奈良のむし探検

奈良に引っ越しました。これまでの「廊下のむし探検」に倣って「奈良のむし探検」としましたが、動物・植物なんでも調べます。

ヒロハクサフジではなくナヨクサフジだった

2021-05-01 20:29:53 | 植物を調べる
今頃、佐保川沿いや道端に異様にたくさんのクサフジが生えています。





1月末に大和郡山に引っ越してきてからほぼ毎朝散歩に出始めたのですが、その当初からこのクサフジは気になっていました。「日本の野生植物 II」にはクサフジが含まれるソラマメ属の種への検索表が載っているので、初めの頃、調べてみたことがあります。大和郡山のクサフジは小葉が14枚内外で比較的に少ないので、在来種のクサフジとは異なります。それで、小葉の数を手掛かりに検索表を調べて、在来種のヒロハクサフジではないかと推測しました。因みに、この検索表にはこれから候補になるナヨクサフジは載っていませんでした。

先日、購入した「帰化&外来植物 見分け方マニュアル 950種」という本には、クサフジの仲間の絵解き検索表が載っていました。この検索表には在来種のクサフジ、ヒロハクサフジ、ツルフジバカマ、外来種のナヨクサフジ、ナヨクサフジモドキ、ビロードクサフジ、タマザキクサフジの見分け方が載っています。それに従って、大和郡山のクサフジを調べてみました。



最初に見るポイントは花の萼筒のお尻が付き出すか突き出さないかというところです。突き出せば外来種、突き出さなければ在来種です。この写真の矢印で分かる通り、この花はお尻が突き出しているので、外来種ということになります。



次は葉を見ます。葉が毛で覆われるとビロードクサフジ、ほぼ無毛だとナヨクサフジか、ナヨクサフジモドキということになります。この写真で分かるように、葉にはまばらに毛は生えていますが、毛で覆われるということはないので、ビロードクサフジは除外できます。



ビロードクサフジは茎にも毛が密生しますが、ここのクサフジにはこの写真で分かるように茎には毛はまばらに生えるだけです。



葉と同様に托葉の形も見てみます。ビロードクサフジの托葉は単純な形で毛で覆われています。これに対して、ナヨクサフジとナヨクサフジモドキの托葉の基部には突起が出ています。この写真は托葉ですが、確かに突起が出ています。



但し、托葉によってはこの写真のように基部に突起のないものもありました。



最後は豆果についてです。ナヨクサフジモドキは豆果に短い毛を密生させます。これに対してナヨクサフジは無毛です。大和郡山のクサフジの豆果は長さ25mmくらいで、この写真でも分かるように確かに無毛です。ということから、これまでヒロハクサフジと書いてきたものはナヨクサフジだろうということになりました。

ナヨクサフジ、ナヨクサフジモドキ、ビロードクサフジはいずれもVicia villosaの亜種です。考えてみたら、佐保川沿いや道沿いにこれほど密生するクサフジが在来種というのはちょっと考えにくく、やはり外来種を疑うべきでした。ナヨクサフジは「日本帰化植物写真図鑑」にも載っていて、ヨーロッパ原産で本州から沖縄県にかけて道端や河川敷で見られるとのことです。この結果を受けて、以前ヒロハクサフジと書いたものをナヨクサフジと書き直しておきます。