今日は中国の四川省成都からチベットのラサまで飛んでみます。
成都空港の標高が1681フィート、ラサ空港の標高が11713フィート。一気にチベット高原に上るルートです。機体はFlight FactorのA320です。今日のコースをグーグル・アースの衛星写真で見てみます。右端に成都があります。西に向かうとすぐに高原地帯が広がり、左の赤い枠で囲んだところがチベットのラサ市です。
ラサの空港はラサ市街から谷を一本南側に来たところにあります。ラサ市街とは高速道路でつながっています。
では今日のフライトプランです。飛行距離は779マイル、飛行時間は2時間7分を予定。平均の風は260度から57ノット。目的地の代替着陸空港はミャンマーのマンダレー。ラサから605マイル、1時間37分を予定。ZFWは60.7トン、燃料は11.6トンとありますが、15トン積みます。
ルート図です。成都を出てずっと西に向かいます。上空に行くほど向かい風が強くなるので、今日はFL280で飛びます。
ルートの断面図です。成都を出てすぐに標高の高い高原になります。まさに高原の手前で一気に高度を上げます。高原地帯は標高が1万フィートを超えています。上空で与圧が抜けたときに安全な高度まで降りることができません。そのため客室酸素の利用可能時間を延ばしたり、高原からの脱出ルートを設けたりします。
成都の気象です。もやがかかっています。
風は無風です。3000メートルしか見えません。気温は8度、雨は降っていません。
ラサの気象です。こちらは視界良好です。気温と露点の差が大きく、大気が乾燥していることがわかります。ときどき低い雲が出てきて弱い雨が降るようです。
同じくラサの気象です。上のATISとは時刻が違うようでこちらは気温がマイナス15度にも下がっています。一日の寒暖の差の大きさでしょうか。
成都空港です。シナリーはX-Plane11のデフォルトのままです。地上支援車は機体に付属のものです。
出発準備が進みます。
操縦室です。外部電源を取り入れたところです。
地上支援車の取り付けは機内のEFB(電子フライトバッグ)で行います。
燃料の搭載です。上述のように今日は15トン積みます。
旅客は満席です。
貨物は全部で7.4トン。
性能表がすぐに計算されます。ZFWが60.0トン、ZFWCGが28.5%、トリムがUP0.4です。MCDUの入力に使う数値です。
離陸速度の計算はTOPCATで行います。空港を指定すると現在の気象や滑走路の情報を自動的に読み込み、離陸滑走路と総重量を入力して離陸フラップ、離陸速度、フレックス気温を計算します。
離陸滑走路は02L、今日はフラップ2で離陸です。フレックス気温50度で離陸速度は149-149-155ノットです。滑走路の余裕は172メートルあります。フレックス気温を使わず最大離陸推力で離陸すると余裕は1321メートルと大幅に伸びます。フレックス気温を使うことで推力を抑えて経済的かつ安全に離陸するわけです。一方フレックス気温を52度にすると余裕は36メートルしかありません。滑走路を端から端まで走ってじわっと離陸するということになります。
ナビゲーション・ロゴ灯をオン、ベルトサインと禁煙サインをオン、非常口灯をARM。
ADIRの調整を始めます。
操縦席の脇の窓が開きます。
外から見るとこんな感じです。
酸素マスクのチェックをします。操縦席脇の窓の下の箱に入っています。
ふたを開けてテストボタンを押します。しかし酸素が出ません!
