IPSO FACTO

アメリカの首都ワシントンで活動するジャーナリストの独り言を活字化してみました。気軽に読んでください。

空港関係者たちの長い1日

2006-08-11 16:42:18 | テロリズム
日本でも大きく報じられていると思うけど、イギリスからアメリカへ向かう旅客機を大西洋上で爆破しようとしたテロ計画があったようで、イギリス国内で現在までに24人が拘束されたと報じられている。今回のテロ計画で分かったのが(と、少なくとも英米両政府はそう言っている)、爆破テロで液体型の爆薬が使用されようとしていた事。複数のメディアの報道によると、カメラのフラッシュや、携帯電話、携帯型MP3プレーヤーが起爆装置として使用できるそうで、すでに機内持ち込みに制限がかけられた液体・ゼリー状製品に加えて、携帯電話やMP3プレーヤーの持込がどうなるのかも気になる。ワシントン・ポスト紙電子版の記事によると、今の技術ではこの爆薬とシャンプーの区別を、乗客がゲートを通るだけではできないんだとか。空のたびにまた新たな制限が設けられそうな感じです。今日はテロ計画に関するニュースを。

イギリス当局によって阻止された旅客機同時爆破テロ計画は、最大で10機がターゲットになっていた可能性が高く、10日のAP通信は米諜報関係者の話として、同時爆破テロが数日以内に実行される予定だったと報じた。ワシントンの連邦政府高官によると、10日にイギリス国内で一斉に行われた家宅捜索では爆破テロの実行役と見られる人物が遺書として残したビデオテープも押収されており、テロ前にこういった「殉教者」テープを残す事がアルカイダの手法に酷似しているのだという。また別のアメリカ人高官はテロに使われようとした爆薬が過酸化物で作られていたと明かし、カメラのフラッシュやほかの家庭用電気製品を起爆装置として代用することが可能だったと語っている。イギリスの捜査当局者は犯人グループが爆薬を手荷物に隠して機内に持ち込もうと試みていたと指摘し、実際に爆破テロが実行されていた場合、過去に例が無いほどの犠牲者数となっていただろうと語った。

CBSニュースは今回の爆破計画で24人がイギリス当局によって拘束中と報じており、拘束者の多くはパキスタン系イギリス人だとのことだ。24人の中で、最も若い容疑者の年齢は17歳となっている。警察当局は少なくともさらに5人の容疑者を現在も追跡中だ。「この国は911テロ事件前よりは明らかに安全になりましたが、完璧に安全だとは言えないのです」、ブッシュ大統領は10日、ウインスコンシン州グリーンベイでそう語った。事件発覚からすぐ、アメリカ政府はイギリスからアメリカに向かう旅客機に対して、これまでで初めて警戒レベルを最高の「赤色」にまで引き上げた。また、その他の旅客機に対しても(アメリカの国内線も含む)、警戒レベルを赤色の次に強い「オレンジ」にまで引き上げている(5段階のレベルで4番目)。国土安全保障省も乗客が機内に持ち込む手荷物に対して、液体・ゼリー状の物ほぼ全てを持ち込み禁止対象にして、ジュースや日焼けローション、さらには歯磨き粉の持込までもが禁止された。

アメリカ国内の主要な空港では10日午前から大混雑が続いたが、夕方から少しずつ混雑状態もおさまりつつあるようだ。米政府は10日、イギリス行きの旅客機に搭乗する者全てに対して従来よりも厳しい検査を行うと発表しており、その他の地域に向かう乗客に対してもランダムで身体検査などが実施される予定だ。また、各地の警察官や州兵が手荷物検査などの作業に参加する模様だ。航空会社の株は10日午前に軒並み下落したが、夕方までに回復している。航空会社の幹部はワシントンポスト紙の取材に対し、液体・ゼリー状製品の機内持ち込み禁止が一時的なものであると期待したいと語り、長時間のフライトを強いられる乗客に対して液体製品などの機内持ち込みを長期間禁止するのは「現実的ではない」と主張した。しかし、元連邦運輸保安局幹部のデービッド・ストーン氏は現在の技術ではゲートを通過するだけで爆発物とシャンプーの違いを確認できないと指摘し、「政府は液状製品などの持込を全面的に禁止するしかオプションが無いのです」と語っている。

