IPSO FACTO

アメリカの首都ワシントンで活動するジャーナリストの独り言を活字化してみました。気軽に読んでください。

レバノン攻撃、数ヶ月以上前から計画か?

2006-08-14 15:58:37 | 外交
日本からの頼まれ事で、近所の本屋に幼児向けの絵本を探しに行ってきた。どれがいいのかよく分からなかったので、店員の女性に「4歳くらいの子供が読みそうな絵本を探しているんでけど」と聞いてみることにした。「お子様用ですか?」、といきなり聞いてきた店員。たしかに4歳くらいの子供がいてもおかしくはないんだろうけど、気になったので「僕は何歳に見えますか?」と聞き返した。アメリカだと実年齢より若く見られる事が多いのに、かえってきた答は「32,3歳ですかね」というショッキングなもの。自分でも気がつかないうちに、そんなにオッサン臭くなったんだろうか…。とにかく絵本も無事に見つかったんだけど、その時に感じたのが大人が読んでも面白そうな絵本も少なくなかったという事。レッドソックスの2004年ワールドシリーズ優勝を描いた絵本もあったし(これって、本当に幼稚園児や小学生が読むんだろうか?)、なぜか「対象年齢6歳」のセクションにテッド・ケネディをテーマにした絵本まで置かれていた。6歳の子供がテッド・ケネディの絵本を読んでいる姿は、やっぱり不気味だと思う(飲酒運転の危なっかしさでも説いているんだろうか?)。さて、今日はレバノン関連ニュースの続報を。

イスラエルとレバノン両政府が合意した停戦が米東部時間14日午前1時から発効し、34日目を迎えたイスラエルとヒズボラの戦闘が当面停止する見込みだ。CNNの報道によると、停戦発効の数分前まで両者による戦闘は続き、その数時間前にはイスラエル軍機がベイルート上空からプロパガンダの書かれたチラシを大量に投下した。チラシには「ヒズボラはレバノンの破壊者であり、シリアとイランの操り人形である」とのメッセージが記されていた。AP通信は停戦発効後のベイルート市内の様子を報じ、当初は家の外に出る市民がほとんどいなかったが、しばらくして交通渋滞なども発生したとの事だ。今回の停戦決議は11日に国連安全保障理事会で採択され、その後レバノンとイスラエルも承認している。ヒズボラの指導者ハッサン・ナスララ師も停戦決議を認める意向を示したとされている。

一方、著名な調査報道記者のセイモア・ハーシュ氏は、ニューヨーカー誌の最新号でイスラエルとアメリカの政府高官が5月の段階ですでにレバノン攻撃について話し合いを行っていたと報じている。7月に開始されたイスラエル軍による攻撃は、レバノンの民兵組織ヒズボラによって2名のイスラエル兵が拉致されたのが原因とされているが、ハーシュ氏の最新のレポートは、拉致が行われる数ヶ月前にイスラエル政府高官がワシントンを訪れていたと指摘している。5月に行われた話し合いでは、ヒズボラの壊滅が大きなテーマとなっていた模様で、ブッシュ政権内のあるスタッフはハーシュ氏に対し、「イスラエル政府の高官は数回にわたってワシントンを訪れ、ブッシュ政権からレバノン爆撃に対する事実上の許可をもらったのだ」と語っている。また、複数の政府高官がハーシュ氏に語ったところによると、ヒズボラを壊滅状態に追い込むことで、アメリカがイランに対して先制攻撃を行った場合に、イスラエルに対する報復攻撃の脅威がなくなるだろうという考えが政権内部には存在したようだ。

ハーシュ氏は13日、CNNの番組に出演し、「7月の拉致事件はあくまでも口実だったのです。レバノン攻撃はずっと以前から計画されていたのです」とコメントしている。あるペンタゴン高官は匿名を条件にハーシュ氏の取材に答え、「ヒズボラの壊滅はわれわれの目標でもありましたが、それを別の国がやってくれているんです」と語っている。国務省とペンタゴンはハーシュ氏の記事内容について否定し、国家安全保障会議の広報官も「イスラエル政府高官がレバノン攻撃について話し合うために、5月にワシントンを訪れたという事実はありません」とコメントしている。ハーシュ氏はこれまでにも数多くのスクープを発表しており、イラクのアブ・グレイブ刑務所で収容者に対する虐待が行われていたと最初に報じたのも彼だった。ベトナム戦争時に米軍によるミライ村虐殺事件のスクープも行ったハーシュ氏は、イラクやイランにおける米軍の活動に関する記事を最近になっていくつも発表しており、イラン国内で米軍特殊部隊がすでに活動中といった内容のスクープ記事も少なくない。

最後にリトルリーグの話題を少し。6月後半にユタ州で行われたポニーリーグ(9歳と10歳の子供たちが参加するリーグ)の大会で、偶然にもレッドソックスという名のチームとヤンキースという名のチームが対戦したんだけど、ヤンキース側の采配に非難が集中し、数日前からは全国ニュースでも紹介されるほどの話題となっている。9回裏2アウトで、ヤンキースが1点リードしながらも3塁にランナーを置く状況。レッドソックスの最後のバッターはジョーダン・ブリーク君で、彼はチーム内のベストヒッターでもあった。ヤンキースの監督(トーレさんではないですよ、念のため)はここでピッチャーに敬遠を指示し、次のバッターで勝負しようと決断。次のバッターはチーム最低打率のロムニー・オークス君で、ロムニー君は三振に打ち取られゲームは終了した。実はロムニー君は5年前に脳腫瘍の手術を受けており、現在も薬を飲みながらリトルリーグに参加している。ヤンキースのコーチはバスケットボール教室でロムニー君を教えたことがあり、脳腫瘍のことは以前から知っていたんだけど、試合では「チームの勝利が最優先」として彼を打ち取るようピッチャーに指示している。これには観戦に来ていた保護者らからも大ブーイングが起こったそうで、MSNBCやスポーツ・イラストレーテッドといった全国メディアが「リトルリーグでは勝利よりも倫理を優先させるべき」と非難を展開している。すごく難しいテーマだけど、みなさんどう思います?


写真:レバノン南部で13日、イスラエル軍の攻撃で破壊された町を歩く親子 (ロイター通信より)


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