旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

KAFUKA TOKYO × 真澄

2022-06-22 | 日記・エッセイ・コラム

 麻布十番大通りから一本南に入ったら、先ほどまでの人混みが嘘のような閑静な住宅街に変わる。
さらに大黒坂へと抜ける細道へ折れると、オーストリア大使館の木立が影をつくる辺りにレストランがある。
何にせよ呑み人には似つかわないエリアに足を踏み入れたのは、蔵元とのコラボレーションを覗くためだ。
ウェルカムドリンクは “ゆず酒” をロックで、今宵、洗練された和食と諏訪の酒・真澄を愉しむ。

 会が始まると蔵元からの長いプレゼンテーション、若い社長室長は熱い。
とても関心のある内容なのだけれど、お行儀の良くない呑み人としては、いただきながら伺いたい。

ひんやりと “焼き茄子のズっぺ” をいただいてから、前菜は “蟹と帆立とあやめ雪かぶ” がボウルで供される。
山田錦と七号酵母で醸した “山花SANKA” は、華やかで優しい口当たりの純米大吟醸酒だ。

ひかる水面のような金属の皿に “稚鮎” が泳いだら、グラスには微かに発泡する “突釃TSUKIKOSHI” が注がれる。
江戸時代の製法を再現というが、その先は聞き逃した。鮎の苦味に、ほんのり甘みのフレッシュな吟醸がいい。

お椀は “とうもろこしの卵豆腐と冬瓜” をいただく。ちょっとホッとするね。

たけづつに夏酒が注がれる。その名も “すずみざけ”、ほのかな酸味がアクセントになって口当たり爽やかだ。
炙った “かつおのたたき” は、大根おろしに刻みネギとみょうがをのせ、ポン酢を垂らして美味しい。夏が来た。

山梨のマス “富士の介” が、たっぷりの胡麻味噌ソースをバーナーで炙り、ヤングコーンを従えて登場した。
先ほどから感じていた甘い香りの主は、キングサーモン×ニジマスのこのひと皿のようだ。
山廃づくりの “七號” は県産米と七号酵母(真澄の蔵から発見された)で醸したまさに信州の地酒と云える。
酸味と苦味が同居したちょっと贅沢な大吟醸が旨い。余談だけどチェスの駒のようなこのグラスが欲しい。

アルコール抑えめの純米吟醸 “白妙SHIRO”、穏やかなやや甘は “里芋の餡かけ” のような濃い味の料理にも合う。
普段飲みに手が届きそうな酒を、こんな素朴な陶器の酒器でいただくとなんだか落ち着くね。 

デザートにひんやりと爽やかな “トマトのコンポート”、深紅のトマトにペパーミントがお洒落でしょう。
すっとスプーンが入る柔らかで甘ぁいトマト、合わせるゴールドイエローがかがやく “真澄スパークリング”。
果実の香りと滑らかな甘味が、はじける泡とともに口の中に広がって、麻布十番の夜は更けゆくです。

恋するカレン / 大瀧詠一 1982