それにしても「松柏」の俳号は
それらしくて見事である、
タカさんが友人の俳句談義に触発されて
俳句でも作ってみようかと思い立ち
2週間ほどで150句ほどをプリントし
俳号までつけて送ってきてから2か月が経つ、
いや もっと経つのかもしれない、
こちらに送ってきたのはそれなりの理由がある、
私も知る彼(か)の俳談の友人は俳句を始めて数十年、
経験豊富な正統派だから遊びを許さない、
私の方は短歌は少しばかりの経験はあるものの
俳句は歳時記を買って始めたばかり、
短詩系文芸と言う共通点はあるが
俳句に関しては全くの初心者だ、
初心者同士の共感性があるはずだと感じて
こちらに送ってきたのであろう、
だからと言って
責任重大などと構える能力などは無い、
頭の体操の材料を提供してもらったと思って
遊び心半分読み進めている。
(67) 老鶯と 声を競うか ホトトギス
老鶯とは春すぎて鳴くウグイスのことだと最近知った、
山間地に行けばウグイスの声など夏でも結構聞く、
そんな山でウグイスとホトトギスが声を
競うかのように鳴いていたという句である、
ホトトギスは夏の季語、
一方老鶯はわが歳時記には載ってない、
季語としての働きがあるとすれば季重と
なるのであろうがそこは問うまい、
何処かの山で春の象徴であるウグイスと
夏の象徴であるホトトギスの鳴き声を
不思議な気分で聞いる作者の映像が浮かんでくる。
(68) 早起きし 見る赤富士は 威厳あり
朝日が当たれば赤富士になるのか、
夕日が当たれば赤富士になるのか、
どんな条件が揃えば赤富士と呼べるほど
赤くなるのか詳しいことは知らない、
一説には火山岩は濡れると
赤みが増すと聞いたことが有る、
確かにそんな気がしないでもない、
私は富士山の8合目でご来光を見たことが有る、
濡れた岩肌ではなかったけど
身近で見れば富士の山肌は結構赤い、
ところが遠くから眺める富士山は空気の層に
色を薄められてなかなか赤くは見えない、
雨上がりとか空気の澄んだ条件下の朝なら
赤富士となるのであろう。
(70) 赤き鳥居 並べし岬に 春の風
山陰の角島に近い元乃隅神社は無数の赤い鳥居が
岬に向かって並ぶ観光名所である、
それはいい、
だが❝春の風❞ではちょっと芸がない、
遮二無二季語を付け加えた感が否めない、
だが悲しいかな
参考になるような妙案もない。
(76) 蟹宿で たらふく食ったり 吹雪の夜
思わず吹き出してしまった(ゴメン)、
幾ら食い放題とは言えあの腹に収まった蟹の量を
想像して宿のおかみが気の毒になった
と言うのが正直な感想、
❝吹雪の夜❞も艶歌を彷彿とさせて私好み。
(78) 軒々に 塩鮭吊るす 鮭の街
これは私も同行して眺めた風景である、
地域色に季節感に溢れる風景で同感する、
だが結句が❝鮭の街❞では在り来たりすぎるだろう、
中7に既に鮭の文字があるのだから
ここは何か違う言葉で結びたい、
或いは比喩的に
❝ 軒々に 鮭は簾か 越の国 ❞
比喩は句づくりには重要な手法
上手く嵌ると手ごたえを感じられるよ。
(写真は富士山8合目付近)
今回はこれにてご免。