現在のX-Plane10にはGPSを使ったGARMIN社のナビゲーションシステムGNS430あるいはGNS530が搭載されています。この使い方については以前にブログで紹介したことがあります。
慣れるまでは戸惑うかもしれませんが慣れれば実に便利で、実際の装置よりも機能が絞られていますが、十分楽しむことができます。
な お、米国ではLPV(Localizer Performance with Vertical guidance)アプローチという日本では聞かない名前のアプローチが多用されています。これはGPSによる航法を基本としますが、GPSのズレを補強 するために静止衛星システム(WAAS)からのデータも使い、非常に正確に現在位置と高度を飛行機側で測定して運用するアプローチです。GPS/WAAS アプローチとも呼ばれます。
先のブログで紹介したRNAV(RNP)アプローチは特別な許可を必要とするアプローチですが、LPVアプローチは特別な許可が必要なく、非精密進入でありながら特別な地上の設備は必要としないのにミニマムはILSを使った精密進入と同じぐらい低くなっています。
そのためILSを設置していない滑走路でもLPVアプローチを使えばILSアプローチと同じぐらいのミニマムで進入することができます。
たとえば下の写真は米国連邦航空局が発行するシアトル・タコマ国際空港RWY16Lへのアプローチチャートです。ここにLPVアプローチが出ています。
LPVアプローチの場合にはチャートの左上にWAASの情報が出ていますので一目でわかります。ウエイポイントはGPSを使った航法の時のポイントで、ILSなど地上の電波航法装置を使った時のポイントとは全く違います。
そしてミニマムを見るとクラスAからDまですべての機体で高度699フィート/視程2400フィート。別のチャートからILSを使った精密進入のミニマムを読むとクラスAの機体で696/2000ですから、ILSなみに低いミニマムです。
たとえばこれが普通のLNAVと気圧高度計を使った非精密進入だと高度840/視程2400で、LPVアプローチを使えば最低高度が141フィート 低くなります。さらにLNAVとVNAVを使った非精密進入の場合には高度765/視程3200で、LPVアプローチはそれより高度で66フィート低く、 視程で800フィート短くなります。
しかしすべてのRNAVアプローチにLPVアプローチが設定されているわけではなく、以下の滑走路はRNAVアプローチは設定されている ものの、LPVアプローチは設定されていません。この例ではLNAVと気圧高度計を使ったミニマムしかなく、どういうわけかVNAVやLPVアプローチは 使えないようです。
しかしこの滑走路も反対側から降りるときにはLPVアプローチが使えます。でもLNAV/VNAVのミニマムはNAとなっているので、どういう理由かVNAVは使えないようです。
さ て、X-Plane10では残念ながらLPVアプローチの運用はありません。しかしGNS430やGNS530にはLNAV+Vという独特のアプローチが あります。これはメーカーのGARMIN社が設定したアプローチで、GPSを使ったLNAVが利用でき、同時に縦方向は滑走路の着地点から3度の進入コー スを示すようにガイダンスとしての縦方向のデータが利用できますという意味です。
ミニマムとしてはLNAVと気圧高度計を使った進入になりますが、ILSもないのに3度の降下角で自動的に機体が降下していくのは大変便利で、GPSを使ったアプローチができる滑走路ではLNAV+Vを使って安定的に滑走路近くまで降りていくことができます。
そこで今日はデフォルトのセスナ172SPに搭載されているGNS430を使ってLNAV+Vの非精密進入をやってみたいと思います。 進入は先ほどのチャートにあるシアトル・タコマ国際空港のRWY16Lです。
まず操縦席のGNS430をクリックして拡大します。
以下の説明ではいずれも赤丸のところをクリックします。MENUをクリックします。
す るとこんな画面が出てきます。赤い矢印のところですが2重になっていて、外側と内側をそれぞれ回すことができます。外側の左右のリング、内側の左右のリン グをクリックするとそれぞれ外側、内側を別々に左右に回すことができます。ここではリングの外側をクリックして画面に見える枠のなかの白いカーソルを動か します。
