IPSO FACTO

アメリカの首都ワシントンで活動するジャーナリストの独り言を活字化してみました。気軽に読んでください。

プルート狂想曲で泣いたひと、笑ったひと

2006-08-26 15:16:45 | きょういく
経済誌「フォーブス」が最近になって面白い調査結果を発表していて、アメリカで最も「飲んだくれの多い」町にミルウォーキーが選ばれたんだとか。この調査は全米35都市で行われ、それぞれの町にある酒に関する法律や、1ヶ月以内にアルコール類を一度でも口にした人の数などを参考に、全米一の酔っ払いタウンを決めたものだ。ダブリンやミュンヘン、プラハにモスクワと、ヨーロッパにはアメリカの町が太刀打ちできないような「飲んだくれにとってのサンクチュアリ」が幾つもあるけど、今回の調査ではミルウォーキーがニューヨークやシカゴを抑えてチャンピオンとなっている(最下位はテネシー州ナッシュビル)。ニューヨークが24位って、少し驚きでした。さて、今日は冥王星が惑星から格下げになったというニュースを。

チェコのプラハで行われていた国際天文学連合の総会は24日、最終決議案を採択し、9つあった太陽系惑星を8つに減らすことを決定した。新しいカテゴリーでもある「わい惑星」に格下げされた冥王星が、1930年にアメリカ人天文学者によって発見されていたため、こちらでは大きなニュースとして報じられている。今回の格下げには賛否両論があるようで、CBSニュースの報道によると、総会に参加していた約2500人の天文学者のうち、冥王星の格下げを決める投票に参加したのは僅かに300人だったということだ。アメリカ国内の一般的な反応だが、多くの人がショックを受けているのは事実で、25日のロサンゼルス・タイムズ紙は「冥王星が学んだ教訓:惑星は8つで十分」という記事を、ワシントン・タイムズ紙は「冥王星は死んだ」というタイトルでニュースを伝えている。

冥王星アメリカ人天文学者のクライド・トンボーさんによって発見されたのが1930年。それから76年後の2006年になって、冥王星は惑星ではないと定義されてしまったわけだが、実は今年がトンボーさんの生誕100年でもあったため、アメリカ国内ではその偶然性にも驚きの声が上がっている。しかも、今年1月にはNASAが人類初の冥王星探査機ニューホライズンズを打ち上げており、この探査機が冥王星に到着するのは2015年の予定だが、この探査機の中にはトンボーさんの遺灰の一部も入っている。トンボーさんは冥王星を発見しただけではなく、アメリカ国内のUFOブームの火付け役としても知られており、1949年8月にニューメキシコ州で複数の未確認飛行物体を目撃したと語ったことで、当時のアメリカ国内で大きな反響を呼んでいる。トンボーさんの妻パトリシアさんは現在94歳だが、24日にAP通信の取材を受け、「傷付いてはいないけれど、体が揺さぶられる思いです」と語っている。パトリシアさんによると、トンボーさんは生前、冥王星の「格下げ」には反対していた。

冥王星の発見からUFOの目撃まで、宇宙に関するさまざまな話題を提供してきたトンボーさんにはこんなエピソードもある。有名SFドラマ『スター・トレック』は1966年から放送が始まった長寿番組だが、この中に出てくる宇宙船の1つには、製作者が尊敬の念を表してトンボーさんの名前が付けられている。また、トンボーさんの発見した冥王星は英語ではプルートと呼ばれるが、冥王星発見から数ヵ月後にはディズニー映画でミッキーマウスが飼っているペット犬の名前としても使われ始め、アメリカでは誰もが知る名前となっている。学術的に惑星から格下げされた冥王星だが、今回の格下げをビジネスにしようとする動きもあるようだ。AP通信は25日、カリフォルニア州サンノゼに住む女性が「冥王星は惑星です」とプリントされたTシャツをオンライン販売し始めたと報じており、今後こういった冥王星グッズが増える可能性もある。

2日前の話なんだけど、夕方に自宅近くのショッピングセンターによって、そこで遅めのランチを食べた。僕は1人でランチを食べる時は、必ずといっていいほど新聞か雑誌を読みながら食べてて(そう、かなり御行儀が悪いのです)、この日も特に興味があるわけではなかったんだけど、アシュトン・クッチャーのインタビュー記事を眺めていた。そんな事もあって、なかなか終わらないフードコートでの食事。気が付くと、2人の警備員が僕の周辺の客に「ここに何分くらいいましたか?」と聞きまわっていて、僕も同じ質問を受けた。「どうしたんですか?」と聞いてみると、近くの席に子供が1人で座っていて、「お父さんがどこに行ったか分からない」と言っている。それで、子供が置き去りにされたのではと思った警備員が、僕らに「何か見なかった?」と聞いていたのだ。結末を話すと、この子供のお父さんは、息子のためにアイスクリームを買いに行っていて、僕らの席からあまり離れていないアイスクリーム屋で列を作って並んでいた。お父さんは警備員に平謝りの状態。アメリカってネグレクトなんかには凄く厳しい国だけど、フードコートでの一件であらためてそう感じた。


写真:ロサンゼルスで25日、オンライン販売用のステッカーを作成するクリス・スパージェオンさん。ステッカーには「冥王星が惑星だと思う人は、クラクションを鳴らしてください」とのメッセージがある。 (AP通信より)