ありゃ?オーバーヘッドパネルに酸素のクルーサプライというボタンがあります。これがオフになっていました。クリックしてオンにします。オンだと無表示になります。オフだとOFF。
今度は酸素が出ました!チベットのラサまで行くのに酸素が出なかったら死活問題です。
MCDUの設定です。初期画面です。
IRSの現在位置をGPSを見ながら修正します。スポットによって多少数値が違いますので。
IRSの調整を始めます。
コースを入力します。制限も入力します。離陸滑走路の標高が約1600フィート。ほどなくCZHでFL197というものすごい高度制限があります。離陸直後にどうしてこんな高い高度制限があるのか、実は成都は盆地です。しかも西側はいきなり高い崖になります。そのため西に行く飛行機はCZHで旋回して高度を稼いでから西に向かいます。今日はぎりぎりかわせるのでそのまま上昇しましたが。
離陸重量などを入れます。先ほど性能表で計算された数字です。
離陸速度や離陸フラップ、トリム、フレックス気温も入力します。
パネルの設定を行います。火災報知機の試験です。
まもなく出発です。APUをスタートします。
QNHは1030。
ステイタスはノーマル。
燃料も15トン搭載されています。
油圧の油量も正常。
バッテリーも放電なし。APUも正常に発電。
与圧です。着陸予定空港の標高が11712フィートと正しく表示されています。
エンジンオイルの量も正常。
酸素の量も正常。
車輪とブレーキです。過熱しているので離陸を伸ばせ、とは出ていません。
ブレーキの油圧も正常。パーキングブレーキは効いています。アンチスキッドはオン。
緑に光っているボタンを押すと客室アナウンスが流れます。
APUが起動しました。APUブリードをオン。
ドアを閉めて地上支援車を離します。
トランスポンダはスタンバイ。
客席の様子です。
操縦室のドアを閉めます。
そして電子ロック。
ビーコン灯をオン。
プッシュバックのタグが取りつけられました。
パーキングブレーキをオフ。
エンジンを始動します。2番エンジンが順調に始動中です。
続いて1番エンジンも始動。
左右のエンジンが正常に始動しました。
離陸フラップは2。
舵面のチェックです。
ドアはすべて閉まってAUTOになっています。
プッシュバックが終わり、地上からハンドサインが出ました。タクシーを開始します。
タクシー灯をオン。
成都の滑走路は離れて2本あります。今日は左側の滑走路から北向きに離陸です。
誘導路を進みます。もやがかかっています。
EFBにキャビンの様子が出ます。右下のキャビンレディーのボタンが緑色になっています。これを押すと客室から操縦室へ、客室の離陸準備完了の意味になります。
離陸体制のチェック、ノーマル。
滑走路の手前で一旦停止。
トランスポンダをTA/RAに。
気象レーダーをオン。
経過時間計をスタート。
では離陸します。
スロットルを前に出して離陸推力を設定します。
離陸です。
順調に上昇していきます。離陸後は左旋回です。
すぐ雲のなかに入ります。
これが離陸のチャートです。左旋回でCZHに行きますが、CZHにはFL197、FL177、FL157のいずれかの最低高度制限があります。もし高度が足りなければ左旋回で高度を上げよとあります。また中国の航空はメートル法で運用されています。そのためメートルをフィートに換算してチャートが作られています。そのためフィートで表す高度制限などは細かい数字になるのです。チャートにはメートルとフィートの換算表が出ています。今日はぎりぎり山をかわせる高度なので、そのまま上がっていきます。
10000フィートを超えたので着陸灯をオフ。
トランジション高度は今日のQNHが1030なので8860フィートです。
引き続き上昇していきます。
FL280で巡航します。
CZHを出てどんどん上昇し、西に進みます。
眼下には既に山が広がっています。
遠くに高い山々が見えています。
与圧も順調です。
このあたりの最低高度は2万フィートを超えています。
眼下すぐ近くに険しい山々が広がります。
MIKOSです。既に高原の上まで上がってきました。
遠くの山は赤く見えています。南側にも高い山々が広がります。
まもなく巡航高度に達します。
引き続き山塊の上を飛びます。
やがて山に白色が広がってきました。雪でしょうか。
正面ヨコ方向に広い谷が走っています。
険しい高山が次々見えてきます。インドとの国境の山々でしょうか。
高原の北側にもずっと山が広がります。
チベット高原にはたくさんの湖があります。
では到着のデータを入力します。現在のラサの気象です。好天です。
QNH、気温、風向風速を入力し、決心高度も入力します。ILS進入ですからDHに入れたいのですがDHは5桁の数字が入らず、MDAに入れます。
これがラサのILS DME RWY 27Rアプローチです。なかなかこういうチャートはありませんが、空港の標高が11713フィート、決心高度が13780フィート、最終進入開始高度が17560フィート。地域一帯の最低高度は2万フィートを超え、まさに谷底に降りてく感じです。ILS周波数は110.3、最終進入コースは269度。ゴーアラウンドしたらLXA8.8マイルまで飛んで右旋回でLHA VORに戻る。高度は15750フィート。その後、再び進入するときには101度でVORを出て20マイルで左旋回して再び最終進入。今回はチャート右端のLXA D25.0のIAFから進入を開始します。速度制限190ノット。トランジションレベルはFL266、トランジション高度は24610フィート。
視程は8000メートル以上必要です。ちょっと普通のILS進入とは違います。
ゴーアラウンドコースは一応読み込んでいますが、旋回の部分はないのでマニュアルで右旋回することになります。
