ナノテクノロジーニュース

ナノテクノロジーは日進月歩である。その全貌がわかるよう、日々飛びこんでくるニュースを中心に説明する。

エネルギー貯蔵とナノテクノロジー:グラフェン

2011-11-25 | 日記

太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギーの有効利用のためには、発生した電気エネルギーの貯蔵が必要である。電気エネルギーの貯蔵には、リチウムイオン蓄電池(11/1参照)とスーパーキャパシターが有望であろう。このほか燃料電池(10/16,17参照)用の燃料、とくに水素貯蔵もエネルギー貯蔵の重要な手段の一つであろう。

リチウムイオン蓄電池では、充電中は、陰極に送り込まれた電解液の中のリチウムイオンがリチウム原子となり、これによって陰極に電子を蓄える(陽極では陰イオンとの反応によって正孔(9/27参照)が生じている)。放電時にはこの電子が負荷を通って陽極に達して発電する。蓄電池の性能向上とは、充電時の電流増加とリチウムイオン蓄積量の増加である。陰極にグラフェンを用いるとリチウムイオンを吸着するが、それだけでは性能向上につながらない。中国の研究グループは、グラフェンと垂直にカーボンナノファイバーを成長させることに成功した。これによって、陰極部分の表面積が増加し、電流量および蓄電容量を増加出来るという。また、オーストラリアの研究グループは、グラフェンとグラフェンとの間に水分子を挟むと、グラフェン間に斥力が働き、グラフェン間に隙間をあけて積み重ね得ることを見つけた。リチウムイオン電池の陰極に適しているという。

グラフェンが水素貯蔵(10/21,31参照)にも使いそうだという指摘もある。グラフェンの表面に水素が吸着するが、グラフェンを重ねるとグラファイトのようになってしまってグラフェンとグラフェンとの間には水素が入り込めない。アメリカの研究グループは、グラフェン間を図のようにボロンの酸化物で連結することに成功した。これはグラフェン・酸化物フレームワーク(GOF)と呼ばれている。グラフェンは、温度が上がるほど多量の水素を吸着出来ることが明らかになっており、水素貯蔵にグラフェンレイヤーが利用出来るようになるかもしれない。

スーパーキャパシターについては明日説明する。