一番下のフライトプランを消すという項目にカーソルを合わせ、赤丸のところ、ENTを押します。
これで今まで入っていたデータが消えます。次に黄色い矢印のところにウエイポイントを入力します。ここでは緑色のカーソルが出ていますが、もし緑色のカーソルが出ていなければ黄色い丸印のところをクリックします。するとカーソルが出てきます。
まず大きな赤い矢印、外側をひとつクリックします。すると画面にあるように最初にKの字が出てきます。次に小さな赤い矢印、内側をクリックします。するとK、L、Mというようにアルファベットと数字が次々に出てきます。
ここではウエイポイントに目的地であるKSEAを入力しますので、最初に出てきたKのままでOKです。
次にまた外側をひとつクリックします。するとカーソルが右に移動し、次の文字を入力できます。内側を次々にクリックしてSを出します。
さらに外側をクリックして3つ目の文字にカーソルを動かし、内側を次々にクリックしてEを出します。
そしてまた外側をクリックして4つ目の文字にカーソルを動かし、内側を次々にクリックしてAを出します。ここまで慣れないと大変面倒ですが、慣れるとあっという間に入力できます。
続いてENTを押します。するとアクセプトするかと聞いてくるので、もう一度ENTを押します。
するとこんな画面になります。続いて赤丸のところ、PROCを押します。
ここでアプローチを選びます。出てきた画面でENTを押し、アプローチを選択します。
このようにアプローチが次々に枠内に出てきますので、外側をクリックして選びます。
今日飛ぶのはGPS16LYです。これを選んでENTを押します。
さらに進入への経路を選ぶ画面が出てきます。外側をクリックしてHELZRを選びます。
HELZRを選んでENTを押します。IAFと赤字であるのは、イニシャル・アプローチ・フィックスです。
さらに続いてENTを押してデータを読み込みます。
するとこの画面が出てきますので、FPLボタンを押します。
するとこのように読み込んだウエイポイントが次々に出てきます。最初に目的地のKSEAがあって、その下にGPS16LYのアプローチが出てきます。ここでまた外側をクリックして緑のカーソルを下げていきます。
今日は滑走路から10マイル手前の上空にいきなり飛行機を呼び出して飛びますので、IAFのHELZRだと12マイル手前になってしまい、後ろに戻ってしまいます。そこで外側をクリックしてKARFOにカーソルを進めます。そしてMENUを押します。
するとこうしてメニューが出てきますから、一番上のActivate Leg?、に白いカーソルを合わせてENTを押します。
するとKARFOの左側にマジェンタ色の矢印が来て、最初このポイントに向けて飛べるようにします。そうしたらCLRボタンを5秒ぐらい押し続けてください。
GNS430 にはたくさんの画面がありますが、どこでもこのCLRボタンを5秒ぐらい長押しするとNAV画面に戻ります。もしCLRボタンを押した時にYesかNoか と聞いてきたらそれはその前の選択がまだ終わっていないからで、YesかNoかを選択してENTを押し、それからもう一度CLRを長押しします。
このようなNAV画面が出てきます。そこで内側をひとつクリックします。
するとこうして地図が出てきます。次に画面左下の黄色い矢印のところを見てください。もしこのように白い字でVLOCと出ていたら、下のCDIというボタンを押します。
CDIボタンを押すとここがGPSに変わります。さらに押すとまたVLOCに戻ります。このボタンは重要で、GNS430の左側は無線の 設定ですから、たとえばILSの周波数を左側で合わせたときはここをVLOCにします。するとローカライザーとグライドスロープの電波を受信して飛びま す。またGPSにすると今設定したGPSのポイントに従って飛びます。
さらにその右側にCRSと出ていたら下のCRSボタンを押してこれを消します。これはVORを使って飛ぶときなどにVORから何度の方位で飛ぶというようなことがあるのですが、その時に使う機能で、ここでは消しておく必要があります。
こうして画面左下がGPS、ブランクになっていることが必要です。
さて、今回はここまで地上で設定しましたが、もちろん上空で設定することもできます。今日は滑走路手前10マイルから飛びます。地図を開いて空港のQNHを読みます。