最後まで飛行機の話になってしまうけど、1985年に発生した日航機墜落事故から12日で21年になるのをすっかり忘れていた。当時、僕はまだ9歳だったので、事故そのものの衝撃についてはほとんど記憶が無い。ちょうど家族でつくば博に出かける数日前に事故が発生し、飛行機に乗るのが少し怖かったという記憶くらいだ。ただ、姉は友人を御巣鷹の事故で亡くしており、小さい頃から事故の話を何度も聞いてきた。阪神大震災でもそうだけど、時間の経過とともに、どうしても事故や災害の衝撃が記憶から離れつつある。8月12日や1月17日といった「特別な日」にだけ色々と考えてしまう状態がずっと続いている感じだ。少し前にオンライン書店をのぞいていると、日航機事故や阪神大震災に関する本が意外と多いことに気づいた。近いうちに何冊か取り寄せてみようかなと思っている。

写真:サンフランシスコ国際空港で10日、出国前に機内持ち込み禁止となったシャンペンを飲み干すロシア人観光客 (AP通信より)

ニューオーリンズの公立学校、今週から新学年がスタート

2006-08-09 14:45:01 | ハリケーン「カトリーナ」関連
まだ「マイアミ・バイス」さえ見ていないのに、楽しみな映画が10月に公開されるので、最初にそれを少しだけ紹介しておきます。マーティン・スコセッシ監督の最新作「ザ・デパーテッド」はボストンのアイリッシュ・マフィアと警察のおとり捜査官の活動をテーマにした作品で、少し前に映画のトレイラーを見る機会があったんだけど、アイリッシュ・マフィアのボスは実在の人物(サウス・ボストンに住んでいたら誰でも知ってるホワイティ・バルガー)をベースにしているのかなと思った。どうもスコセッシ監督は全ての撮影をサウス・ボストン周辺で行いたかったらしいんだけど、資金的な問題(映画プロダクションに対する税率が、マサチューセッツ州は高いらしい)で約半分の撮影をニューヨークで行ったんだとか…。主役のレオナルド・ディカプリオだけど、やっぱりハードボイルドな役をこなすのは難しそう。パリス・ヒルトンがどう頑張ってもボンドガールにはなれないように、ディカプリオのハードボイルド役にも違和感を感じてしまう。なんだかんだ言っても、必ず見に行こうと思ってます。なん、元ドルチェスターっ子なので。さて、今日はニューオーリンズで公立学校が新学年を迎えたというニュースを。

AP通信は7日、ハリケーン「カトリーナ」で大きな被害を受けたニューオーリンズ市内で一部の公立学校が再開し、8つの学校で新学年がスタートしたと報じた。7日の学校再開に姿を見せた児童は約4000人で、昨年のハリケーン前に市内の公立学校に通っていた児童の数は約6万人だった。市側は9月中旬までに40校以上の再開を計画しており、最終的に3万人程度の児童が学校に戻ると考えられている。市側の計画とは対照的に、州政府は9月中旬を目処とした学校再開に難色を示しており、複数の州政府職員はAP通信の取材に対し、十分な数の教員を確保できていない事が大きな問題となっていると明かした。また、ある公立学校では9月7日に学校の再開を予定していたが、最近の大雨によって浸水が再び発生し、学校再開時期の延期を余儀なくされている。

問題はほかにもあり、ニューオーリンズ市内の学区で学校運営を行える責任者が激減したため、公立学校を一時的にチャータースクール(税補助は受けるが、公的な教育規制を受けず、市などから独立した団体が運営する)にすべきとの声もあがっている。すでにいくつかのチャータースクール運営団体は市内の公立学校運営を委託されているが、それぞれの団体によって新学期の開始時期や登録方法などが異なるため、保護者からは「ややこしい」と苦情も出ている。ハリケーン後に作られた規定では、ニューオーリンズ市内に住む児童は(住所に関係なく)好きな公立学校を選べ、基本的には新しい学校への入学は先着順となっている。また、生徒数によって州政府から各学校に振り分けられる助成金の額も大きく異なる。5日には市内のアリーナで入学・転入に関するセミナーが開かれ、多くの家族が姿を見せたが、現在のシステムに戸惑いを隠せない保護者も少なくなかったようだ。

