読書と追憶

主に読んだ本の備忘録です。

犬の散歩 5

2008-02-18 23:12:55 | 日記
 ある夜、神社の方からなんだか騒がしい声が聞こえてきた。このところ夜になると、暴走族が爆音を響かせたりたむろしていることがちょくちょくあった。最近は慣れてあまり気にしないでいたが、次の日の夕方公園を通り抜けた時にはびっくりした。一面に花火の燃えカスが散らばっていたからだ。たばこの吸い殻や缶ビールの空き缶も散乱していて、何があったのかと心配になるほどだ。

 「またか」と私はガックリした。とりあえずゴミ拾いをして帰ったが、うっかりとたばこの吸い殻を残してしまった。すると、てきめん。次の日に吸い殻が増加していた。ゴミは仲間を呼ぶのだ。ムカッ!「吸い殻もイカンのだよキミたち」私は犬ほったらかしで吸い殻拾いをした。もはや散歩だかなんだかわからない。

 ところが集会の痕跡はさらにエスカレートしていく。なんと公園のど真ん中でたき火をしするようになった。ライター燃料の缶、ビール缶、吸い殻、焦げた木切れ。キャンプファイアーでもしたのか?男ってたき火が好きだなあ。楽しそうだなあ。いや、楽しいだろうなあ。だけどこんなところでしてはイカンのです。私は丹念にゴミを拾い、黒くなった地面を靴でごしごしこすって完全にたき火の跡を消して帰った。
 しかし、次の週にも小規模なたき火跡が見つかる。遠慮しながらやったようで吸い殻はなかったし水をかけて消した形跡も残っていた。そうまでしてたき火をしたいか?ダメったらダメなんだよ。

 これはもう、直談判しなきゃいけないなあと思った。だが一人では逆襲されるかもしれない。駐在さんに頼んで一緒に行ってもらおうと思いながら、ふと、私には注意する権利があるのかと考えた。私はただの通りすがりだ。氏子でもない。そこを突かれる可能性もある。ここを管理している氏子会に連絡してみようかなどといろいろ考えながら帰ったが、次の日に行ってみてびっくりした。公園に「火気厳禁」と書いたバカでかい看板が立っている。なんと!電光石火の早業だ。

 でも、なんだかヤだなあと思った。こんな看板を建てるより、直に注意した方が手っ取り早いじゃないか。私は看板が大嫌いだ。第一お金がかかる。看板を立てようなんて相談するより、みんなで揃って夜、見回りに行く方が早いと思うんだけどなあ。そんなに凶暴な奴らか?どうもそうは思えないのだ。子どもみたいにキャンプファイヤーをしたり花火をしたりしているんだ。看板なんて一旦立てればずっとあるじゃないか。目ざわりだ。

 それ以降、たき火も吸い殻もぱたりとなくなったので私は楽だったが、どうも釈然としない気持ちが続いていた。秋も深まったある日、エンジンを過剰にふかす音がすると思いながら公園に降りて行くと、バイクに乗った兄ちゃんたちが、5、6人たむろしていた。「あのたき火の子らか」と私は身構えたが、犬はまったくお構いない。喜んで突進していった。うわー、やめてくれー、因縁つけられるー、と内心焦りながら群れのど真ん中に引っ張られていくと、一人の兄ちゃんが「こんにちは」とにこやかに声をかけてきた。意外と愛想がよい。「あ、こんにちは」と言うと、兄ちゃんたちは「チッチッチッ」と言いながら犬の頭を撫でてくれた。気のいい奴らだ。ほれ、別に凶暴でもなんでもない。それから2、3度彼らを見かけたが、あちらから挨拶してくれるし、バイクがうるさい以外は問題なかった。やっぱり看板は不要だったと思うな。

最新の画像もっと見る