高度計にQNHをセットします。
そしてKSEAのRWY16Lの10マイル手前を選びます。
するとGNS430はこのような表示になります。次のウエイポイントがマジェンタになっています。
FPLを押すとKARFOに向けて飛んでいることがわかります。あと1.4マイル。
それではオートパイロットを入れます。まず下の矢印から。一番右のALTを押すと現在の高度で飛びます。ここだけボタンの枠が緑色になっていますが、これはキャプチャーした、すなわちその高度で水平飛行をするように機能が働いていることを意味しています。
さ らにLOCを押すとローカライザー、G/Sを押すとグライドスロープです。いずれもボタンの枠は黄色です。これはARMしたけれどまだキャプチャーしてい ない、すなわち待機していてまだ機能していないということを意味しています。いずれもILSの電波は受信していません。GPSでアプローチする時には電波 を受信していなくてもこの2つのボタンを押すとLNAV+Vで降りていきます。
そして上の右向きの矢印のつまみを一番右にするとオートパイロットが入ります。
やがてLOCのボタンの枠が緑色になりました。LNAVが働き始めて横方向の修正が始まりました。
画面左下がGPS、ブランクであることを確かめ、またVOR受信機の上にGPSと点灯していることを確かめます。
既にLNAV+Vアプローチが始まっていて、LNAV+Vと出ています。さらにウエイポイントを通過するたびのマジェンタ色の矢印が動きます。
そしてG/Sのボタンの枠も緑色になりました。
昇降計を見てわかるように降下が始まりました。3度の降下角が自動的に設定されていますので、それに沿って降りていきます。
LNAV+Vで順調に飛行しています。
ボーイング・フィールド空港上空を通過します。
目の前に滑走路が見えています。
さらに滑走路が近づきました。
まだオートパイロットは入っています。進入が続きます。
ここでオートパイロットを切り、マニュアルで着陸します。
まもなく着陸です。
こうして無事滑走路に降りてきました。
例えば同じようにLNAV+Vアプローチを別の空港で視界の悪い時に飛ぶと次のようになります。これは台風が過ぎていく頃の沖縄那覇空港です。
前方に滑走路の先だけ見えてきました。
空港が近づきますが先のほうは全然見えません。
高度が下がると視界は開けます。ここで何かLNAVが異常でコースが横方向にずれていますし、GPSのウエイポイントの表示が次に進みません。
もうすぐ着陸です。オートパイロットを切ります。
左から強い風が吹いているので横風着陸です。
無事に降りました。煙は滑走路上の水です。今日は雨の中の着陸でした。エルロンを左に切って風に流されないようにしています。
というわけでGNS430を使った非精密進入をやってみました。自家用機にも最近は最新の装置がついています。ぜひ試してみてください。
(おわり)
詳細な解説、ありがとうございます。
手順を参考に標準のCessna172SPでLNAV+Vアプローチを試してみたのですが、GPSにLNAV+Vの表示は出て、LOCはキャプチャしてくれるものの、G/Sにのらず全く降下をしてくれません。
いくつかの空港で試してみましたが、いずれも降下してくれませんでした。
高度3000ftでアプローチを始めたのですが、高度が高いとダメだとかあるでしょうか?
X-Plane は10.42です。
さて、どういうことでしょうか。G/Sを押すと最初はオレンジですよね。降下開始地点になると緑色になるはずですが緑色になりましたでしょうか。もし緑色になって降下しないのならば、誘導はしているが別の理由で降下してないということですし、緑色にならなければ誘導がないということです。G/Sの降下ですからVNAVやv/sの降下と違ってALT以下に降下してくれますからALTを下げなくても降下してくれるはずです。アプローチチャートに出ている最終進入の高度からしか誘導しないのか?低い高度で試してみてください。
もう少し日本の空港でトライしてみます。
G/Sにのらないときは、ボタンはオレンジのままでした。
チャートを入手して最終進入の高度で
アプローチしたらうまくいってG/Sにのって降下しました。
ありがとうございました。