保護者から不満の声もあがる中、ルイジアナ州小中学校教育委員会のレスリー・ジェイコブズ氏はAP通信の取材に対し、「問題は山積みだが、今のシステムをモデルケースとして全国に紹介したい」とコメントした。しかし、半ば見切り発車的な形で学校が再開される事を疑問視する教育関係者もいる。ニューオーリンズ市教職員組合のブレンダ・ミッチェル氏は、カトリーナ後に市側が教員の補充や学校再開支援をほとんど行わなかったと批判する。また、一部の学校がチャータースクールとして運営されるため、以前からそこで働いていた職員が解雇されるケースも発生している。カトリーナ後にニューオーリンズ市内で始まった「教育改革」は賛否両論だが、被災前のニューオーリンズ市内の公立教育システムに全米最悪という厳しい評価が下されていたのも事実だ。教育予算は常に赤字で、予算の使い込みなどが頻繁に発生したため、警察による捜査も行われたほどだった。

ドイツの友人から雑誌「シュピーゲル」に書かれた記事(英訳版)のリンクを送ってもらった。さすがに和訳する体力は無いので、興味のある方はぜひ読んでみて下さい(記事)。昨日の夜、ラジオのレポートの中で少しだけアメリカ国内におけるイスラエル・レバノン問題の報道について触れたんだけど、客観的に見てもやはりアメリカ国内の報道はすごくイスラエルよりと言わざるをえない。CNNなんて数ヶ月前までイスラエル系ロビー団体のCMを流していたんだし、アンカーのウォルフ・ブリッツァーはワシントンのイスラエル系ロビー団体やエルサレム・ポスト紙に勤務した経験のある人物だ。国内ニュースを見てても、ユダヤ系アメリカ人のコメントなどは頻繁に報じられているけど、レバノン系やその他のアラブ系アメリカ人の意見を耳にする機会は少ない。そう思っていたら、「外国の」報道機関であるBBCがミシガン州に多く住むレバノン系アメリカ人コミュニティの様子を報じていた。もともとヒズボラに対してあまりいいイメージを持っていなかったレバノン系アメリカ人の間でも、イスラエルによる攻撃が始まってからは、心情的な理由からヒズボラを支持する人が増えているらしい。アメリカ国内でこういったマイノリティの声を拾っているのはエスニック・プレスのみで、外国メディアの報道によって初めてアメリカのニュースを知る場合があるのも事実だ。


写真:ニューオーリンズ市内のフィッシャー小学校で新学期初日を迎えた子供たち (AP通信より)

塗り薬のコマーシャル、突然カルト的な人気に

2006-08-08 14:17:36 | 犯罪
ずいぶんと前からこのブログでも紹介しようと思っていたんだけど、アメリカ在住の人なら「Head On」という塗り薬のTVコマーシャルを見た経験が少なくとも1回はあるんじゃないかな。CNNなんかでも頻繁に流されていて、初めてこのCMを見た時には、本当に放送事故かなにかかと思ったほどなのだ。CMには色々なタイプがあるんだろうけど、僕はこのCMのナレーション(と言っても、「ヘッド・オン、額に直接お塗りください」という言葉を繰り返すだけ)を聞くとなぜかイライラしてくるんです。てっきり僕だけかと思っていたんだけど、友人の中にもこのCMでイライラする奴が何人かいたようで、さらに笑ったのが、「Head OnのCMによってイライラする人が急増中」というテーマでテレビニュースが取り上げていた事。これって、商品を認知させる意味では大成功だったのだろうけど、まぁイライラしてきます。すでにYouTubeではこのCMのパロディも掲載されていたので(パロディ2)、オリジナル版と一緒に見てみてくださいな。さて、今日は南部や中西部で正当防衛に関する法改正が進んでいるというニュースを。

7日付のニューヨーク・タイムズ紙によると、アメリカ国内の15州で過去10ヶ月の間に自衛権に関する法改正が行われ、「身の危険を感じた時に」相手を射殺する事が事実上認められつつある。これまでは正当防衛であっても殺人罪として起訴対象となっていたが、法改正によって「正当防衛による射殺」をめぐる解釈が大きく広がったため、アメリカ国内では大きな議論を呼んでいる。フロリダ州ポート・リッチーでは先月、売春婦が72歳の客を客の所持していた銃で射殺したが、この女性は起訴される事がなかった。また、同じくフロリダ州のクリアウォーターでは6月にもゴミ問題で口論となった男性が、隣人を射殺する事件が発生している(この事件に関しては、警察当局が捜査記録の見直しを行うと発表している)。正当防衛をめぐる法改正は昨年10月にフロリダ州で始めて行われ、現在までに南部と中西部を中心とした15州で同様の法案が可決されている。これらの地域で法改正を求める運動を展開してきたのが、全米ライフル協会(NRA)だった。

