読書と追憶

主に読んだ本の備忘録です。

ダルニー奨学金

2007-12-13 10:45:19 | 日記
 今朝のNHKニュース「ワールドリポート」でダルニー奨学金が取り上げられていた。日本民際交流センターの名前は出ていなかったけど、あれは民際のことだ。今年20年を迎えると通信に書いてあった。私は2005年にタイの女の子を一人援助して、その子は今年中学三年になっている。その後はあたらしい子を支援するのではなく、事務経費として毎年1万円づつ送っている。事務経費というのもまた結構大変らしいから。

 最初の年に軽い気持ちで三年分の奨学金を送ったところ、奨学生の写真と資料が来た。英語とタイ語で書いてあって、奨学生のコメントもカタツムリみたいにぐるぐるしたタイ語だったので、読めないと決めつけ、そのまま納めてしまった。秋になってふと通信を見ると「お年玉・Xマスプレゼント」の申込書というのが資料の項目にあるのが目にとまり、「そうだ、クリスマスプレゼントを送ってやろう」と思いついた。私が子供のころ、一度も会ったことのない親戚のおばあさんが毎年クリスマスにお菓子の入ったブーツを送ってくれていて、それが楽しみだったからだ。
 
 資料を取り寄せてみると、がっかりしたことに、そのリストにはお菓子もおもちゃもひとつも入ってない。Tシャツ、タオル、ノート、英語辞書、タイ語読本、ボールペン(たくさん)など文房具ばかりだ。がっかりした。こんなものをもらって喜ぶだろうか?でも資料には、暑いからTシャツ、タオルは何枚あってもいいし、辞書も買えない子が多い、ボールペンはクラスの友達に配れるよう多めに入れていると書いてある。半信半疑ながら手続きして送ってもらったのだが、そうしたらお礼のカードが返って来て、英語で「ありがとうごさいました。がんばって勉強します」と書いてあったので、まあ喜んだみたいだなと思った。下書きに鉛筆で罫線をひいて、一生懸命きれいな字で書こうとしたらしく、修正テープで消した形跡もあった。修正テープもプレゼントの中に入っている。真面目な子だなあ。
 それで、忘れていたその子の資料を探して読んでみると、なんと驚いたことに、英語で「母親は働きに出て行方不明。父親は病気」と書いてある。どうやって食べているのか?
 
 次の年には少し大きくなって笑っている写真が送られてきてほっとしたが、アンケートにはこう答えていた。
好きなスポーツ ~空白
趣味 ~読書
放課後の過ごし方
 *家の手伝い~炊事 洗濯 掃除 水汲み 家畜の世話 兄弟の世話 *家の手伝いをしないとき ~空白
きっと子供らしい遊びなんかせず、毎日家事と農作業をしてるんだ。大丈夫なのか?
 次の年もクリスマスプレゼントを贈ろうとふとリストを見ると、学校に寄贈するプレゼントというのがあった。本などが主体だが、その中に医薬品というのがあって、「今年は要望の多かった学校備付の医薬品をリストに入れることにしました」と書いてある。学校に保健室もないのか?子供がけがをしたり頭痛がしたときにはどうするのだ!びっくりした。それで学校用のプレゼントも送ることにした。
 
 今年、またアンケート用紙が届いて、それを見るとその子は高校進学を希望している。ダルニー奨学金は基本的には中学生向けの奨学金に限定しているが、個人的に高校の奨学金も支援しようと思えばできる。3年分6万円を一括で送り、新しい奨学生を一人新たに持つという条件でだ。ちょっと迷ったけど支援することにして、今本人に確認してもらっている。お金だけでなく、その他の事情もあるだろうから現地事務所があらかじめ調査した上で送るらしいのだ。中卒と高卒では就ける職業が違ってくると思う。あと三年辛抱して就職すればお給料で弟や妹を養うこともできる。だいじょうぶかなあ。

 ダルニー奨学金に関わってからはタイのニュースが気になる。きっとあの子も日本のニュースが気になっていると思う。企業内で募金してダルニー奨学金をたくさん出している会社もあると読むと感心する。2007年秋の「ダルニー通信47 20周年記念号」にはタイブリジストンがタイ東北地方の子どもたちに通学用自転車を毎年提供しているという記事が載っていた。ブリジストンサイクルに勤めていた人が、炎天下を裸足で歩いて通う子どもたちを見てなんとかしたいと思ったのだとか。そういえばうちの自転車だってタイ製だ。
 そういった民間レベルでの交流が盛んになればいいと思う。だけど、別にあの子に親日になってほしいとかは思ってないのだ。タイはまだ、がんばって勉強したらいい仕事に就けて稼げる国だ。「がんばって勉強します」と目をきらきらさせて言う素直さがちょっとうらやましいが、ほんとは「自分のことだけ考えて幸せになれよ」と言ってやりたい。

最新の画像もっと見る