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ライク・ア・ローリングストーンなブログマガジン「マンフラ」

あまり読んでほしくないぼやき

2009年10月23日 | アフター・アワーズ
 毎年この時期になるとビジネス雑誌が大学特集を掲載する。東洋経済は恒例の「本当に強い大学」。大学の格付け特集だ。大学関係者はこういう企画が気になってランキングがよければ、結構PRのネタに使ったりしている。この特集でも取り上げられていたけれど、文部科学省が推進している留学生30万人計画は、民主党政権になってどうなるのだろうか。高等教育に関する政策なり考え方は、まだ表明されていない。

 そもそもこれは2020年までに、現在約12万人の外国人留学生を30万人に増やすというプランだ。同じG8のドイツやフランスの外国人留学生数が約30万人(世界の留学生市場の5%だとか)なので同等のレベルにしようということで設定した目標らしい。実は、この計画には民主党の谷岡参議院議員から異議が唱えられていたと記憶している。趣旨は留学生を増やすことは、人員削減を余儀なくされている大学の教職員の負担をさらに増大させ、ひいては日本人学生へのサービス低下につながるので、闇雲に留学生を増やすのはいかがなものかということだったと思う。

 留学生30万人に関連して文部科学省は、その拠点づくりの支援事業として「グローバル30」大学を認定している。第1期として13大学が採択されたが、例えば私立大学は関東では早慶明、上智、関西が同立の計6校が選ばれただけ。もともと申請した私大は7校しかない。どこの大学も国際化を標榜しているが、いざ留学生の受け入れとなると、実はみな余り積極的ではないことが露呈した。そもそもグローバル30は、国際競争力のある拠点大学づくりが目標なので、過去3年間の修士・博士の学位授与平均件数とか科研費の平均採択件数とか採択基準のハードルが高い。支援を受けた大学は2020年までに在籍学生数の20%を留学生にするのだとか。例えば学生数6万人のN大だと、1万2000人にするということ。これは現在の10倍に増やさなければならない。そんなわけで申請できなかった大学も多かったのではないか。留学生を30万人に増やすとなると、宿泊施設、奨学金、英語で専門教育ができる教員、生活をサポートできる職員など、国際化のためのインフラ整備が不可欠なのだが、果たしてどれだけの大学、とりわけ私立大学が、その整備にカネや人材を投入できるだろうか。

 それより何より、日本の大学は外国人留学生に来てほしいと思っているのだろうか。よく大学関係者から建前として聞かれるのは、少子化で国内の受験生が減少した分は、留学生で補填しようという話だが、日本人学生に支持されない大学が留学生など教育できようか。それを分かっているから、本気で国際化には取り組まない大学が多いのだと思う。日本人学生だってまともに対応できないのだからと嘆く関係者もいる。

 文部科学省は、30大学に採択された大学には年間2~4億円を5年間支援するという。仮に採択されて5年間支援を受けても、その後維持・継続できるか心配というのが多くの大学の本音だろう。こうした文科省の支援事業で施設を建てたはいいが、稼動させるだけで膨大な経費がかかるので、支援期間が過ぎればもはやお荷物になった施設を抱えて困っているという大学は少なくない。

 その一方で、前述の民主党議員ではないが、留学生より日本人学生をもっと支援すべきという妙なナショナリズムの声も多い。留学生は、学費も安く、単位取得も楽で日本人学生よりはるかに優遇されている。反日教育をしている国の留学生をこれ以上増やすな、などの声は意外と多いようだ。今後さらに外国人流学生が増えていけば、日本人との溝はもっと深まることが懸念される。

 日本の大学や日本が外国人にとって魅力ある存在であれば、自ずと日本に留学したいという外国人は増えるだろう。そのための環境や支援体制は整備すべきだ。入国管理法や入学に際しての日本人保証人の問題など、改善できる問題は改善し、留学しやすい環境をつくればいい。とくに自治体や地域の受け入れ態勢や公務員、住民の意識が変わることは不可欠だ。その上で自然と増えていくなら摩擦や衝突は少なかろう。だが、現在の日本人のメンタリティや社会環境を考慮せず、拡大路線をとっていけば、溝を深めるだけだろう。すなわち外国人排斥に必ずつながっていく。

 誰がどんな利権を期待してこのプランを推進しているのかは分からないが、グローバル30に限らず、文部科学省のニンジンぶら下げ政策に、とりわけ私立大学が一喜一憂しているのはいささか滑稽だ。採択事業だけでなく、やれIT技術者が少ないから情報系学部だ、観光立国をめざすから観光系の学部学科だ、パイロットが退職するからパイロット養成だと、省庁や業界が主導し、これにに迎合して進められる学部学科新設などなど。ニーズがあるからが理由なのかもしれないが、その結果数年後に閑古鳥がないている学部はいっぱいある。建学の理念はどうした。官学に対する私学の心意気はどこにいったのか。国の支援には頼らない、独自にカネを集めますという気骨をみせてほしいものだ。
コメント
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