フロリダ州の法律では自宅への侵入者を射殺する権利が完全に認められており、不法侵入の証拠さえ存在すれば、発砲者に対してそれ以上の捜査は行われない。また、車への不法侵入に対しても銃の使用が認められており、フロリダ州の法律は他の州における法改正のモデルともなっている。また、この法律では発砲者の逮捕や拘束だけではなく、起訴や民事訴訟を起こすことさえも禁止されている。ブルックリン・ロースクールのアンソニー・セボック教授はニューヨーク・タイムズ紙の取材に対し、「侵入者が脅威を示さない場合でも、その人物に向かって発砲が自由に行える」と語り、法改正の効果を疑問視する。一方、NRAのウェイン・ラピール副会長はフロリダ州での法改正を高く評価し、「誰かから不当な攻撃を受け、生死の判断に迫られた時、法律は常に善き市民の側にあるのです」と語っている。NRAは現在も全米各地で法改正を求めるロビー活動を続けており、2007年にはさらに8州で法改正が行われるだろうと期待している。

銃犯罪撲滅を求めて運動を展開する「ブレイディ・キャンペーン」のサラ・ブレイディ会長はニューヨーク・タイムズ紙の取材に対し、「こんな法律は、市民に殺しのライセンスを与えるようなものです」と語っている。また、検察関係者からも法改正に対して否定的な意見が相次いでおり、全米地方検事協会のポール・ログリ会長は、「誰かに対して発砲を行う際、一般市民の方が警察官よりもその権利を保障され、発砲に関する捜査などもほとんど行われないのです」と驚きを隠せない様子だ。警察や検察、そして法律関係者からは反対意見が多い一連の法改正だが、法改正があまり大きな意味を持たないと主張する学者もいる。フロリダ州立大学のギャリー・クレック教授(犯罪学)は法改正について知っている住民はそれほど多くないと指摘し、正当防衛での銃使用はこれまでも南部を中心に公然と認められてきた歴史があると語った。

映画「タクシードライバー」でジョディ・フォスターが演じたのが、僕の記憶が正しければ、十代前半の売春婦で、(僕の記憶が再び正しければ)彼女をコントロールしていたポン引きはハーベィ・カイテルだったはず。売春婦とポン引きなんてどの町にもいるもんだけど、ワシントン近郊の高校ではフットボールチームのコーチが、同じ学校に通う15歳の女子学生に客を取らせていたらしい。逮捕された35歳のフットボールコーチはメリーランド州チャールズ郡の自宅で女子学生に性的暴行を加え、その様子をビデオに撮影して脅迫も行っていたらしい。地元メディアの報道では、逮捕されたコーチはこの女子学生をワシントン市内に車で連れて行き、そこで1人150ドル程度で売春を強要させていた模様だ。買春を行った客の中にはワシントン市警のベテラン警察官も含まれていたようだ。(教師ではないものの)学校関係者がピンプをやっているなんて…。どうなっちゃってるんでしょうね、本当に。

表には法改正を行った州とロビー活動が展開されている州が記されている。 (ニューヨーク・タイムズ紙より)

フレンチ・クォーターで呼び込みの仕事をやってみる

2006-08-04 16:22:38 | ハリケーン「カトリーナ」関連
長かった1日も終わり、これからスーツケースの整理をして、少しだけ仮眠をとろうと思っている。取材って本当にいろんな人の協力で成り立つものだと思うんだけど、ニューオーリンズ最終日の夜中にそんな思いが再び頭をよぎった。フレンチ・クォーターに住むフランクの弟ジェイミーと婚約者のメアリーさんには、今回の滞在中ずっと世話になりっぱなしだったし、いろんなバックグラウンドを持つ人にも会わせてもらって、予想以上に大きな収穫になったと思う。ニューオーリンズに来てからよく言われたんだけど、ここは履歴書や会社の名前など誰も気にしない町で、人とのつながりが凄く重視される場所らしい。どこに行っても、本当にみんなフレンドリーに接してくれたけど、あらためてジェイミーや昨日のブログにも書いたロバート、スライデル市のジェニファーさん達に感謝したい。ボストンのノース・エンド(イタリア人地区)を学生時代に取材で担当していたんだけど、ニューオーリンズと同じような雰囲気を持った街で片っ端からいろんな人を紹介してくれたのが、ジェイミーの兄貴フランクだった。2人の生まれ故郷でもあるコロラドには足を向けて寝る事はできあいなぁ、絶対に。

