にとって粋といえば志ん朝さんだった。田舎だったのでなまで聴くことはできなかったけれど、NHKのバラエティや寄席番組、週刊誌などでみる姿に粋な兄さんを感じて憧れだった。
 おもしろい噺家は三平さんで、毎度同じねたでも笑い転げてしまう。東京オリンピックねたで、ソ連の女子砲丸投げ選手でタマラ・プレスという巨漢選手がいて、三平さんが「なんてったって名前がタマラ・プレスなんですからー」とただ、名前を言っただけなのに腹がよじれるほどおかしかった。
 志ん生の娘にして馬生、志ん朝の姉というすごい一家に生まれ育った美濃部美津子さんの「三人噺」(文春文庫)は、すでに父母弟妹みな他界して、ひとり志ん生のDNAを受け継ぐ人(他にいらっしゃるのか心配)が語った名人一家の人情噺だ。
 語りっぷりが粋。そして、こんな一家に生まれたのだものその人生がおもしろくないわけがない。約200頁、活字が大きいので一気に読んでしまうのがもったいない。とかげを飼い育てて財布を作るといった志ん生に、そんなに大きくなったら財布作る前にお父さんが食われちゃんよと応えると志ん生が怖がって飼うのをやめたとか、おかしい話が満載だが、志ん朝さんの臨終の際に「お父さん、お母さんのとこへまっすぐいくんだよ」と言って送り出した話は泣ける。おかしくって、涙腺もゆるみっぱなしだが、あいつとかあいつとかお前とかにこの本読ませていってやりたい「まっすぐ生きろ」って。
 余談だが、今週の週刊文春のタイトル「髪型も偽造」は笑った。だってほんとにあの姉歯さん「髪型も偽造」なんだもの。
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