" ー 別に好きでこんな服を着てるわけじゃない。
別に好きでこんな顔をしてるわけじゃない。
だって派手な衣装で隠さなきゃ。
だって派手な化粧で隠さなきゃ。
だって剥げた心を指差して。
貴方達 笑うじゃないの ー 。"
中村 中 (あたる) の名曲 「リンゴ売り」
がDBのテーマ曲の様になっている。
舞台の幕開けはこの曲と共に始まる。
これはどんな演目のときも、必ず流れる。
私自身大好きな曲である。
それは一人でたくましく生きる女心の悲しみと切なさをやや自虐的に謳い上げる曲である。
自虐性などは愚かな感情である。
しかし、強く精一杯生きる者には、時に心が弱った時、そういう感情に襲われることは珍しい事では無い。
そういうとき、人は "自虐" という心の酒成分を分泌させることでその悲しみを柔らげる事をする。
これは真剣に人生と向き合っていない者には伝わりにくい感情かもしれない。
また単なるマゾヒズム的な自己愛に浸る性格の者たちのそれとも少し違うであろう。
性同一性障害を告白し、矛盾を矛盾のまま受け止めてしなやかに生きる、この ー 歌い手の曲をオープニングテーマとして流し続けていることは、そのままDBの表現しようとする世界観を雄弁に語りだしている。
生きていく中で時にどうすることも出来ないことなどはいくらでもある。
現実を受け入れる以外に、どう足掻いてもどうしようもない時や事は誰にでも、どんな者にも訪れる。
それでも前に進む。
歪まず、諦めず、やけを起こさず。
その途上で倒れることがあったとしてもそれは仕方ないではないか。
ー そんな "生きる" という事の悲哀をDBはいつも鋭く切り取り、演劇という手法を使い描きあげる。
中村中の「リンゴ売り」はこう続く。
" ー 誰にだって いい顔ばかりしたいわけじゃない。
だけど軽い口調で流さなきゃ。
だけど軽く笑顔で答えなきゃ。
勝手な事 散々言っといて。
貴方達 笑うじゃないの。
私を買って下さい。
一晩買って下さい。
綺麗な服も 長い睫毛も 何も残っていない。
私を抱いて下さい。
一晩抱いて下さい。
お金じゃなくて 体じゃなくて 愛は在りませんか……。
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