(79) 朝霧や 雪の棚田の 星峠
旅の記録としては
リズムが良くていい句なんだろうけど
いまいち名詞ばかりで幾ら噛んでも味がでてこない、
いっそのこと語順を逆にして
「星峠 雪の棚田に 霧が這う」
或いは地域を広げて
「越の国 雪の棚田に 霧が這う」
何となく旅に来てであった風景っぽくない?
(82) 安曇野の せせらぎの岸 猫柳
余りにもそのままではないだろうか?
「安曇野の ゆるき流れに 猫柳」
ゆるやかな流れに浸かって猫柳が芽吹いている、
動詞を入れたことで句が柔らかくなると思うけどいかが?
(86) 彫もの 背にも花散る 別所の湯
注釈を読むと「彫もの」は「彫りもの」と解釈して
久しぶりのヒット作です、
「背にも花散る」がいいね、
実際にその背に散っているわけではないのだろうけど
温泉で出会った若者の背中の刺青と
桜の季節がオーバーラップして
いい句です、
(90) 海峡を 眺めて食す 河豚旨し
河豚と言えば下関の地名が自然に出てくるので
海峡は海峡でいいだろう、
「河豚旨し」が当たり前すぎて面白くない、
「海峡の 眺めも河豚を うまくする」
でどうだろうか?
(93) 沖合の 岩場にちらちら 夜釣りの灯
夜釣りと決めてしまえば読み手の想像する余地が
なくなって面白みがないのでは?
名案が浮かばないが
「旅の宿 夜釣りの灯りが 気にかかる」
あたりでどうだろうか?
(95) 国東の 仏の里の 仁王石
国東と言えば仏の里の代名詞みたいな地名です、
その意味では国東の文字は
読み手のイメージを膨らませるには便利だけど
半面句が一般的になりやすい、
個性のある句にならないと言う欠点もある、
そこで国東は寺の数は多いけれど廃寺となった寺も多いと聞く
「国東の 廃寺を守る 石仁王」
作者の見た現実とは異なるけれど
ちょっと目線を広げて見る事で
隠れた一面が見えてくることもあると言う事です、
今回はここまでで失礼。
(画像は箱根の湿性花園にて)