ちゅう年マンデーフライデー

ライク・ア・ローリングストーンなブログマガジン「マンフラ」

『グラーグ57』を読み世界の中心で「反帝反スタ」を叫ぶ

2009年09月17日 | 
 トム・ロブ・スミス著『グラーグ57』(新潮文庫・上下2巻)が面白い。一気読みの快作だ。

 前作『チャイルド44』の続編で、1953年のスターリン死後のソ連、フルシチョフのスターリン批判を背景に、スターリン時代に秘密警察に弾圧された人々の復讐が始まるところからスタートする。モスクワから酷寒の強制収容所へ、そして1956年のハンガリー動乱に揺れるブダペストへと舞台は移る。この時代と舞台設定で物語が面白くならないわけがないのだが、主人公のレオは、『チャイルド44』以上に、またしてもこれでもかという過酷な体験に遭遇していく。その困難を一つひとつ克服していくサスペンスもさることながら、その伏線にしっかりと家族とは何かというテーマを置いて、読むものを物語に引き込んでいく。秘密警察時代のレオによって司祭の夫を収容所送りにされた妻が、犯罪者集団を統括するフラエラというモンスターに変身してしまう過程が今ひとつ分からないのだが、スターリン批判とその反動という政治的力学の振幅の強さは、この小説にダイナミックなおもしろさをもたらしている。『44』と『57』を読んでつくづく思うのは、実に月並みだがこんな時代のソ連に生まれなくてよかったということだろうか。でも、地球上には、似たような国が現存していることも確かだ。そしてスターリンの亡霊は、半世紀を超えてもまだ世界の、そして僕たちの意識の底を跳梁跋扈しているのだ。叫べ反帝反スタ!

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