うんどうエッセイ「猫なべの定点観測」

おもに運動に関して、気ままに話したいと思います。
のんびり更新しますので、どうぞ気長にお付き合い下さい。

フィナーレの重圧

2010年03月01日 | 五輪&パラリンピック
バンクーバー五輪は28日、男子アイスホッケーの決勝を行い、同点で迎えた延長戦の末、地元カナダが米国に3-2で競り勝ち、金メダルを獲得した。

 五輪最終日で最後の金メダルを狙ったカナダは、オーバータイムでシドニー・クロスビーが決勝のゴールを決めた。

 これで開催国のカナダは14個目の金メダル獲得となり、冬季五輪で史上最多の金メダルを手にした。

〔ロイター 2010年3月1日の記事より・写真も〕


                              *  *  *  *  *

 
夏季五輪で全競技の最後に実施される種目は、基本的に男子マラソンです。マラソンが終わると「もう五輪も終わるんだなぁ~」と寂しく感じるものです。ただ、最近は暑さを避けてマラソンは早朝での実施が多いので、必ずしも大会の最終種目ではないですね。

ちなみに、アジア大会だと基本的に最終種目は男子サッカーです。過去のアジア大会の開催国は基本的にサッカーが盛んな国が多いので、力の入れ方は半端じゃないです。もしサッカーで開催国が早期敗退すると、大会ムードが一気にぶち壊されてしまい、国民も半ば白けます。なので、大会のフィナーレを飾る種目が国技である場合は、選手のプレッシャーも大変だと思います。

そして、今回のバンクーバー五輪。開催国のカナダは大会終了を1日残して、金メダル獲得数の首位を確定。カナダは過去2度の五輪を開催しましたが、いずれも開催国なのに金メダル獲得がゼロに終わった苦い経験があります。それだけに、大金をはたいて強化した甲斐があり、開催国の最低限の責任は果たせたのでしょう。

しかし、同国の国技であるアイスホッケーで負けたら全てが台無しになっていたと思います。ただでさえ、米国との隣国同士のライバル対決なのでヒートアップします。ましてや、男子アイスホッケーは冬季五輪のフィナーレを飾る種目ですから。おそらく「金メダル=免罪符」なのかもしれません。いくらNHLのトッププロ選手で固めて優勝候補だったとはいえ、選手の受けるプレッシャーは並大抵ではなかったことは容易に想像できます。

カナダは1次リーグで米国に3-5とまさかの敗戦を喫し、怒ったファンがバンクーバー市内で暴動騒ぎを起こしました。決勝戦の会場であるカナダホッケープレイスには360度全て地元ファンに囲んでましたが、1度負けた悪夢があるせいなのか、かえってプレッシャーを受るのか心配されました。それでも大観衆の応援を背にカナダが試合を支配。第2ピリオドを終えて2-1とカナダがリード。第3ピリオドもこのままのスコアで進み、開催国の目論見どおりの結末を迎えるのかと思われました。

ところが、GKを下げて6人全員の捨て身のパワープレーを仕掛けた米国にまさかの失点を喰らい、残り25秒で同点にされます。米国のライアン・ミラーが味方の足に当たったパックをカナダゴールに押し込んだ時は、まるで会場が水を打ったような静けさすら感じました。有利に展開していたブラジルが乾坤一擲のウルグアイの反撃を喰らい、地元でのサッカーW杯制覇に失敗した1950年の「マラカナンの悲劇」のような残酷な展開が、このあと繰り広げられるのかと一瞬よぎりました。

しかし、延長7分過ぎ、カナダはエースのシドニー・クロスビーが、ジャローム・イギンラにパス。イギンラが中央に折り返したあと、再びクロスビーがスティックでパックを拾い上げてシュート。パックは米国のGKの横をすり抜けてゴール。試合はゴールデンゴール方式なので、得点が決まった瞬間に劇的な幕切れで地元カナダが優勝。カナダにとってこの金メダルは、ただの14個目の金メダル獲得ではなかったはずです。きっとカナダ国中が熱狂と歓喜に包まれたのでしょう。そして、カナダは国技の威信を死守したことにより、本当の意味での開催国としての責任を果たしました。


こんなとてつもないプレッシャーの下で試合をさせられたら、
女子でも酒をラッパ飲みしたり、葉巻を吸いたくなる気持ちも分かりますね(笑)。



☆決勝戦のカナダvs米国戦のダイジェスト

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