これがラサのアライバルです。東から来てDMというNDBの上に出て、LXA D25.0のIAFに至ります。IAFでの高度が20670フィート。
このようなコースになります。
ちなみに西からの進入ではビジュアルアプローチしか用意されていません。LXA上空から北西に一度谷筋を超えて、谷が交わるところで左旋回して滑走路に降りてきます。雲底は1800メートル=6000フィート、視程は8000メートル必要で、視程は先のILS進入と同じ。そしてこのアプローチには復航経路は発表されていないとあります!エンジンを1基カットした状態で降りてきて、さて復航といった時に谷の上まで上がれるかどうかです。
どこまでも山が続いています。
たくさんの谷と川が見えます。山は茶色と白です。
南にひときわ大きな山が見えます。
ところどころ、地上に集落が見えます。
大きな川が見えてきました。
雄大な山がすぐ近くに見えます。
最終進入開始の17000フィートまで降下します。
RNPの精度も十分です。こんな狭い谷でRNAVの精度が落ちたらそれだけで危険です。
次第に進入開始地点に近づきます。
南側の雄大な山のすぐ近くを通ります。コースを外れたら当たりそうです。
前方が雲に覆われてきました。天気は良いはずですが・・・。
降下を開始します。
この谷の先に空港があります。雲に覆われています。
緑の大地もところどころに見えます。
入り組んだ流れの川です。
このあたりの川の様子をグーグル・アースの衛星写真で見るとこのようになります。写真の左端がラサ空港です。
QNHを合わせます。1026hpa。
景色に見とれて降下がちょっと遅れたのでスピードブレーキを引きます。しかし高度が高くて空気が薄いせいか効きが悪いです。
IAFの20670フィートまで降下します。
スピードブレーキを戻してARM。
まもなくIAFです。前方には雲がかかっています。
着陸灯をオン。ベルト灯をオン。
前方はますます雲に覆われてきました。
最終進入を開始しました。オートパイロット2基で順調に下りていきます。ただ、BAROが9999となっています。どうも5桁の数字を表示できないようです。
着陸態勢ができています。
ギアダウン。
順調に下りていきます。
最終進入コース上を飛んでいます。
オートパイロット2基がオンになっています。
これから雲のなかに入っていきます。
離陸後1時間51分経過。
決心高度は13780フィートですが、滑走路が全然見えません!
早々にゴーアラウンド!気象通報では快晴だったのに!
再び雲の上に出ます。
入力されたゴーアラウンド・コースには右旋回が入っていないので、しばらくマニュアルで飛びます。滑走路方位に進みます。
そしてLXA D8.8から右旋回を開始。オートパイロットを入れます。速度は180ノット、フラップは1+F、高度は18000フィートまで上がってきています。
右旋回しています。
旋回が終わり、LXA VORに戻ります。
VORを出てもういちど進入を試みます。
山のすぐ上を飛びます。谷間にずっと雲がかかっています。
最終進入地点に向けて左旋回。
しかしオートパイロットを入れたらIAFからアプローチをしたいらしくて、なんとここで右回りに360度旋回!
LXA D25.0のIAFの前を通って最終進入開始地点に向かいます。
とりあえず18000フィートで当たる山は近くになさそうです。
右旋回を続けています。
では最終進入コースに入ります。設定コースが不安定になっています。
何とか落ち着き、再び降下開始。しかしこの様子だと今回も復航になります。このまま代替着陸空港であるミャンマーのマンダレーまで行くことになりますが、今日は特別にこのままILS CAT3でラサ空港に着陸してみることにします。
引き続き雲がかかっています。
客室に着陸を知らせます。
着陸態勢完了。
CAT3でどんどん降りていきましたら地上から700フィート近くになって地上が見えてきました。
250フィートで滑走路が見えました!
これは視程も8000メートルはありませんね。滑走路の長さは4000メートルです。
無事着陸。
オートブレーキのミディアムの効きがとても悪いです。実は標高が12000フィート近くあるために空気が薄く、同じ対気速度でも対地速度は非常に速いのです。そのため着地した後の地上での減速は非常に高速からの減速になり、ブレーキの効きが悪いように感じます。すぐにペダルのブレーキを強く踏みます。またリバースもすぐにかけます。
4000メートルの滑走路ですがかなり走って止まりました。飛行時間2時間16分。ゴーアラウンド1回で、予定時間より9分伸びただけです。燃料は8トン残っているので7トン使いました。ゴーアラウンドで1トンぐらい使いましたから、目的地までの飛行は6トン。飛行計画では6.2トンでしたからほぼ飛行計画どおりです。
しかしブレーキが熱くなっています。ブレーキファンをオンにせよと。そしてパーキングブレーキよりもチョークをお勧めする、冷えるまで離陸を延期しろとあります。
ブレーキの色が黄色になっています。タイヤがバーストしたりはしていません。ブレーキの温度は機体が止まってからしばらく上がります。
駐機場に入ります。
APUをオン。
スポットイン。この機体にはチョークがないのでパーキングブレーキをかけます。ブレーキのファンは回してあります。燃料ポンプをオフ。
ADIRをオフ。
ブレーキのファンを回しています。ブレーキの温度が下がってきました。
今日飛んだコースです。360度旋回をしています。
飛行場のチャートです。滑走路番号にL/Rがありますが、滑走路南側の広めの誘導路が以前は滑走路だったようです。
というわけで成都からチベットまでやってきました。
それにしてもラサの気象は依然として快晴です!とても不思議なことでした。
(おわり)