昨日の取材中、フレンチ・クォーターにあるバーボン・ストリートでバーの呼び込みをやっている2人のオッサンと1時間ほど立ち話をした。2人と分かれる際、半分冗談で「明日の夕方には取材もすべて終わるので、呼び込みの仕事を手伝ってやるよ」と軽く言ってみた。笑い話で終わるはずだったのに、バーテンダーの女の子が「じゃあ、本当に来てくれる?」と一言。「え?」と思いながらバーテンダーを見ると、90年代後半のアンジェリナ・ジョリーを髣髴とさせる姿がそこにはあって、僕は白い歯を見せて「もちろん!」と即答してしまったのだ。そんなわけで、今日は午後7時から1時間ほど呼び込みの手伝いをしていたのです。1時間で4組の観光客をバーに引っ張ってきたんだけど、意外と難しいんですな、これが。でも、呼び込みをやりながらウォーレスさん(オッサン2人組のひとり)からもゆっくりと話を聞けて、よかったです。アンジェリナ・ジョリー似のジェネビー嬢からのご褒美はレッド・ブル1本。いつもより美味しい感じがした。

写真:呼び込みの師匠?バーボン・ストリートで毎日頑張るウォーレスさん(左)とジョニーさん(右)

窓の向こうにいたのはファッツ・ドミノ

2006-08-03 12:29:00 | ハリケーン「カトリーナ」関連
ニューオーリンズ滞在も3日目。昨日は夕方までスライデルという町に滞在していて、被災地を歩き回って地元に人に話を聞いたり、市役所(スライデル市の市役所は、ハリケーン後から現在までプレハブを使って業務をこなしている)の職員にインタビューをしたりして、夕方からニューオーリンズ市内の「第9地区」を回ってみた。少年時代をこの第9地区で過ごしたロバートさんに連れて行ってもらったので、途中で建設会社のスタッフだけでなく、数少ない地元の住民(僅かだが、自宅近くでキャンピングカー生活をしている)にも話を聞くことができた。しばらくしてロバートさんが「ファッツ・ドミノ(R&Bの大御所)の家が近くにあるから、そこにも行ってみよう」と提案。僕らがドミノ氏の家に行ってみると、ガレージから小柄な男性が出てくるのに遭遇。「うわっ!」と車内で叫んだのはロバートさんだった。この小柄な男性こそが、ファッツ・ドミノ氏本人だったのだ。ニューオーリンズ滞在初日に、フレンチクォーターに住む知人からドミノ氏がニューオーリンズ郊外に住んでいるとは聞いていたんだけど、この日は偶然にも自宅ガレージから車などが盗まれていないかを確認しに帰ってきていたらしい。ドミノ氏の運転手がロバートさんの幼馴染ということもあって、ドミノ氏とも少しだけ話をし、写真撮影まで快諾してもらった。年齢や体力的な問題でパフォーマンスはもう難しいといわれているドミノ氏だけど、僕の前にいたのはまだまだ元気な一人のおじいちゃんだった。

ゴーストタウンへようこそ

2006-08-01 11:51:06 | ハリケーン「カトリーナ」関連
なんとかニューオーリンズに着きました。中継地のテネシー州メンフィスでは暑さでコックピット内の計器に異常が出たらしく、クーラーが停止したままの機内で1時間も待たされたけど、まぁ無事にニューオーリンズに到着。ホテルについてからすぐ、地元の大学で英語を教える女性にインタビューをした。彼女には30分ほど話を聞いたんだけど、手短に言うと、彼女は去年のハリケーンが原因となって町が本当に衰退していくのではと凄く心配していた。特に、市政には凄く失望しているようで、今の市長に明確なビジョンは一切ないとまで言い切っている(同じことを飛行機の中で一緒になった中年女性と、空港からダウンタウンまで連れて行ってくれたハイチ系のタクシー運転手も言っていた)。インタビューを終えてから街を散策することにした。ニューオーリンズの人口はハリケーン前の約半分といわれているけど、とにかく静かで、ダイキリ・バーやストリップ・バーが並ぶバーボン通り(フレンチ・クゥオーター内の有名なストリート)ですらも、観光客よりも呼び込みの数のほうが多いんじゃないかと感じるほどだった。それから鉄道駅まで歩き、駅の近くにあるスーパードーム周辺をさらに歩いてみた。スーパードームは昨年9月に被災者の収容所として使われていた場所だけど、最近になって屋根の修理作業がようやく終わったスーパードームは、ゴーストタウンに残された巨大建造物にしか見えなかった。