旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

中山道紀行37 草津宿~大津宿~三条大橋

2016-05-07 | 中山道紀行

 

「草津宿」 10:30
 2ヶ月ぶりに草津宿。中山道を歩く第37日目は東海道との合流地点からスタートする。
今回は新幹線でやってきたので少々遅い歩き出し。順調に進むと今日が最終日になる。
草津宿は旅籠70軒と規模が大きい宿場であったが、面影を残す遺構は少ない。
現存する本陣建築では最大級の田中七左衛門本陣が立派だ。

 

酒蔵は街道の華。宿内には「道灌」の太田酒造は江戸城を築城した太田道灌を祖先に持つ。
そして宿場を出て間もなく「天井川」の古川酒造が在る。
どちらの蔵も御神燈の提灯を下げているのは、この辺りの神社はどうやらお祭りのようだ。

1200余年の歴史を有する滋賀県隋一の古社、立木神社も今日が例大祭でお神輿が舞う。
旧東海道に面して鎮座し、古くより交通安全厄除けの神社として信仰を集めている。

 

「野路一里塚」 11:00
 南草津駅付近に野路一里塚跡がある。すでに塚はなく花に囲まれた公園になっている。
正確には東海道の一里塚のなるが、中山道としては130番目の一里塚になる。
「野路の玉川」は有名な歌所、萩の玉川とも言われ日本六玉川のひとつとして知られる。

「瀬田の唐橋」 12:30
 近江八景「瀬田の夕照(せきしょう)」に描かれている瀬田の唐橋を渡る。
多くの文学作品に登場するこの橋は日本三名橋の一つして有名だ。
流れは琵琶湖から流れ出す唯一の瀬田川、学生が操る漕艇が水面を滑っていく。

      

「和田神社」 13:30
 瀬田の唐橋を渡ると街道は川に沿って北へ向きを変える。
膳所の町並みは、そこかしこの神社がお祭りで、神輿を待つ人達で賑やかだ。
和田神社の境内には高さ24m幹周り4.4mの大銀杏が聳える。樹齢は650年だそうだ。
伊吹山中で捕らえられた石田光成が京へ護送される際、この大銀杏につながれたと云う。
この辺のエピソードを司馬遼太郎さんが「関ヶ原」で描いている。

 
 

「義仲寺」 14:10
 街道が琵琶湖岸に沿って西へ向きを変えると左手に義仲寺が見えてくる。
平氏を都から追いながらも、源範頼・義経との戦いに敗れた朝日将軍源義仲の墓所である。
義仲が元服し、また挙兵した宮ノ腰宿を歩いたのが懐かしい。
寺には義仲を偲んだ芭蕉がその遺言により墓を建て眠っている。

「大津宿」 14:40
 義仲寺を過ぎると間もなく大津宿。ちょうど京阪電車の石場駅辺りが江戸方の入口だ。
大津宿は琵琶湖水運の要衝として、旅籠71軒と大いに栄えたそうだ。
宿内に旧い遺構はないが、緩い蛇行をしてきた道がここだけ長い直線になっている。

宿場は京津線の電車通りにぶつかって、琵琶湖を背にして直角に南向きに折れる。
この辺りが大塚本陣が在ったところ、振り返ると広重の絵の情景が見えたはずだ。

 大津から山科へ逢坂を越える。GW中でもあり京都方面への車線が渋滞している。
平安時代には逢坂の関が置かれ、都を守る重要な三関のひとつとして機能した。
蝉丸法師や清少納言など多くの歌人がこの関を歌った歌枕の地としても大変有名だ。
「これやこの 行くも帰るも 別れては 知るも知らぬも 逢坂の関」の和歌が著名だ。

「山科追分」 15:30
 逢坂を越えると伏見街道(奈良街道)が分岐する山科追分、近江と山科の国境でもある。

国道1号線では名神高速道路の京都東IC手前で「京都府」に入る。
1号線は五条通へと流れ、旧道は三条通となる。ゴールまでもう少しだ。

 

旧道を進むこと1.5km、五条別れ道標が在った。「三条通り」の標識に気持ちが高鳴る。

山科から蹴上げへと向かう上り坂に荷車に米俵を積んだモニュメントがある。
三条通りを走った路面電車(京阪京津線)の地下鉄化を記念したものだそうだ。
街道時代は牛に引かせた荷車が物資を都へと運んでいた。

「三条大橋」 17:30
 粟田口から入京、右手に平安神宮の大鳥居を眺めて白川を渡る。
整備された三条京阪ターミナルに御所を望拝する高山彦九郎が見えると三条大橋だ。
「草津宿」で東海道と合流し、瀬田の唐橋を渡って「大津宿」、逢坂の関を越えて、
粟田口から京の都に入り三条大橋まで26.2km、所要7時間の行程になった。

 日本橋を発って延べ37日、537km、今日三条大橋で男旅を終えた。
その大半が単身赴任期と重なって結局5年半を費やすことになった。
気付けば横を歩く息子は視線の高さが同じになった。ストライドは幾らか彼の方が長い。
まもなく身長も抜かれることだろう。
もうこんな旅に付いてくることはないだろうと、夕陽の三条大橋を眺めながら思う。


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