ナノテクノロジーニュース

ナノテクノロジーは日進月歩である。その全貌がわかるよう、日々飛びこんでくるニュースを中心に説明する。

金属と半導体との違い----ナノテクノロジーの基礎

2011-09-25 | 日記
原子核のまわりに束縛されている電子の状態を表すのに軌道という言葉を用いる。量子数nには、n*n個の軌道がある。1軌道には2個の電子が存在し得る。電子は自転している。これをスピンと呼ぶが、1軌道にはスピンの方向が互いに異なる2個の電子しか入ることが出来ない。水素原子は、量子数1の軌道に1個の電子しか存在しないので反応しやすく他の水素原子と反応して水素分子を構成する。水素ガスを構成するのは水素分子である。ヘリウム原子は、量子数1の軌道に2個の電子が存在しているため安定で、ヘリウムガスはヘリウム原子の集まりである。

原子番号3のリチウム原子は、量子数1の準位に2個の電子を、量子数2の準位に1個の電子をもつ。リチウム原子は結合しやすく固体になるが、固体ではエネルギー準位が帯になる。これをエネルギー帯という。さて、リチウム原子の量子数1の電子は内殻電子と呼ばれ、通常は材料の性質には関与しない。固体リチウムのエネルギー帯は量子数2の状態で作られるが、このエネルギー帯には2個の電子が入り得る。これに対して、リチウム原子は量子数2の電子を1個しか持っていない。したがって、図に示すように固体リチウムのエネルギー帯は半分しか満たされていない。

ダイアモンド(9/6参照)では事情が全く異なっている。ダイヤモンド結晶では図に示すように各炭素原子はそれぞれ4本の手を出して隣接した炭素原子と結合している。炭素原子は量子数2の電子を4個持っているから、4本の手には、それぞれ隣接した原子が出し合う2個の電子が入っていることになる。それぞれの結合の手にはスピンの方向が異なる(9/25参照)2個の電子しか入ることが出来ないから、ダイアモンドではこの4本の手が作るエネルギー帯には電子が充満していることになる。これを充満帯と呼ぶ。

リチウム金属では、エネルギー帯の中に電子が充満している部分のすぐ上に電子が存在しない部分がある(図参照)。電子は熱エネルギーをもらってこの電子が存在しない部分に入り込むことが出来る。このためリチウムでは電子が動きやすく、金属である。これに対して、ダイヤモンドでは電子が充満している部分(充満帯)のすぐ上に電子が存在出来ない禁止帯がある。禁止帯の上に空のエネルギー帯があり(図参照)、ここでは電子が移動出来るが、ここまで到達出来る電子は数少ない。したがってダイヤモンドは絶縁体である。禁止帯の幅が小さい材料が半導体と呼ばれている。

明日は、少し脱線してナノテクノロジーと医療について述べよう。