己の罪と犬の遠吠えに慄きながら、花道から揚幕へ消えていった
一世一代、仁左衛門丈与兵衛の千穐楽の幕がおりた。
歌舞伎座場内はあの襲名披露の時のような
割れんばかりの拍手が長く長く続いた。
一瞬場内のライトが消えて、殺されたお吉が倒れたままの
豊島屋油店の場の幕が一度開けられた。
もしかしてカーテンコール?
歌舞伎の伝統を重んじ、役になりきって演じておられる
仁左衛門丈の美学としては、
ご本人が再度舞台に出てこられることはないであろうと観客は思いながらも
いつまでも拍手がなりやまなかった。
大病を克服されての復活公演初日
片岡孝夫としての最後の公演千穐楽
15代目片岡仁左衛門襲名披露初日口上
そして今日の千穐楽
忘れられない感動の思い出が私の中にまた一つ増えた。